3:驗(シルシ)とプロトタイプ(巨大おはぎ) その1
「
「ミソシル!」
「は? お味噌汁なら、隣のコンビニに売ってますよ? VR
「―――いっけねっ! 俺、寝落ちしてたっ!? いつの間に?」
少年は、パイプ椅子の背もたれから、飛び起きた。
”こってり豚汁”に固形コンソメを一個足して、お湯たっぷり目で作ると、
「―――お疲れですか? 若っいのに」
自慢の味噌汁改造レシピを聞いていない少年に、詰め寄った
後頭部と連動してるっぽい、
無造作に持ち上げられる、”真っ黒く無骨なVRHMD”。
たとえ
ただ、VR専門家である笹木
ソレは、朝起きられない子を、叩き起こす
「―――だってあの、でっかい
ボッサボサの髪を左右により分けながら、少年は自分の眼で周囲を見渡した。
眼のすぐ前に吊り目美人の、細い腰。
ち近い近いと、ガタガタと後ろへ下がる少年。少年の右眼の上辺りを、ピンク色のウサちゃんが飛び跳ねているが、絆創膏の柄は
あら、カワイイと、指先でウサギを突こうとするが、猛烈な勢いで
「強制ダイブアウトの原因は、
「おっかしーな、これ、
「どこか、お体の具合でも悪いんですか?」
女史の声色が、柔らかいものに変わる。
「超ー、健康すよ? おっかしーなー?」
腕組みして左右に首を傾げる少年。
「それなら良いですけど、どうします? クエスト形式で受けた特典がなくなっちゃいましたけど?」
女史の声色が普段の、無機質なものへと戻る。
「クエストの
「は? トポロジックエンジンが自動作成する、”チャレンジポイント”の獲得に決まってるじゃないですか?」
女史は、何バカ言ってるんですか、と首を小さく横に振っている。
「チャレンジポイント? そういや、ワル……アイツがなんかフザケてやってたの見たな……」
「フルダイブVR中に、行った動作の全てから、言語化できる行動や状況に付随したポイントが、支給されるアレですよ」
「えっと、そのポイントは、何に使えるん―――?」
「今のところ、特に、使い道は有りませんが、―――何か?」
喰い気味に即答する女史から、
「……へ、へぇーっ。それは、―――お、面白いすねぇーーーっ」
「
横に屈み込み、少年に顔を近づけた、女史の瞳が細められる。
「なんすか? いきなり……
寄り添う女史から最大限、身体を避けながら解答する。
「はい正解。
女史は、立ち上がって、首から下げていた、オレンジ色の”V.O.I.Dチャージャー”を操作した。その透明じゃない瓶の
但し、朱色に変わってしまった部分。つまり、現在の本人のニューロンにおける量子的状態から、大きく変化してしまった”
それが
「あれ? そんなに時間掛かるんすか!?」
慌てるヴォサ髪。
「はい残念ー!
首から下げていた、オレンジ色の”
「俺、今回、役立たずだから、せめて
ボサボサ髪の少年は、片手で顔面を覆った。
「あら? これ、ウチの倉庫から、お出しした
巨大おはぎをペタペタと撫で回す女史。
女史が触りやすいように、宝物を扱うかのごとく、両手で巨大おはぎを掲げる少年。
「はい、さっそく使わせてもらってます―――ました」
特区及びスターバラッド運営が
それらの運用には、有る程度の技術力が必要らしく、譲り受ける際に、
「その
と
「
と、言ってしまったが
今日はもう、リダイブする事ができないと判明し、意気消沈する
「ん゛っん゛ー。えー、コレは私の独り言ですがー、
女史は、壁から小さなテーブルを、引き出している。この作りは
「こほん。―――
あー、んっんっー。
歯車の付いた凝った作りのソレを経由すれば、笹木
「音声入力―――」
「じゃー
女史は、
◇◇◇
「ここんとこ、魔法なんて使ってなかったぜ。……えっと」「詠唱入力」
もう、地表までの距離は、それほど残っていない。
「タバスコ:タバスコ:悪夢:空豆」
言葉が発せられる度に、杖の先に付いた
電気的な作動条件は、物理法則に沿っているが、ソレが制御しようとしているのは
内部処理的には、凄まじく高度な処理を行い、導き出されている結果だが、使用法も、効果も、『
杖が発する気配を感じ取った、青い逆算角形が、
ソレは、
チュイーン、チュイーン、チュイーン、チュイーン、チュイーン、チュイーン、チュイーン、チュイーン!
地面から突き出た根っこの先に巻き付けられている、まるで爆薬のような何か。
その起動音と共に、小さな赤い光が、蒼鬼を取り囲んでいく。
背後からの
ボボボボボボボボムン!
突如立ち上る、カラフルな爆煙。
今この場には、4勢力が集結していた事になる。
トグルオーガ勢。カタナカ勢。ラケルタ勢。
そして新勢力、
―――広域攻撃を持つ、おそらくは
その蒼鬼の足下、十数メートルに及ぶ
「ッ―――ベーコン:電球:トルティーヤ」
顔をひきつらせつつも、少女は、途切れること無く
「発動」
先端の
内部の、フィラメントが熱電子を放出し、光量を最大にした。
携帯用に折り畳めるようになっている箇所以外には、特に動作部分のない杖から、カチンッと鉄板が鳴るような音が発せられた。
ぽこ、ぽこ、ぽここ、ぽここここここここぶわわわわわわわっ!
その視界全てを覆い尽くす、
杖先端の30センチ前方。空中の一点から、吹き出すように出現した、黄緑色の大量の風船。風船同士がバラバラにならずに、ボギュギュギュッとくっついたまま、円形に広がり平面となった。直径は5メートルほど、蒼鬼で言ったら2個弱くらい?
ボギュッボムン!
魔女っ娘は、空中に出来上がった、風船の
パパパンッ!
杖の先端が当たった箇所の風船が数個割れる。
風船の平面は、厚みが50センチほども有って、それ自体が空気抵抗を受けて、
急に出現した、風船の平面。
その影になった直下。アッパーを繰り出す
だが、
ウゴゾゴゾ、ウゴゾゴゾッ。
波打つ地面に、足を取られ、突き上がる拳が空を切った。
バランスを崩す蒼鬼に覆い被さる、無数の風船で出来た、黄緑色の
ブモォーーーーッ!
ゴゴゴパッァァァァッ!
風船の絨毯の周囲に点在している岩石の1つが、宝石のように光り輝き、地面から浮かび上がる。
ウゾゾウゾゾウゾゾッ!
輝く岩石は宙に浮いているわけではなかった。岩石から生えた樹の根っこのような触手によって、持ち上げられていたのだ。岩石の底から、荒縄のようなものが生えていて寄り集まって、大樹の根っこのようになっている。
光る岩に驚き、回避行動中の
ゴロゴロゴロロッ!
転がっていくトグルオーガ人気ナンバーワン。
そこへ、跳ね回ったあげく
フッギャッ! 痛っで! ゴン! ばたり、ばたり。
仰向けに倒れる
ボムン!
”
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