第30話 恥をかいた夫は元から不名誉な状態

昨夜は夫に襲われそうになり侍女たちに助けられた。朝目覚めたソフィアは心底ほっとした風情を見せていた。夫は軽い打撲で済みましたが、部屋で一人になると瞳は虚ろで悲しい顔になる。


「いたたたた……っ」


背中から腰に鋭い痛みが走って無意識に声を出した。妻の専属のボディガードに張り倒された事を思い出して、情けない気持ちになりジャックは寝られずに一晩中むせび泣いていた。


ソフィアは心が広くて優しく思いやりのある女性なので、昨日の事は夫に悪いという気持ちもあった。不意にマリアの事が頭に浮かんで、このままの夫婦関係では駄目だと思い夫と話してみようと部屋にいく。


ドアをノックする音を響かせていた。ですが夫からの反応はありません。だけど夫婦として話し合う必要があるので部屋に入った。


「あなた?」


夫はまだ寝ているようだ。にも関わらずなぜか? 声よりも息に近い苦しそうな感じで、ベッドが揺れてもぞもぞと動いている。


純粋なソフィアは室内のかすかな光の中を歩いて近づいた。夫はお腹でも痛いのかな? 病気をしているのか? 妻は本気で心配になって身体を覆っていた掛け布団を勢いよく剥ぎ取った。


「……!?」


めくった瞬間の夫の顔は呆気にとられた不思議な顔して人形みたいに固まっていた。


孤独な営みをしていた夫の姿を見た瞬間、ソフィアは棒立ちになってしまった。何も考えられずに夫が汚く見えて、ソフィアは気の毒そうに眉を寄せて涙ぐましい心情になる。


「うわあッ」


夫はうわあと叫んで膝までおろしていた下着を超スピードで上げた。


「いきなりひどい……声をかけてくれてもいいだろ? 夫婦でもプライバシーを侵害することはどうなんだ?」


単独でエクスタシーに到達しようと頑張っている夫を見るのは初めてで、妻はしばらく何も言えませんでした。


「ごめんなさい。でもノックをいたしましたよ」


ソフィアは幼い頃からの教育で礼儀正しい振る舞いといったものは、当然のように身につけている。ノックをしても応答がないので仕方なくドアを開いたのだ。


「僕は自尊心を傷つけられた。よくも僕に恥をかかせてくれたな!」

「もうよろしいじゃないですか?」

「何が良いんだ?」


夫は心の中で形勢逆転したという思いで激怒して食ってかかる。ふてくされたような態度を取ってきた。


夫が大きなショックを受けたのかもしれませんが逆切れはいけません。こんなの天災的な不慮の事故のことで、怒る必要もないし知られて困るようなことでもない。


「あなた今さら何を言っていますか? この前ご両親様の前で不名誉この上ない汚点だらけの姿をさらしたではありませんか?」


SMプレイに没頭していた汚らわしい獣が何を吠えているのか? とても生きていられない屈辱を味わったではないですか? ソフィアは憐れむような口ぶりで言った。

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