第4話 夫婦の話が噛み合わない
「そんな事はどうでもいい! なんでこの人がいるの?」
イリスは二人に向かって
「昨日言っただろ?」
怒りだすイリスにレオナルドは悪びれる風もなく切り返してきますが、昨日出て行けと言われて直ぐに出て行けるはずがない。そんな当たり前の事も分からないのだろうか?
「一方的に家から出て行けとしか言われてないけど?」
「じゃあ昨日のうちに準備して出て行けばいいだろ?」
「子供もいるのに突然言われても無理に決まってるでしょ!」
家を出て行けと夜寝る時に言われた。誰が聞いてもずいぶん無茶な話なのに夫は通じると思っているところがおかしい。
三人の子供もいる。イリスは子供を愛していて簡単に手放すことはできないし絶対に渡したくない。本音を語ると、夫と愛人に子供を関わらせたくないと思っている。
「子供は置いて行けばいいって言ったはずだが? とにかくエレナと暮らすから出て行ってくれ」
「何よそれ? どれだけ私が傷ついてるかわかる?」
相変わらず無愛想な顔でイリスには出て行けと言い、子供は全員引き取りたいと熱望してくる。夫の中で妻は遠い過去の人であるような気がする。幼馴染のエレナとの幸せな未来しか見ていない夫には何を言っても気持ちが通じ合わない。
「我がままを言うな! ごちゃごちゃうるさい!」
「なんでそういう言い方するの? おかしい事言ってるのはレオナルドのほうでしょ!」
出て行けと言っても妻が言う事を聞かないので、夫は今にも切れそうな顔で睨み返してきました。
激怒したときの表情はすさまじくイリスは恐怖を感じましたが、ここで負けるわけにはいかないという思いでむきになって言い返しました。
「興奮するなよ。そんなに怒ることか?」
好き勝手なことを言う夫にイリスが喚き散らすと、言葉の調子を変えてなだめるような言い方になった。
「怒るに決まってるでしょ!」
「あーもー、ほんっとにうるさいなあ」
「レオナルドがそんな人だと気がつかなかった。私の人生を返して!」
真心のこもっていない道具のような扱いをされて、わかりました出て行きますと素直に応じると思っていたのか?
妻の事はうざったい存在であると言いたげな態度に、イリスは自分の人生の幸福が全部なくなってしまうような感じがして声高に叫んだ。
「レオナルド昨日言ったの?」
その時、エレナがふいに口を挟んできた。夫婦が騒々しくいがみ合っている姿を静かに見ていて何か思うことがあったらしく、声からは疑問を抱いたように感じられた。
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