第6.5話 クラム殲滅部隊
◾️ 春風 庄司の視点
壁や屋根が壊れて、瓦礫があちこちに散らばっていた。
俺、春風 庄司(はるかぜ しょうじ)は、あるショッピングモールで起こったクラム事件の現場にいる。
元々あったショッピングモールの半分が崩壊した状態で、被害は大きなものとなった。
幸いにも怪我人はおらず、死者も出ていない。
(こんなにも大きな被害が出るのは、珍しくはない。だが……)
俺は考えた。この崩壊した状況から見て、大型のクラムが出現したことは分かる。だが、クラム殲滅部隊が現場に到着した時、クラムらしき存在などどこにもいなかった。あったのは、崩壊したショッピングモールの瓦礫のみ。跡形もなく消え失せていた。
(クラムを消滅させることは、不可能ではないが、相当の実力者じゃないと消滅させることはできないはずだ。もしくは小型のクラムを殲滅する時ぐらいだ。ならば、ここでクラムを殲滅した人物は、強いカルムだったというわけか…)
俺は、結論を出した時、心の中がうずうずした。
(ああ、ダメだな、俺は……いつも、強い奴のことを考えると、そいつと戦いたくて仕方がなくなる!日向や玲に止めておけって言われてるのになー)
俺は呑気にそんなことを考えていた。
「庄司さん、鑑識の方の調査が終わりました。」
俺の部下がそう伝えてきた。
「おう!ご苦労さん、それで何か分かったかい?」
「はい、この現場に現れたクラムはレベル4の大型モンスターだったそうです。」
「レベル4か」
レベルとは、色々な個体で存在するクラムを戦闘能力また、技術面でランク分けした強さのことで、レベル1から始まりレベル10までの10段階存在する。レベル1は弱く、レベル10が強いとされている。だが、レベル1だからといって、弱いと考えて、手を抜いてはいけない。レベル1でも、現れれば国民が被害に遭う可能性はあるのだ。レベル1で、人が50人程亡くなる、もしくは、重傷を負うとされている。よって、レベル1でも、手を抜いてはいけないのだ。
そんな強さを持つクラムがレベル4で出現した。普通のカルムではすぐにやられてしまうか、手こずって重傷を負うかのどちらかだ。だが……
「血痕など、手がかりになるようなものはなかったか?」
俺はこの場所に現れたカルムについて、知りたくなった。
「いえ、血痕などは見つかっていません。ただ……」
「ただ?」
「僅かに、カルムの人と思われる能力の粒子が検出されました。」
「ほう?その粒子はどんなだ?」
能力の粒子とは、カルムが能力を解放した時に自身にもそして、武器にも宿るオーラのようなものが小さな光の粒となって辺りに飛びまうもののことを指す。能力の粒子の色や形によって、そのカルムの能力の色や力具合を知ることができる。
また、能力の粒子を他人が手にすることで、適性があれば、そのカルムの能力を使うことができる。まあ、ある種の情報のようなものだ。だから、この能力の粒子は能力の発動を止めるとすぐに消えてしまう。情報を得るには粒子が消えてしまう前に、取り込む、もしくは回収をしないといけないのだ。
今回の粒子は微量だったが、検出したらしいので、そのカルムの情報を確認しようと思う。
「この粒子がそうなんですが…」
「本当に微量だな、まあいい、少し見せてもらうぞ?」
その粒子をよく見ると、赤色と黒色が混じったような色、そして、紫の色をしていた。
「ふむ、赤黒と紫か…それにこれは、炎系か?」
粒子が少しゆらゆらと動いていて、よーく見ると、火の粉のように見える。
「はい!機械の方でも、赤黒の炎と紫の炎と結果が出ています。」
能力の粒子を調べることができる機会を使って正式な鑑定をしてもらったが、結果は俺の意見と一致していたみたいだ。
(ふむ、赤黒の炎と紫の炎……そして、レベル4のクラムを消し去るほどの実力者……ん?思い当たる人物がいるんだが……まさかな?あいつら、目立ちたくないとか言っていたはずだし…でもなーどう考えても、これはあいつらな気がして仕方がないんだが、しかも、痕跡を綺麗に消してるし……うん、多分確定だな)
俺はそこまで考えると、鑑識にこう伝えた。
「思い当たる人物がいなかったわ!悪いが特定するのは無理そうだ、そう上のもんに伝えといてくれ」
(俺があいつらのことを売るような真似はできん!たとえ、クラム殲滅部隊の上のもんたちが知りたがろうと、裏切り者だと言おうとな……
あいつらはもう、自由だ!!俺らの問題に利用するわけにはいかないねえな…)
俺はそう決意しながら、現場を離れた。
(家に帰ってから、あいつらに電話しよ、状況とかの報告が欲しいし、あいつらと話したいしな)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます