京都のとあるアパート(実話)
永田
第零話 京都のとあるアパート 怖さレベル:0
約三年前、大学に通うために地方から京都市内へと引っ越した。家探しは両親も付き添ってくれて昼中に終わった。ただ両親は家賃を抑えたく俺の要望はそっちのけで不動産にいろいろと注文していた。(後半は不動産側も当人の俺じゃなくて両親の顔色をうかがって内見してた。)低コストっていうのもあって1軒目はまじで無しだった。質素で作りも甘くてボロボロ、なんかの重い罰ゲームじゃないと住むのは納得できなかった。2軒目はまああり。一階がコーヒー屋で近くに鴨川も見えて全体的な雰囲気はよかった。父の推し部屋。3軒目の外観はよかった。二階建ての小さいアパートだけど、よくある所謂豆腐型みたいに屋根が平べったくなくて、アパートでは珍しい三角屋根だった。だから、むしろおうちみたいでかわいかった。一階の玄関前には鉢や小さい庭に木や花があって、二階には住民全員が使える共有バルコニーがあった。とにかくこんな具合で見た目はバッチリだった。しかし、屋内は対照的にどこか暗い雰囲気があった。二階に上り屋内の廊下に足を踏み入れた瞬間に雰囲気がガラッと変わった。3月の春の訪れを感じる気持ちの良い温かさが屋内にはなかった。ロジカルに言えば太陽の光が入りづらいからだろう。しかし自分の何かしらの勘に言わせてみれば違和感を感じるほどの薄気味悪さだった。冷たく光る蛍光灯はあまり意味をなしていなかった。廊下だけだろうと思い込んでいた。いや、そう言い聞かせていたんだろう。その希望とは裏腹にカギをさし、開いた扉の向こうにはやはり薄暗い部屋が続いていた。けどまあ、全然許容範囲ではあった。廊下よりは陽の光が入るし、1,2軒目に比べれば多少広い。廊下で感じた違和感もなかった。まあこれもありって感想。そのアパートをあとに4軒目に行く準備していたら不動産の人が「では以上の3軒です。」と一言。「少な!」という心の叫びは声にしないようにした。実は両親は3軒だけと知っていたらしい。(なんで当の本人に伝えないんだよこいつ)っていう心の声はもちろんしまっておいた。母は割と3軒目派らしい。俺自身は2か3で迷っていた。父は2軒目派、母は3軒目派、俺は迷い中。この構図ができている時点で3軒目に引っ越すことは決まっていたのだろう。うちは現代を象徴する家庭だ。母の権力は何気にやはり強い。俺も3軒目で後悔は特にしていない。霊とか怪奇とかを信じてない人間だから廊下の薄気味悪さは大して問題視していなかった。部屋も日当たりは悪いものの生活に支障が出るほどではない。むしろ良い点もいくつかある。まず7畳。物をあまり置かない自分にとっては充分の広さ。おまけに収納が多い。無料のWi-Fi(激強)。ゴミ出しはいつでもOK。コンビニは徒歩1分だし近くに駅も、趣味のサッカーができる公園だってある。大学にも難なく通える距離だ。やはり流石母。彼女が3軒目派で良かった!そう思えた。
その日中にこの部屋を契約した。それから1カ月後、ここでの生活が始まる。この家賃
「3万円」の部屋で。
それからだ。俺が不思議で少し怖い体験をするようになったのは。
でも一番不思議なのは母だった。なぜこの部屋を選んだのだろう。そこに何かがいることも俺がこれから嫌な体験をするのも全部「知っていた」のに。
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