第10話“良い男になるスイッチ”は?
「ねえ幸人、ちょっと話があるんだけど!!!」
「なにさ早苗、どうしたんだよ・・・?」
ある日の夕方の事、西東京市にある“保谷マンション”の一室に住み家を間借りしていた幸人と早苗の幼馴染カップルは、夕飯を済ませて後片付けを終えた後で、テレビを見ながら居間で話し込んでいた。
「よくさ?世間一般的に“良い男”って言葉が出て来るじゃん。あれってどうすればなれるのか、幸人は知ってる・・・?」
「・・・知ってるよ」
早苗が何気なく発した言葉に幸人が頷いて応えた。
「うそ・・・。マジで知ってるの?私てっきり“俺にも解らないよ”とか言われるんじゃ無いかと思ってた!!!」
「ずっと前に、女性霊能力者の人から聞かせてもらった話だよ。ちなみにその人は“龍神様から教えてもらった”とハッキリと言っていた、だけど・・・。当時の俺が見た所ではその人の事はともかく、話の内容はかなりぶっ飛んだモノだったからね。流石にビックリさせられたけれど・・・」
「・・・・・っ。うんうん、それでそれで!!?」
「結局俺はその後の、自分自身の人生を通してそれが間違いでは無かった事を思い知らされる事になったんだけどね・・・?ま、話を元に戻すけど。実は“良い男になれるスイッチ”は、男性ならば誰にでも備わっているモノらしいんだ」
と、そこまで言った後で幸人は不意に真顔になり、逆に早苗に尋ねて来た。
「早苗、ちょっと聞きたいんだけれども・・・。君から見た場合、俺は“良い男”だと思うか?」
「・・・ええっ?なによ、突然」
「頼むよ、正直に答えてくれないか・・・?」
真剣な面持ちで彼氏から迫られた早苗はちょっとの間は考えていたモノの、やがて恥ずかしそうに、そして照れ臭そうに頷いて応じた。
「うん・・・。幸人は良い男だと思うよ?だって凄く優しくて頼もしいし、格好良いし・・・。家の事とかも“俺がやるよ”って言って色んな事をやってくれるしね?それに“退魔業”の時なんかも、何度も私の事を守って助けてくれたりしてるもんっ!!!」
「・・・そっか」
はにかみながらそう頷いてくれた幼馴染の彼女に対して幸人はしんみりとした笑顔を浮かべて“有り難う”と素直に応えた。
「でもね、早苗。それは君のお陰なんだよ?」
「・・・・・っ。私の?私のお陰って、私は何もしてないよ?」
「そんな事はない」
するとそう言ってキョトンとする恋人に対して今度は幸人が少し照れたように語り掛けて行く。
「ちょっと恥ずかしいけど、言わせてくれよ?早苗。君はね、俺にとっては最高の女の子なんだ。掛け替えの無い唯一無二の、大事な大事な人なんだ。俺は本当に、君に出会えて良かったって思えてるし、俺の中ではマジで最高に可愛い女の子なんだよ!!!」
「・・・~~~~~~~っっっ///////////////あ、有り難う?で、でもなんかなぁ~っ。いや、マジで照れるんですけどっっっ❤❤❤❤❤」
それを聞いた早苗は嬉しそうにしながらも、やっぱり顔を赤らめてしまい視線を下に落として幸人から逸らしてしまうが、そんな幼馴染の女の子としての仕草もまた、幸人は“可愛い”と感じていた。
「さっきの話の続きをするんだけどね?早苗・・・。男の子は誰もが皆、“良い男になれるスイッチ”を持っている。だけど自分ではそれを入れる事が出来ないんだよ、“じゃあどうすれば良いのか?”と言うと、女の子に協力してもらわなくちゃならないんだよね」
「・・・・・?」
「“良い男のスイッチ”は二段階構造になっていてね?早苗、一番初めのは女の子の事を本当に“可愛い”って思った瞬間に入るんだって。つまり“この子の事を守りたい”、“大切にしたい”って思った瞬間に。ね?で、二番目のヤツは・・・」
そう言うと幸人は初めてそこで動揺した、と言うよりも、躊躇する素振りを見せた。
「・・・なによ幸人、早く続きを教えてよ!!!」
「・・・じゃあ言うけどさ?“二番目のスイッチ”は自分に抱かれて心底嬉しそうに、気持ち良さそうに喘ぎ乱れる女の子の姿を見た瞬間に入るらしいよ?多分、女の子に愛してもらえている喜びが自信になり、それと同時に“男としての自覚”が出るんだろうね。そう言う事なんだろうって思うんだよ」
「・・・要するに、ウチら女子達の、セックスの最中の恥ずかしい姿を見た瞬間に入るってこと?」
「正解!!!」
最初は“何を言ってるんだろう?この人は・・・”と言う眼差しを送っていた早苗はしかし、段々と彼氏を見る目付きがいかがわしいモノを見る際のそれに変わって来ていた、最初は良い話だと思ったのに“結局はセックスの事じゃん!!!”と突っ込んでみせる。
「ごめんごめん、早苗。怒らないで?だけど俺はこれは事実だと思うよ?君の女の子としての姿を見た瞬間に、“自分がしっかりしなきゃ”って思えたし・・・。それに俺に抱かれて悦んでくれている時の君を見たら“ああ、俺はこの子を満たしているんだ”、“この子は俺の事を本気で愛してくれているんだ”って言うのがハッキリと伝わって来てさ?凄い自信になったのを覚えてるよ・・・!!!」
幸人が改めて仕切り直すと、それが嘘や冗談では無い事が解る早苗もまた、佇まいを糺した。
「それにね?早苗。男にとっては“セックス”って修業なんだよ、間違っても愛する人との“性的遊戯”じゃ無いんだよ。本当はね!!?」
「・・・・・?なによ、それ。セックスって最高の愛情表現の一つでは無いの?“お互いに愛情を確認し合う為のコミュニケーション手段”って言うか」
「・・・いいや、違うね。もっと言ってしまえば少なくとも、女の子にとってはそれで良いんだけど。逆に男にとっては女の子に最高の喜悦って言うか、愛欲愛情の頂点を極めさせる為の行為であり試練なんだ。それが出来ないと女の子が色んな意味で満たされないんだよ、不完全燃焼になってしまうからね。まさに自分の全てを試される瞬間であり機会、それが男にとってのセックスだ」
怪訝そうな顔付きとなる早苗に幸人が続けた。
「女の子はね?セックスでちゃんとしたエクスタシーを感じると恋人と“気”が混じり合い、芯からその男の人のモノになり尽くして行くんだそうだ・・・。いいや、それだけじゃない。場合によっては“次元を超えた法悦”や“比類無き恍惚感”を得る事すらも出来るらしいんだよね。要するに愛する人から“忘れられない程の快楽”を刻み込まれた挙げ句、その人との間に“蕩けるような一体感”を覚えて精神も肉体も、本当に満たされるんだそうなんだよ?」
「・・・ねえ幸人、もしかしてそれ。自分で自分の事を言ってる?」
「・・・えっ、なんで?」
「だって私、幸人とのエッチでいつもそうなるし。ヘロヘロになっちゃうから・・・」
「・・・・・」
そこまで話した途端に早苗は、自身が恋人の前で墓穴を掘ってしまった事を悟った、直感的に“幸人の男の子の部分に火を点けてしまった”と理解する。
「早苗、嬉しいな。そんなに俺で気持ち良くなってたんだ・・・!!!」
「あ、あの。幸人・・・?」
「ねえ早苗・・・」
“今晩、抱かせて?”と言うと幸人は早苗を連れて、奥の寝室へと引っ込んでいった。
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