第2話 見世物小屋火災事件.6
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窓もない部屋で目を覚ます。
白い天井が目に入り、それと同時に耐え難いほどの苦痛が体を蝕む。
否、と――は思う。
こんな苦痛は、――にとっては苦痛のうちに入らない。
生まれてから常に針のむしろにいるような気分だった、――には。
生まれてすぐ、母親は――を捨てた。
人生のほとんど全てを、あの狭いテントとともに過ごした。
あのテントは、牢獄だった。
どこに行っても、どの街に立ち寄っても、結局自分はあのテントからは逃れられない。
火傷で変わり果てたこの姿になっても、それは変わらない。
きっとこれからもずっと、自分の人生は地獄だ。
だからせめて、住む地獄は選びたいと思った。
ふと、ショーのみんなと見たマジックランタンを思い出す。
ガラスに描かれた小さなイラストに光を当て、壁に映し出すマジックランタン。
それを見て目を輝かせていた、愛しい仲間の姿を。
ガチャリ、と扉の開く気配がして、――はそちらに視線を向ける。
薄暗い部屋の中で輝く空色の瞳と目が合う。
ああ……あの瞳は、あの夜にも見た。
もし神様がいるならきっとこういう目をしているのだろう。
雲ひとつない青空のような、一点の曇りも許さない目。
その目を見つめ返しながら、――は息を吐いた。
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