第13話 夫の秘密を知っていたお兄様
「僕たち夫婦が離ればなれになったら、子供たちが寂しがるんじゃないのか?」
「リアムとトーマスには、前もって話はしてあります」
「二人はなんて言ったんだ?」
「私と暮らしたいと答えてくれました」
「そ、そんなバカな……僕が子供に聞いてみるからな!」
この夫婦は幼馴染の関係でジャックが熱をあげて、ソフィアをしつこく口説き落として付き合い結婚した。プロポーズをした時にソフィアが少し迷っていると、受け入れてくれないなら離さないと足にしがみついて泣き出し奇声みたいな悲鳴をあげられ大変だった。
なんと場所は高級レストランで店の人や客たちに気の毒な視線を向けられ、ソフィアは恥ずかしい思いをしながらプロポーズを受け入れることになる。
そんな風なら夫のほうが妻を気遣っていると思われますが、実はジャックは恐ろしいまでのナルシストと自己中な一面を持っていて、昔からしばしばそれが見られソフィアはデートの時など、よく振り回されていたのが内情でした。
「リアムはパパと一緒に暮らしたいよね?」
「ママがいればパパはいらない!」
「え? リアムそんなこと言わないでくれ。パパ泣きそうだよ」
「嘘泣きはやめろ!」
「リアム? いつからそんなにパパに厳しくなったのかな?」
「パパが最低だからだ!!」
ジャックは子供からの尊敬が終わってしまい軽んじられ、侮蔑の眼差しを向けられ相当堪えている様子。泣きまねをして謝り続けるしかないが、予想外に子供から冷たくされ頭の中は真っ白で倒れそうになる。
子供にパパ最低だねと追い打ちをかけられ、父親はポキリと小枝のように心が折れてしまって身体から力が抜けていき、がっくりと肩を落とし床にしゃがむ。
「僕は離婚する気とかは一切ないからな!」
「そうですか」
「ソフィア、僕は愛してるんだ」
「あなたの薄っぺらい愛なんて必要ありませんから」
開き直って強気に出た夫は自覚ないかもしれませんが、クズの見本のような男になってしまったようだ。
愛を宣言した所で妻から切り捨てられ、正気じゃいられない顔になった。妻子が協力して夫を奈落に落とし、祝勝会をあげる時の表情に変わっていた。
「お父様助けてください! これは何かの間違いです。妻と子供がおかしくなりました」
「お前と言う奴は……私の可愛い孫を苦しめてよくそんな事が言えるな」
「一度病院に行って頭を見てもらいなさい」
離婚と慰謝料回避のために、親に泣きついてもあっさりと見捨てられた。自分は被害者と言い張るジャックに、能面のような顔で情けない息子だと思いながら言った。
「――妹と結婚しておきながら、お前は遊びまくっていたようだな」
部屋の中がしんと静まっていると一人の紳士が、待っていましたという感じで話しはじめる。妹ソフィアを特別な存在として溺愛している兄ダニエルでした。
ジャックに向かってお前の秘密は知っているぞ! という顔で言い、次の瞬間ジャックは心臓がドキッとして身体を震わせ不審な挙動を見せた。
(どこまで知ってるんだ?)
そんな気持ちで不安で全身から冷や汗が出た。
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