第6話
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「あ、メール」
コピー室を出たところで、晴仁は携帯電話を取りだした。
美香が入ってきたせいで、メールを途中までしか読めていなかったのだ。
続きの文は、前半の落ち込み具合とは異なり、前向きに『これからまた他の求人を探して来る!』と締め括られていた。
晴仁は、その一文を見て失笑の溜め息を零した。
画面の一部が溜め息で白く曇る。
早く気付けばいいのに。
どうがんばっても自分はだめだって。
自分は何をやってもだめな人間、だから、晴仁に頼ってしか生きていけないと、早く気付けばいい。
どんなに頑張っても報われず就職を、人生を、諦めた時、彼はどんな顔をするのだろうか。
どんな風に自分へ泣き縋ってくるのだろうか。
健気でひた向きな姿勢が崩れる瞬間を想像することが、今の晴仁の何よりの楽しみだった。
次は会議が入っているため、早めに昼休みを切り上げなければならない。
晴仁は素早くメールを作成した。
『履歴書、残念だったね。でも、きっとこれは神様がもっといい就職先があるよって言ってくれてるんだよ! 僕もまた履歴書の内容、一緒に考えるからがんばろう!』
返信完了の文字が画面に出ると、晴仁はにっこりと微笑んだ。
「がんばってね」
晴仁は心の底から応援した。
がんばって。
がんばれば、がんばるほど、絶望は深くなる。
晴仁は足早に会議室へ向かった。
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