異世界転生したJK(Jyoshi Kyouso)が作る教団百合ハーレム

@sakura_ryo24

第1話 カルト宗教→(から)異世界へ……


両親に三行半を突きつけ(突きつけられた訳じゃない!)

伸ばされていた髪を耳くらいまでバッサリ切り落とし、

私物を詰め込んだキャリーケースを引っ張って、

私、天嶺(多分、本当の苗字じゃない)心花は東京行きの新幹線が出る駅までの道を歩いていた。


こんなことになった理由を語ろうとするとそれこそ、一晩二晩では語り尽くせないほどの苦労の末なのだが、それを全部書き記すと重くなるし、長くなるし、読者も喜ばないだろうから、短略するけど。

どっかの変な宗教にドップリ浸かった両親の元に生まれた私は(いわゆる、宗教二世ってやつ?)

中学生頃に出会った友人のお陰で、その宗教に対して反抗心を持って、その反抗心を5年ほど温め続け、

高校を卒業するこの春に、晴れて両親とも絶縁し、独り身で東京行きの花形電車へ乗っていくのだ!


そんな気持ちで、先程両親と絶縁したとは思えないほどに軽やかな足取りで道を進んでいた私の元へ。

1台の、車が突っ込んできた。

大きめのバンが、明らかに時速100km以上出して、信号も無視して、私に迫ってくる。

その運転手の顔は、驚いた顔でも、失敗した、やらかした、そんな顔でもなく、こちらを強く、睨みつけていた。

そう、その睨みつける顔を見て、私は何となく察したのだ。

ああ、これはきっと、あの宗教団体の、誰かの差し金なんだな、と。

その直後、とんでもない衝撃が私の意識を刈り取り、私は、考えることも、息をすることも、止めてしまった。



死んだ後の感覚なんてものは、一切なく、天国や、地獄なんてものもなく。

神も悪魔も、全て他人を騙すための虚構だと、そう思っている私が、奇跡にありつくなんて、なんて皮肉なのだろう。


青い空、煌々と光る二つの太陽、道端を通る馬とも少し違う生き物が牽く馬車。

ここは異世界で、神も悪魔も信じない私は、どうやら、神の奇跡というものを、授かってしまったらしい。



さて、この異世界に魔法というものはあるのか、それを私が知ったのは、馬車の残した轍に沿って歩き続け、どこかの街へ辿り着いた時だった。

街に入るのに門番や見張りのような人はいないのか、なんてことを私が、ライトノベル譲りの浅い知識(宗教絡みのこともあって、学校では友人も居なかったので、昼休みは図書館で一人、ライトノベルを読んでいた)で考えていた時。

道の向こうから、人々のざわめきと人だかりのようなものが見え、私はなんとなくの気分で、人だかりまで走っていった。


人だかりの中心には、一人の男と、それを取り囲むように槍を持った兵士たちが集まっていた。

男は見るからに荒れた、ボロボロの格好で、唾を飛ばしながら、何かを叫んでいる。

兵士たちも口々に、男を説得するような内容のことを叫びながら、男を取り囲んでいる。


一触即発、そんな雰囲気に感化されてか、兵士たちのさらに外側で、それを取り囲む野次馬たちは喜びとも怒りとも悲しみともつかない喚き声を上げる。

その時、中央に居る男の掌が光り、そこから、火の玉が飛び出して来た。

私が、その熱気に気圧されて一歩退くと、周囲に群がっていた野次馬達も、いよいよ自分たちに危険が迫ってきたと理解したのか、口々に人を押しのけながら逃げていく。


私が押しのけられ、一軒の民家の壁に叩きつけられた時、たまたま人混みが開けて、中央にいる、火の玉を出した男と目が合った。

途端、その男は四方八方から槍で刺され、目、口、鼻、体のありとあらゆる穴から血を噴き出した。

周囲の兵士たちが槍で支えるように刺しているから、男はその場に倒れることも出来ず、ただ、宙吊りになったかのように、そこに立たされていた。


そして更に、野次馬達は散っていき、そこで、私は見た。

男の火の玉が向かった先を。火だるまになって転がっている、小さなその体を。


「あ……うそ……」

異世界と言ったって、現実には変わりなく。

私のように、殺されるもの。私の両親のように、騙されて食い物にされるもの。弱い人達が、強い人達に踏みにじられること。


それらは、何一つ、現代と変わらなかった。


ゆらゆらと、生気を失った足取りで、先程の事件現場から離れていき、

どうしようもなく目の前が真っ暗になっていた私に、柔らかな声が届いた。

「……あの、大丈夫でしょうか?」


私が疲弊した表情のままに顔を上げると、そこにいたのは、


天使だった。


いや、違う違う。確かに、ふわふわとした髪の毛なのに、綺麗なキューティクルがあって、少し垂れた目尻が優しげな印象を出してくれるし、服装もオーソドックスな白いワンピースで。

それこそ本当に天使なのかと思うくらいに可憐だけど。


「……もしかして、さっきの広場にいたんですか?」

私がコクコクと頷くと、彼女は納得したように

「先程の騒ぎで体調を崩してしまったんですかね〜?良ければ、少し休んでいきませんか?」


……え!?やすむ!?


彼女に連れられて辿り着いたのは、小さめな教会だった。

いや……そうだと思いましたけどね!休むって言ったらやっぱり教会とか、飲食店とか、そういうとこですよね!


「大丈夫ですよ〜。私、ここで働いているので」

私の顔を覗き込んで、そうやって微笑みながら話しかけてくれる彼女は、本当に天使のようだった。


……いや!信じてないけどね!天使とか、神とか、それこそ宗教とか!

どうせ彼女もこうやって優しくした後、周囲との関係性を徐々に絶たせていって、宗教に依存させて、信者を金を毟り取るだけの機械に変えていくんだ!


なんて言っても、結局、私も盲目的な両親の子なのか、どれだけ頭で宗教に危険信号を発してても、心は既に彼女に屈してしまっている、のかもしれない。


彼女に連れられておずおずと教会の中へ入っていくと、中はがらんとしていて、少し埃っぽく、あまり元気でもなさそうな人達が少しばかり端に座って、小さな声で何かを呟いているだけだった。


「あ、司祭様……」

彼女が話しかけた先には、椅子に座ってボーっとしているだけの老人がいた。

どうにも私の頭の中にある司祭や教祖といったイメージと結びつかないその老人は、彼女をチラリと見るだけで、殆ど何の反応も示さず、ただ虚空を見つめていた。


「……あはは〜今日は、少し気分が優れないみたいで」

彼女はそんな司祭を見ても、少し悲しそうに笑うだけで、何事もなかったかのように振る舞う。

「あっちの部屋に行きましょうか。そっちの方が落ち着くでしょうし」

彼女はそう言って隣の部屋に移る。私も、ショックから(このショックは、事件現場に遭遇したことではなく天使のような人に会えた衝撃の方だ)徐々に回復して、落ち着きを取り戻していけた。


隣の部屋で二人きりになって、私は開口一番

「天使みたい……」

なんて呟いてしまった。

「えっ?」

「あ、いえ、ありがとうこざいます!その、親切にしていただいて!」

「……?いえ〜当然ですよ。これでもシスターなので」

彼女はそう言って服の端を摘む。可愛らしい。天使みたいで。


ともかく、私の失言も流して貰えたようなので、ようやく落ち着いて(先程までが落ち着いてなかった訳ではない!私は、落ち着いた状態であの言葉を口にした。心底から思っている言葉が口から溢れただけだ!)

彼女の名前を聞くことにした。


「その、私は心花といいます。えっと、あなたの……」

「あ〜、すいません、自己紹介してなくて〜。私は、フロリアーノです。よろしくお願いします、シンカさん〜」

思えばここは異世界だし、漢字の日本の名前は通じないけれども、カタカナと漢字が混在しているときっと読者が分かりづらいと思うだろうし(そもそもカタカナで書くと進化と区別がつかない!)心花で統一しよう!


「大丈夫?心花ちゃん?私も見てたけど、さっきの騒ぎ、辛かったよね……」

「フロリアーノさんこそ、大丈夫ですか……?」

「私?私はね、一応学校とかでも、ああいう現場は見てたから〜他の人よりは慣れてると思うよ〜。それでも、あれは少しショッキングだったなぁ〜」


う、あの広場での、子供の焼ける音、血の匂い……思い出すと気分が沈む。


「あ、その、フロリアーノさんは、どこの学校に通っていたんですか?」

私は話題を変えようと、フロリアーノさんのことについて聞くことにした。フロリアーノさんの話なら、何を聞いたって楽しめる気がするし。本当に天使みたい。


でも、その私の質問を聞いて、フロリアーノさんは顔を少し曇らせた。



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