1分で読めるJKのキラキラ
土井タイラ
キラキラインフェルノ
学校と家の往復ばかりの、退屈な日常から抜け出したい。
そればかり考えて苦しかったので、色々詰め込んでみた。
まず手始めにファミレスのバイト。マニュアルがわかりやすくて、先輩も親切で、すぐに慣れた。
食欲の秋だから、お菓子作りも始めてみよう。へー、簡単でかわいいレシピの動画、いっぱいあるんだ。うん。美味しい。作って写真上げたら、たくさんイイネもらえた。
次にスケジュールに追加したのが、予備校。もう来年は高3だし、ちゃんと進路考えないとね。学校よりも面白くて、ぐんぐん成績が伸びた。
忙しい毎日を送っていたら、友達が褒めてくれた。
「何でもできてすごいよね」
「ええー、そんなことないよ。たまたま運が良かっただけ」
照れ笑いで謙遜したけど、正直、気分が良かった。
私を悩ませていた退屈は消え去り、時計の針が回転を速める。木枯らしが吹いて、初雪が降って、街ではジングルベルが聞こえる。
予備校の冬期講習で特進クラスに上がったら、周りについていけなくて苦しくなった。
バイトを止めて、誰よりも早く自習室に入って、最後の最後まで残って勉強する日々。お菓子なんか作る暇ない。
いつも自習室で顔を合わせる男子と仲良くなった。余裕で旧帝目指せるって言われてる彼が、こんなに必死で勉強してるなんて知らなかった。
……と思ったら違った。
「き、君のこと、前から気になってて」
え、私といるために自習室に来てたの?
うっそ、嬉しすぎる。
いっしょに初詣に行って、付き合うことになった。
友達に報告したら、祝福してくれた。
「おめでとー! 彼ピの写真見せてー。え、やば、かっこよ」
初めてのおうちデート。
あれ? このキッチン見覚えがある。
「もしかして、このお菓子のレシピ動画撮ってるのって……!」
「俺の動画見てくれてたの? マジで? そんな偶然ある!?」
運命だ!
抱き合って喜んだ。
でも、彼といっしょにお菓子作りを再開したら、苦しくなった。
彼は勉強の要領がよくて、製菓も料理も上手。私は成績落ちたし、お菓子作りの腕前も彼には遠く及ばない。
おかしいな。
何をしても苦しい。
「ねえ、私のどういうとこ、好きになったの?」
「最初は顔だったけど、それから気になって追ってたら、なんでもすごく一生懸命に取り組んでて可愛いなって思った」
そっか。
苦しんでる私を好きになったのか。
退屈でも苦しくて。
がんばりの果てに運命の相手を見つけても苦しくて。
地獄じゃん。
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