第6話 結婚自体が二人のプレイで遊びと告白

「はぁーっ、今だから言えるけどイリスと付き合うようになって結婚したのもエレナにすすめられたからだ」


夫はため息をつくと少し改まった口調でいった。イリスと交際をスタートさせて結婚したのもエレナに命じられるままに動いた結果だと話した。


「何を言ってるの?」

「驚くのも無理もないけど、最初からイリスと結婚したこと自体が私たちの遊びだったんだよ」


驚くべき事実を語る夫に、イリスは頭に雷が落ちたようなショックを受けて愕驚と困惑の表情をしていた。


夫の言葉を聞いたイリスは信じられなかった。パーティーで見かけて気になって交際を申し込んできた手紙に、イリスが結婚を決めた夫のプロポーズの言葉を思い出してどこまで真実なのか? と判断に苦しみ悲しくて切ない思いをする。


「開き直ってるの? ふざけないでよ!」

「別にふざけてないけど?」

「自分たちがしたことわかってるの? 遊びだなんてこんな最低な遊びが許されると思ってるの!」


夫は人の道を外れた冷酷な本性を現しはじめた。気持ちを深く結び合わせている幼馴染同士のレオナルドとエレナの隠された黒い部分を知って、イリスは疲れ果て顔色が悪くやつれて見える。


夫に与えられたイリスの精神的な苦痛に絶望の大きさは計り知れない。次の瞬間、涙のしずくが落ちる。感情を抑えようと努めていましたが涙を流さずにいられなかった。


「泣いてるんじゃないの? うふふふふ」

「本当だ。泣いてるね。あはははは」


夫とエレナは身を震わせながら声をおさえて泣くイリスに気がついた。二人はからかうような調子で言ってクスクス笑いをあげている。


「奥さんはレオナルドのこと愛してたんじゃないの?」

「え? 困るよ。私が愛しているのは最初からエレナだけなのに……」


問いかけるようなエレナの言葉に、夫はイリスの事は愛していないと胸中を打ち明ける。そして元からエレナしか愛していないと滑らかな声風こわぶりで答えた。


「あなた達、こんな事して悪いって自覚あるの?」


これだけの事をしておきながら反省の色が薄い二人に、イリスは言いようのない怒りと悔しさが込み上げてきた。


ハンカチを取り出して目に軽くあてて涙を拭いたイリスは、まともな回答が返ってくるかわからない質問を投げかけた。


「だからイリスが出て行くのは遅らせるようにしたから問題ないだろ? エレナの優しさに感謝するんだな」

「あーっ! 話にならないわ!」


家を出て行くのを引き延ばしてやったと夫は誇らしげに胸を張った。エレナにも感謝の気持ちを示せという感じの夫に、イリスはやり場のない怒りを言葉に吐き出した。

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