8.キングオブロックンロール神楽坂自警団【2】

「ぎゃーーーーーーーっ!!」

「どわーーーーーーーっ!!」


 雑巾を裂くような男の悲鳴二重奏が聞こえてきて、俺はベッドから落ちるほど飛び上がった。

 エレベーターが格子で出来ているこのビルは、階段ががらんどうな所為で音がものすごく反響して響き渡る。


 男の悲鳴二重奏がハルカとミツルなことも即座に判った。

 コワイけど、見に行かないのもまたコワイので、クイックルワイパー【フロア用】を構えて廊下に出た。

 俺の部屋のまえから、エレベーターのシャフト越しにフライングチームのハルカとミツルが蹲っているのが見えた。

 死んでるのかと思ってビビったが、踊り場までりてそばでよく見たらウンウン言いつつ動いてて、腰を抜かしているだけのようだ。

 そこで二人に声を掛けようとしたら、下から白っぽい顔が覗いたので、俺も悲鳴を上げそうになった。


「オマエまで叫んだら殴るぞヘタレ!」


 と、即座にエビセンが怒鳴る声がしたので、慌てて悲鳴を飲み込んだ。

 エビセンの後ろには、コグマがくっついてきている。


「コイツ、悲鳴が聞こえただけで部屋で叫びだしやがって、あったく、どんだけビビリぐまなんだか!」

「海老坂クンもコワイけど、一人で部屋にいるのもコワくて!」


 エビセンの背中にくっついてきたくらいだから、恐怖の大きさが容易に想像つく。

 俺だってどれほど目がコワくたって、こんな幽霊騒ぎに全然動じてないエビセンの後ろに隠れたくなる。

 というかエビセンがどっかのスポーツ部の主将みたいに、デッカイ声でどやしてきてるほうが、ワケの解らぬ怖さが軽減される気がする。

 そんなこんなで、みんなでハルカとミツルを抱えて、シノさんの部屋へった。

 話を聞いたシノさんと敬一クンは、ビルの階段を上から下まで確かめにってくれたのだが、何も怪しいものは無かったと言う。


「皆さんの話だと、白っぽい幽霊のようなものがスウッと消えたというのが一致してる目撃状況ですが、そうするとその幽霊のようなものはただ消えてるだけで、今のところ実害は何も無いってことですよね?」


 敬一クンに言われて、俺達は顔を見合わせた。

 そう言われちゃうと身も蓋もなく、何ということも無いものを見て、ビビッて騒いでいる俺達のほうが変みたいな感じになってしまう。

 俺は一所懸命に、そうじゃなくて! という説得を試みた。


「ケド、でも、ほら! ゴキブリだって、出るだけで刺したり噛んだりしなくても、駆除するじゃない?」


 するとハルカが右手を上げて

「幽霊が出るなんてウワサが立ったら、フーヒョー被害で客足が落ちる心配がありますが、ゴキブリは雑菌繁殖させて病原菌を媒介するから、下手すると一発で営業停止になりまッス。店舗経営者としては、ゴキブリと幽霊は比較にならないぐらい、ゴキブリのほうが天敵ッス」


 と言い、続けてミツルも

「それに、家電にハイり込んで漏電火災を起こしたりするコトもあるッス」


 と、おまえらどっちの味方なんだよ! てな発言をしてくれて、俺の説得話は空中分解した。

 最後に敬一クンが、

「みなさん明日の仕事もあるでしょうから、とりあえず今夜はここまでに。明日以降も巡回を続けて不穏なことがあるようなら、俺が公的機関に相談に行きます」


 と締めくくり、一同は解散と相成った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る