ラフライダーズ The Rough Riders
シジマケイタ
序文・注意書き
『ラフライダーズ~Aaron's Adventure, Counter and Criticize~』
(作:シジマケイタ /未完)
<序文>
最初に、言葉があった。
言葉が、自分の似姿として思考をつくった。
思考が父となり言葉を孕ませ、言葉は母となり思考を産み、その両親は次の世代の言葉と思考を育てた。
人間の知性はその継承を連綿と重ね、哲学と、宗教と、科学という多様な物語たちを共有するようになった。
唐突かつ恐縮なお願いになるのだが、バベルの塔が崩落したあとの歴史の大部分を省略することをお許しいただきたい。
ときは西暦1918年、世界大戦末期。言葉と思考の進化と深化は、地球上の人類全体に影響を与えるまでになった。
つまりは、言葉自体の神化である。
この時代の人々は、その世界大戦が後に“第一次”世界大戦と呼ばれるようになることをまだ知らない。
しかし、言葉の力がそれぞれの思考と思想を変えてきたことを、歴史上最も知っていたのがこの世代だ。マルクスの『共産党宣言』、リンカーンの『人民の政治』、ニーチェの『神の死』、新渡戸稲造の『武士道』、――そして、やや異なる響きを帯びるが、ドストエフスキー『地下室の手記』、ジャック・ロンドン『野生の呼び声』などの文学作品もそれらの宣言に並べるべきかもしれない。重要なのは、それ以前ならいち地域にとどまっていた思考が、報道と通信の発達によって世界中に届けられるようになったことである。そして、思考は父となり言葉を孕ませ、言葉は母となり思考を産み、両親はそれぞれの地で子孫を育てる。
そしてだからこそ、この時代を生きた人たちは、言葉の力が社会を変えうることを信じていた。この頃に始まった時代を、“宣言主義時代”と筆者は呼ぶことにしている。その宣言主義は21世紀の現代まで生き続けている。言葉の力が社会を変えうると、たぶんまだ私たちはかろうじて信じている。
だから、今から紡ぐ物語は時代劇ではなく、現代劇である。(と、ここに宣言する)
<注意書き>
※この作品は史実を元にしたファンタジー世界内での冒険を描くフィクションであり、実在の人物・団体・事件等を大いに参考にしてはいますが、知的に緻密な娯楽作品であることを目指しており、それぞれの人物・団体の名誉を貶めることは意図しておりません。また、実際の歴史的事象への新奇な考察を述べることはあるとしても政治的意見を述べるものではないことを予めご承知おきください。
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