第4話 「普通」っておかしい

 朝起きて、リビングへと向かうと、母親がテレビの前に立っていた。


「昨日、会社員の女性が何者かにより殺害されました。犯人は刃渡り10㎝程の刃物を使用し、女性を殺害したものとみられています。現在、警察が事件の詳細を調べていますが、犯人はいまだ見つかっておりません。」


 僕は、母親の横顔を見る。


「近所じゃない!たかしも気を付けなさいよ!」


 僕なんだよ。


 お母さん。


 犯人は僕なんだ。


 僕を心配してくれる母親に罪悪感を抱く。



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 学校でも話題は昨日の殺人事件でもちきりだった。


 僕は教室でいつものように本を読みながら、耳を傾けていた。


「昨日の犯人のやつみた?」

「見た!怖すぎ!」

「ママが一時帰りに迎えに来てくれるって」



 動機が止まらない。


 思わず席をたって、トイレの個室へと駆け込む。


 自分の手を見る。


 まだはっきりと血が付いた手を思い出せる。


 あの刺した感触も、匂いも、あの女性の重さも、何もかも覚えている。


 目を瞑ると何度も昨日の女性がフラッシュバックし、鼓動の音が聞こえる。


 あの女の人の家族が泣いてたな。


 また、罪悪感と焦燥感に侵食される。


 なんて心地いいんだ。



 ふと頭をよぎる。

 また、確認しないと。



 僕は何度も自分の「普通」を確認した。


 狙うのは小柄な女性や小さい子。


 それもまた僕に罪悪感を植え付けてくる。






 でも、安堵のようなこの感覚がやめられない。






  今日も絶好調の犯行日より。


 僕はいつものように荷物をもって夜に出歩く。


「ねぇ!きみ、ちょっといいかな?」


 そう言って声をかけてきたのは警察官2人組。


 不思議と焦りはなかった。


「荷物をちょっと見せてもらえる?」


 僕は素直にリュックを渡す。


「これは……」


 中身をみた警察官達は顔を見合わせる。



 警察官たちの話してた言葉は何も覚えていない。



 僕はただ警察官にひかれるままに警察署まで連れていかれた。




 僕は部屋にあった椅子に座らされた。

 

 向かいで警察官たちが何か話している。


 一人の警官が僕の方を向く。


「君が、やったのか?」


 僕は黙り込む。

 

 すると


「君はもう中学生だろ!?」

「人を殺すのがどれだけいけないことか!普通そういう判断がつく年頃だ!」


 僕をここまで連れてきた警察官たちが怒りだす。


 でも僕の視線は机に向いている。


「お前!人を殺したら犯罪なんだ!捕まるんだ!わかってるのか!?」


 そう言って、机をバン!と叩かれ僕は思わず肩をびくつかせる。 


 僕は納得できない。


 直接殺したら捕まる。


 なら、


 「僕は人を殺して捕まるのに、」


「人の心を殺した人たちは捕まらないんですか?」


 人を間接的に殺すことだって重罪じゃないのか。


 僕の言葉に警察官たちは理解できないとばかりの顔をする。 


 きっとこれが普通で生きてきたであろう人たち反応。




  普通じゃないのはお前たちの方だ。


 

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