第32話 意外な組み合わせ


「そ、それよりレイヴァ、せ、せっかく、その、だから、そ、その……」

「…………」


 メチャクチャ恋する乙女の顔してるんだが。なんだか、こいつが俺に惚れているという話を聞いてはいたが、そうやって意識してみると、こいつは俺の想像以上に俺に惚れている。

 たぶん、ヤラせてくれと言ったら秒でヤラせてくれるだろう。

 だけど、相棒曰く、こいつはただ抱くだけじゃダメらしいからメンドクセー。

 なんとかこいつを雌豚に……


「あ、あの、せっかくだから、わ、わたしの部屋に来て……その……お、お茶でもどうかしら?」

「……………」


 前回の果物の時を思い出させる。

 また、下着姿で俺に押し倒させようという作戦で来るか……でも、抱いちゃダメなんだよな……そう考えると断りたい……


「ちゅ、宙仁くん……そ、その、わ、私も脱ぐから……」

「お、あ、うう」


 と、そのときだった。


「ッ!? ちょ、何よ、この声……」


 部屋の中から聞こえるクロカワと相棒の声。マキの目が鋭くなった。


「お願い……これ以上言い訳して逃げないでよ……恥をかかせないでよ……安心させてよ……そ、それとも……ほ、本当に私に魅力ないのかしら?」

「そ、そんなことないよ! あ、あるわけないよ! 黒川さんは、クラスどころか、学園でも飛びぬけた……で、でも、俺なんかが初めてでいいのかなって……」

「バカ…………何度も言わせないで」


 中から聞こえてくるのは、いかにもガキっぽい恋愛の始まりといった雰囲気。


「な、何なの!? なんなの!? ねえ、レイヴァ、この部屋に……誰がいるのよ!? ねえ、なんなのよ!」


 そんな中から聞こえてくる声と会話にマキは顔を赤くしている。

 ガキの恋愛会話だが、こいつも処女みたいだし、こういう方面には疎いのか慌ててやがる。


「ねえ、もう一回……キス、いい?」

「も、もちろん」


 そんな廊下の状況を知らずに相棒とクロカワのイチャイチャは止まらない。


「…………ちょっと、見せてみなさい」

 と、そこでまさかのマキが中を覗こうとドアノブに手を。


「いやいや、野暮っすよ~、お姫ちゃん」

「……ハ?」


 だが、その手を俺も予想外の手が止める。

 それは、ニヤニヤした顔のイロカ。

 って、マキの手首を人間のイロカが掴んでる!? ちょ、おま、お前!


「イロカっ、おま、離せ、何を!」

「え~、だって、レイヴァ様、この人がさ~、せっかくの黒川と宙仁の初エッチ邪魔しようとするから~」

「いやいやいやいや、だからって! おま、無礼な、こ、殺されるぞ!」


 思わず俺も慌てるが、マキはイロカを振りほどくと俺を睨む。


「この下賤下品な蟲は……何かしら、レイヴァ。この魔界の至高たる存在の私を……家畜以下の奴隷人間が……」


 マキは数秒前までの恋愛話にアワアワしていた様子から一変し、マジで真顔でのブチ切れた顔をしてやがる。

 これは、どうする? イロカを庇ったら俺が……いや、どうにかしてやる。俺の愛人を……


「え~、でもさ~、あんたさ~、あーしとレイヴァ様の~、スケベなところ覗いてた人っしょ?」

「ッッッ!!???」


 だが、イロカはマキを挑発するような態度で、そんなことを言い出した。

 それを言われると弱いのか、マキは顔を赤くして、少し後ずさる。


「……そ、それは、だから、わたしは……」


 おお、い、イロカが言葉でマキを圧した? こんな力もないエロいだけの小娘がマキを?

 しかも、イロカはそれだけじゃなく……


「ねえねえ、お姫様~……なんなら~、あーしが~、レイヴァ様がもう抱くしかないぐらいの~……方法教えてあげよっか~? ぶひぶひ♥」

「ッッッッ!!!!????」


 なんだ? イロカがマキの耳元で何かを呟き……


「ど、どういうことかしら? たかが奴隷の分際で、こ、この私に何を教えると……」

「いや、あーしさ、実はお姫様とレイヴァ様には早くエッチできる状態になって欲しんだよね~。諸事情で。お姫様もさ~、レイヴァ様のあのヤバいオラオラなの……早くヤラれたいんじゃないの~?」

「ッ、……ゴクリ」


 おいおい、何だ? 何の話をしてるんだ? マキが明らかに慌てて……いや、たぶん、何かエロい話でもしてんだろうけど……


「ご主人様。あのお方が……魔界の……魔王の……」

「ん、お、おお、まあな」


 すると、俺の傍らのドリィルもいつもの俺に媚びた表情ではなくどこか真剣に……


「なるほど……この方が魔界の……見たところご主人様に惚れている様子……魔界の姫とご主人様が結ばれる……もしそうなれば、ナンバーワン妾を目指す私としても……」

「おい、何言ってんだドリィル」

「ちょっと失礼しますわ」

「あ? おい、ちょ!?」


 そして、ドリィルはトコトコとマキとイロカの方に歩み寄っていき……


「魔王姫様。少々よろしいでしょうか?」

「……何よ」

「私はドリィルと申します。ヒトバイヤの娘にして、ご主人様の妾、雌奴隷、肉人形ですわ」

「??? 何を言って……」

「イロカさんと私で、魔王姫様に秘策をお教えいたしますわ♪」


 ドリィルがそう言うと、イロカがニヤリと笑う。


「んー、ぶひぶひ♪ お姫ちゃん~、じゃあ、ここじゃなんだからさ~、ちょっと場所移そっか~」

「??? え、ええ……」


 そうして、イロカとドリィルはマキをどこかに連れて行くことに成功。


「おい、何を吹き込……おい、おい、おい~~!」


 そうして、イロカたちの姿は消えた。


「……………」

「「「「……………」」」」


 あとに残された俺とタナカたち……だけど、俺らだけで話しても……


「と、とりあえず一旦保留で……俺はヤミナルのとこにでも行ってるわ」


 ちなみに……






「あ、あ、まっ……あ……ご、ごめん、黒川さん……」


「ちゅ、宙仁くん…………」


「ぼ……暴発……しちゃった……」









 ちなみに、後で聞いたら、相棒とクロカワはまたもや最後までできなかったとか……

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