第16話 魔王狼牙との激闘

 サンザルの宿屋で精神体での戦いから一日程経って、クラリスは目を覚ました。

 

 「目を覚ましたか?」


 「兄さん!私は一体、、、」


 「クラリスの元凶は無くなったぞ。」


 事の顛末をクラリスに全て話した。狼牙の正体の事も包み隠さず全てを話した。


 「そうですか、、、兄さんが新しい魔王なのですね…予言はもうなくなりましたし、方法ってありますでしょうか?」


 「そこはみんなと考えてある。ギルドから練習用の模擬戦の人型の人形をもらってきた!ここに俺の半身を移して、俺の半身を倒す!

 その代わり、ちょっと離れた場所でやらないとサンザルが吹っ飛ぶからな!クラリスには鑑定スキルでちゃんと俺がバーサーカー状態の魔王の部分を人形に移せているかどうか確認して欲しい!」


 ディエスブリーズの皆でディエスブリーズVS狼牙の魔王の部分という構図が出来上がる事をクラリスが眠っている間に計画を立てていた。


 「分かりました。兄さんを助ける為ですね、、、私も協力します。」


 「ああ!宜しく頼むぜ!」


 クラリスの了解も取った。クラリスが寝ている間に他のみんなは変わった魔物がいるか等、確認してもらったが、特に知らない魔物はいなさそうだ。

 そして、戦える場所もリサーチしてもらっていた。頼りにしてくれて、良かった。

 準備を1週間程費やして、いよいよ、決戦をやる事にした。


 「みんな頼むぜ!!」


 「ああ、できる事は何でもするぜ!」


 「いつでもいいわよ!」


 「一応、盾を先に出しときましょう!」


 「兄さん、みんなで魔王を倒しましょう!!」


 みんな覚悟ができてる!ディエスブリーズのみんなが協力してくれる!仲間を信じよう!


 そして、俺は落ち着いて息を整え、自分のバーサーカーの部分を力と共に人形に移した。

 移された人形は黒い霧を纏い、離れた場所だが、周りの魔物がどんどん吸い込まれている。どんどんもう一人の狼牙の姿を形作って行く。やがて、バーサーカー状態の狼牙が出来上がった。


 狼牙が

 「クラリス!鑑定を頼む!!」


 「はい!」


 「鑑定結果を言います。魔王狼牙です。成功です!」


 「分かった!」


 素早く、ノークの盾の後ろに狼牙も戻った。


 魔王狼牙はノークの盾に火の魔法を撃ち込んだ!ノークの盾が割れた!そして、襲いかかって来た!


 「相手が俺自身とはな!!」


 狼牙が剣で応戦して、魔王狼牙も魔法の剣で鍔迫り合いの状態になった!


 「カール、フレンダ!今の内に攻撃を叩き込め!!」


 フレンダも手加減なしの本気の魔法の神の裁きと言う、雷魔法を打ち込み、カールもフレンダを支援魔法で魔法力を上げていた。


 打ち込む寸前、狼牙は魔王狼牙から離れ、狼牙も魔法の剣で剣の刃を放った。

 魔王狼牙は直撃を食らった。


 「ウォォォォォォォォォ」


 と言う声が聞こえた。


 クラリスが鑑定スキルで魔王狼牙の状況を見るとだいぶ、弱っている!

 そして、ノークがまた巨大な盾を出し、魔王狼牙の怒りの攻撃を防いだ。

 しかし、魔王狼牙は魔法の剣と気の融合技を唱え始めた!


 「ヤバい!みんな伏せていろ!!」


 狼牙はそう言って、自らも魔法の剣と気の融合技を唱え、魔王狼牙の融合技とぶつかった!


 周り一帯の木々が吹っ飛ぶ!地響きも凄く、地割れが起き、まさに魔王と勇者パーティーの激戦になっている。


 落ち着いたかと思えば、狼牙と魔王狼牙の剣の打ち込み合いが始まり、狼牙自身もだいぶダメージを負っていた。


 「兄さんを回復を!!」


 クラリスは狼牙を回復させて、魔王狼牙は怒り狂い狼牙に全力で切りかかっていた。

 その一振り一振りは凄まじく、狼牙も全力で切り合っていた。

 「ガンッ」って音が鳴る度、周りに振動が行き渡る!

 カールがフレンダに言って、矢に火の魔法と風の魔法をまとわせ、魔王狼牙に打ち込みバァーンと切り合ってた魔王狼牙が吹っ飛ぶ!

 その隙を逃さない狼牙は再び、魔法の剣と気の合わせ技を用意して、

 「臨」「兵」「闘」「者」「皆」「陣」「烈」「在」「前」と気を溜めて、

 魔法の剣を纏わせた剣で全力の渾身の一撃を

 「魔王はもう要らねぇ、消え去れ!」と言って、放った!


 まるで世界が揺れるような激しい一撃だった。

 しばらく、この地一帯が揺れていた!

 爆煙でほとんど視界がなかった。


 ノークの巨大な盾でさえも吹き飛び、みんな頭を伏せて、しばらく落ち着くのを待っていた。



 …どう、…なった?



 地響きも落ち着いて、狼牙も吹き飛び、倒れながら、言った。


 みんなも地面にしがみついていた。


 魔王狼牙の気配はしない、、、


 爆煙が消えると模擬戦の人形が粉々になっていた。


 狼牙は


 「何…とか、や…れたか。 」


 と言って、左手と右足を失い倒れている。


 「兄さん!」


 と言ったクラリスが、己の最上位回復魔法を何度もかけた!


 やがて、左手と右足が元に戻って、クラリスは鑑定スキルで魔王狼牙の存在が無くなったのを確認すると、魔力切れで意識を失った。


 「クラリス!」


 フレンダがクラリスに駆け寄り、魔力回復薬を飲ませた。


 カール、ノークが狼牙の方に駆け寄り、声をかけた。


 「狼牙!!生きてるか!?」


 「フー、何とかな!!一対一じゃ負けてたわ!」


 

 みんな無事だった。予言は回避された。


 無事、戦いは終わった。


 サンザルの街に戻り、宿屋でボロボロだが、そのまま、みんな休んだ。


  

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