殺人犯の俺が異世界に落ち王の娘を守ることになった!(イヤイヤ)。

@idarimaki

第1話 プロローグ

八月の満月の日の暑い夜、住宅街の中にある一目で金持ちとわかる日本庭園のある大きな家の中で、真っ黒の上下の服をつけ小さなバックを背負っている男は明るく大きなリビングの中で警察官から奪ったニューナンブ拳銃を持ち両手両足を縛られて地面に倒れている中年の頭が禿げた肥満体の裸の男に向けていると警察のパトカーのサイレンの音が近づいてくるのが聞えた、この家に侵入して女を人質に進入したときに金髪の男が逃げようとしたため止む終えず発砲した音が近所の人にでも聞かれたので警察を呼ばれたようだ。

「ふぅ」

溜息をついた黒ずくめ男は身長は170センチ前後で体が引き締まっていた、振りかえり部屋の中を見ると部屋の隅には三人の男女が外に助けを呼びにいけないように裸で縛られていた。

「おい雅彰、お前はもう終わりだ」

黒ずくめの男の黒川雅彰は名前を呼んだ足元の男を見下ろした、男の名前は野々村豪輔と言い、黒川が捕まえる時に殴ったせいで鼻が折れて鼻血を流し涙も流していていたが黒川を睨んできた。

「警察が来れば確実にお前は逮捕されるぞ、今ならお前の罪が軽くなるように協力してやってもいい早く縄を解くんだ!」

野々村は叫ぶように言い縛られている手を差し出してきたので黒川は野々村の顔を思いっきり銃床で殴った。

「何を言っているんだ!お前が俺の家族を自動車事故に見せかけて殺したんだろ!そんな奴の助けなんていらん!」

「あれは事故だ、警察もそう判断しただろ!」

「あぁ、俺もそう思っていたさ、だが真実は違った」

黒川は部屋の隅で震えている野々村の家族のところに向かい髪を金髪に染めて首から金色のネックレスが光っていている野々村の息子のアキトが黒川を睨みながら吠えた。

「親父の言う通りだ、今ならまだ罪は重くない、投降するんだな、それに俺の親父がお前の家族を殺しただと?そんな言いがかりでお前はこんなことをしたのか?」

その顔がむかつく、黒川は睨んでいるアキトの髪の毛を掴み強引に引きずっていく様に動かすと髪の毛の抜ける感触がした。

「アキト」

部屋の隅にいる若い女が叫んだ、野々村の家に進入した時、叫んだ女ともう一人の女は今いる部屋の隣にある台所で夕食の準備をしていたところを捕まえたのだが、若い女に見覚えが無いのでどうやらアキトの妻か彼女といった感じだろう。

「やめて、乱暴しないで」

若い女の隣の年配の女が耳が痛くなる声で叫んだ、奴が豪輔の妻だ。

アキトを引っ張り豪輔の隣に寝かせるアキトは苦痛でよだれを地面にたらした、黒川は腰から灰色のサバイバルナイフを取り出して豪輔を見下ろした。

「本当のことを言え、豪輔」

「何度聞かれても嘘は言えない」

豪輔が行った瞬間に黒川はすばやく動いてしゃがみ込み、寝転んでいるアキトの太ももにナイフを突き刺して何回も捻りを入れて抉った。

アキトが言葉にならない声を大声で上げ暴れ始めナイフで抉っている太ももから大量の血が流れ始めた。

「やめろ、やめてくれ」

豪輔の声が聞こえたかと思うと背後から女の耳が痛くなる悲鳴のような声が聞こえた。

「お願いやめて!!」

黒川はナイフをアキトの太ももから抜いて血の付いたナイフを豪輔の顔で拭いながらいった。

「お前が真実を言わなければこいつが更に苦しむことになるぞ」

アキトはあまりの痛さで失神して白目をむいた、黒川は立ち上がり近くにあったクッションを取りナイフで切り裂いてヒモをつくりアキトのナイフで刺した太ももの付け根をきつく縛り上げた。

「おい、俺が何の仕事をしているか知っているか?」

黒川が豪輔に聞いたが、豪輔は黙ったままであった。

「知らないなら、教えてやろう、俺は今自衛隊で自衛官として働いている、だから簡単な応急処置と人体のどこへの傷が致命傷になるか知っているんだ」

いいながら黒川が笑うと豪輔が叫んだ。

「そんなこと言われても俺は知らない!!」

「アキト」「アキト・・・」

背後からも声が聞こえてきた、黒川は胸ポケットから銀色のライターを取り出して火をつけるとライターをアキトの顔に近づけて焼き始めた。

髪の毛や皮膚が焼ける臭いがするとすぐにアキトは目を覚まして暴れだした。

「やめろ!やめてくれ!」

「次は男として生きられないように去勢してやるよ」

ナイフでアキトのズボンとパンツを切り裂き下半身を露出させるとアキトのチンコは小さく縮んで周りの毛の中に隠れてしまっていた、黒川はワザとナイフで傷つくように引っ張り出して豪輔を見た。

「もう一度聞いてやる本当のことを言え!」

「知らないと言っているだろ!アキトを離せ!」

豪輔の言葉がいい終わるのと同時にナイフに力を込めてチンコを一気に切断するとアキトは叫び声を上げて体を左右に揺らして暴れだした。

「うるさいこれでもしゃぶってろ」

あまり触りたくないが切断したチンコをつまみ上げ、ナイフを持つ手でアキトの顔を殴って黙らせてからチンコを口の中に突っ込んで更に一発顎を殴ると口の中から大量の血と噛み切れたチンコの肉片の一部が流れ出た。

「まだ言わないのか?」

豪輔を見ると怯えたような目で顔で汗を大量にかいているが黒川の問いには答えなかった。

「お前も強情だな」

立ち上がると先ほどからおとなしい女二人のほうを見ると二人とも気を失っていて床が濡れていた、どちらかが失禁したようでションベンの臭いが鼻についた。

二人に近づいていき豪輔の妻の腹や腕の贅肉で醜いババアの髪の毛を掴み上げ強引に立たせると頭の痛さで意識を取り戻した。

パトカーのサイレンの音が先ほどよりも近づいてきているのか大きく聞え、黒川はナイフをババアの腹に押し当てた。

「警察が近くまで来ているみたいだから早く話しを進めよう、もし次お前が俺の家族を殺したことを認めなければこいつを殺す、もう一度聞くぞ、殺したのか?」

豪輔の妻のババアが黒川の言葉を聞いて暴れ始めた。

「おとなしくしろ」

そういって掴んでいる頭を振り回した。

「どうするんだ、さっさと答えろ」

「俺は殺していない、さっきから言っているだろ、お願いだから私達を開放してくれ!」

黒川は強情な豪輔の声が頭に来た、ナイフに力を入れてババアの腹を横一文字に裂いてそのまま突き飛ばしすと、ババアは叫び声を上げながら地面に体を打ちつけその弾みでナイフで裂いた腹から内臓が飛び出た。

「京子!」

ババアの京子、頭の片隅でそんなことを考えながらもう一人の裸の女を捕まえようとすると女はいつの間にか意識を取り戻していたようで体をよじって移動して逃げようとしていたので背中を思いっきり踏み潰すと女は口からよだれを吐き出した。

「殺さないで」

首を捻り女は黒川を見て泣きながら懇願してきた、その顔は化粧が涙やよだれで流れて黒くなっていた。

「私はあなたの家族が死んだ事には関係ないわ、私はアキトの彼女なの、だから助けて!!」

黒川は女を見下ろして頭を左右に振った。

「いいやダメだね、お前がアキトからもらったものここですごした時間もすべて本当は俺のモノだったんだ、お前を殺して取り戻せるわけじゃないが生かす必要もない」

「そんな理屈知らないわ、私は死にたくない」

「お前が納得する必要なね」

言い切ると黒川は女を蹴飛ばして仰向けにすると女の無駄に巨大な乳房が揺れ使い込んでいるのか乳首が異様に黒かった。

黒川が女の顔を踏みつけると靴越しに鼻の骨が折れる感触が伝ってきた、ナイフで胸を肺まで達するように刺しこむと女の体にナイフが差し込むたびに両足が痙攣したように動き尿を漏らし始めた。

肺に達したと思われるところでナイフを抜くと胸に空いたナイフの穴から空気が出入りする音が聞えてきた。

「海でおぼれているように、段々と肺に血がたまって言って呼吸ができなくなっていくぞ、それとも今すぐ殺してほしいか?」

黒川は靴をどけて女の顔を見たが鼻血で真っ赤になっていた。

「悪魔め!」

背後から豪輔の声が聞こえてきて振りかえると豪輔が怒りなのか顔を真っ赤にして睨んでいた。

「安心しろ、次はお前の番だ」

近づきながら血が滴っているナイフの血払いをすると豪輔の顔に血が掛かった。

「お前が喋りやすいようにルールを変えてやる、もしお前が俺の親を殺したことを認めて警察に自首するならお前らを殺さないで俺も自首をしてやろう」

黒川はそう言って自分が刺したアキトや女二人を見ると女二人から流れ出た血が地面に大きく広がっていくのが見えた。

「どうする?」

返事を待たずにナイフを豪輔のチンコに突き立てるとナイフの先が刺さり先端から血が流れ出した。

「わかった、認める、俺殺すようにヤクザに依頼したんだ、白状したからやめてくれ!」

ナイフを抜いて豪輔を見た。

「他人は死んでもいいが自分は嫌か?」

「うるさい、認めたんだぞ、これでいいだろ、救急車を呼んでくれ」

豪輔は泣き叫ぶように言ったが黒川は無視して続けた。

「どうやって殺したんだ?言ってみろ」

「知っているんだろ、何で俺に聞くんだ?」

「もちろん、お前が自分の知り合いの暴力団に金を渡して事故に見せかけて殺したんだろ」

「そこまで知っているのになぜ俺を尋問して俺の家族を刺したんだ?」

先ほどとは違い驚愕に目を見開いて黒川を見たので笑いながら言った。

「お前の家族を一人ひとりなぶり殺しにして俺が家族を殺された時以上の苦しみを味わってもらおうと思ってな」

「クソ野郎!」

そのとき周りの家具から音が鳴り始めて黒川は辺りを見渡すと天井から吊るされているライトが左右に少し揺れていた。

「地震か・・・」

一人呟くと背後で何か物音がして振り返ると床の間のような場所に飾ってあった掛け軸が落ちていて下に飾られていた刀を倒していた。

すると突然足に痛みが走り黒川は倒れて地面に体を打ちつけて手に持ってたナイフを落とした。

「親父逃げろ」

声のするほうを振りかえり見ると先ほど気を失っていたアキトが黒川の足を掴み口から血を吐き出しながら叫んでいたので黒川はもう片方の足でアキトの顔を蹴飛ばして掴んでいた手を離させて豪輔を見ると、豪輔は必死に縛られた手足を動かし逃げようと立ち上がろうとしたがうまく立ち上がることができずその場に倒れピチャリという素肌が床に当たる音が響いた。

黒川は思わず溜息をついてから倒れたときに離してしまったナイフを拾って立ち上がった。

「逃げられると一瞬思ったがそんなことはなかったか」

いいながら豪輔の腹に蹴りを入れると豪輔は口からよだれと胃の中の消化物を噴出して地面を汚した、黒川は床に血溜りが広がっていて倒れている女二人を見たがピクリとも動いていない、どうやら死んだようだ。

アキトはさっきの抵抗が最後の力を振り絞ったのか血の気の失せた顔で目がうつろで倒れていた、黒川はアキトの髪の毛を掴み上げてナイフでアキトの首筋を切り裂いてから血が掛からないように地面に突き飛ばした。

「アキト・・・」

いつの間にかこちらを見ていた豪輔が叫んだがアキトは全身が痙攣していて、切り裂かれた首筋から血があふれ出てきて地面が一気に血溜りになりもう生きてはいないだろう。

「残りはお前だ」

すると玄関のチャイムが鳴る音が聞え黒川は動きを止めた。

「警察です、野々村さん?野々村さん?こちらのほうから何から発砲音らしき音が聞えたみたいなんですが、お留守ですか?」

(警察か・・・)

居留守を使っていれば何処かに言ってくれるだろうと思いナイフを腰に付けている鞘に入れてポケットに入れていたニューナンブ拳銃を取り出して豪輔にむけた。

「黙っていろ」

黒川が言った瞬間に豪輔が叫んだ。

「助けてくれ!殺される!」

素早く豪輔の腹を蹴飛ばして黙らせたが、すでに玄関で物音がしたと思うと廊下を歩きながら扉を空ける音が聞えた、黒川がリビングの入り口の扉を見ると丁度扉が開き歳をとった警官と若い警官の二人がリビングに走りこんできて部屋の中を見て固まった。

黒川はニューナンブ拳銃を腰から抜いて地面に全裸で倒れて呻いている豪輔に向けてから警官二人に叫んだ。

「動くな!動くとこいつを殺すぞ!」

拳銃を豪輔に向けると入ってきた若い二十代のように見える警官が怒鳴った。

「お前がこの人たちを殺したのか!?」

「動くなと言っているだろ!」

黒川が怒鳴ると歳をとった四十代くらいの警官が若い警官の方を手で押さえるように制止しながら落ち着いた声で言った。

「落ち着くんだ、それに君も銃を置くんだ」

「早く助けてくれ、こいつが俺の家族を全員殺したんだ、俺も殺される、早くこいつを撃ち殺せ!」

「うるさい黙れ!」

豪輔が余計なことを言うので黒川が豪輔を見て怒鳴るとチャンスだと思ったのか若い警官が飛び掛ってきた。

黒川はすばやく反応し迷わずにニューナンブ拳銃の引金を引くと乾いた発砲音がした。

飛び掛ってて来ようとした若い警官は一瞬体を硬直させたがすぐにその場に倒れこんだ。

「平良!」

歳をとった警官が叫び倒れた警官に駆け寄ろうとした。

「動くな!死にたいのか!」

黒川が叫ぶと警官は動きを止めてこちらを見たので言った。

「拳銃をこちらに投げるんだ、そこの倒れている警官のもだ」

歳をとった警官は拳銃を向けられているのでしぶしぶといった様子で腰のホルスターから黒川の持っている拳銃と同じ物を取り出して黒川に向けて地面を滑らせる様になげ、倒れている警官の拳銃も取り出して同じようにした。

黒川は拳銃を警官に向けながら足で拳銃を手繰り寄せてから拾い胸ポケットに二つとも入れると警官二人をクッションの切れ端で縛り上げて女の死体がある場所と反対側の部屋の隅に転がした。

「おい何してるんだ!何のために税金払ってるんだ、さっさと助けろ!」

豪輔が警官に向かって怒鳴る声が聞こえそちらを見ると言われた四十代の警察官が豪輔を睨んで言った。

「おとなしくしてください!それに私の同僚も撃たれているんです!」

「そんなこと知るか、俺を助けるのがお前の仕事だろ!まったくこんな奴らに税金で給料を払っているなんて金の無駄だ!」

黒川は豪輔の発言に思わず笑ってしまった、警官がどんな表情をしているのか気になり様子を見ると最初は唖然としていたが段々と顔が真っ赤になっていった、どうやら怒っているようで黒川は警官たちに言った。

「こいつはこんな男なんだよ、だから助けに来る必要なんてなかったんだ」

手に持っていた拳銃をポケットに入れてナイフを鞘から取り出して右手に持った。

「そろそろ、お終いにしようじゃないか、豪輔」

振りかえり豪輔を見ると叫んだ。

「まってくれ、さっき俺がお前の家族を殺したことを認めて自首したら助けてくれるって言ったよな」

「あぁ、言ったさ」

豪輔は黒川の背後にいる警官たちに言った。

「おい、そこの警官、俺がこの黒川の家族を交通事故に見せかけて暴力団に依頼して殺させたんだ、自首する」

「何言っているんだ?」

歳をとった警官はわけがわからないといった顔をした、隣で寝かされている腹を撃たれた若い警官は顔が青白くなって目が虚ろで豪輔の言葉には反応していなかった。

「だから俺は自首するって言っているだろ、これでいいんだよな?そうだろ?」

豪輔が警官を見てから勝ったような表情で黒川を見たが、黒川は笑いながら頭を左右に振りながら言った。

「いいわけないだろ、許すわけないだろ、生かしておくわけないだろ、お前は俺の家族や将来をすべて奪ったんだ、だからお前の大事なものをすべて奪ってやる」

言ってから豪輔に一歩近づくと豪輔が体をくねらせて這って逃げようとした。

「止めてくれ、お願いだ、俺が悪かった」

「おい、君、よくわからないが止めるんだ!これ以上罪を重ねるな!」

背後から警官の止める声が聞こえたが無視して豪輔を睨んで言った。

「早く殺してくれ、と懇願するようにしてやる」

ナイフの刃の先端を豪輔の禿げている頭の頭皮に差し込んで頭の皮をはぎ始めた、あまりの痛みで豪輔は失神したがすぐに失神から目を覚まさせてから頭の皮をはいだり左目を潰し耳をそぎ落とすと、背後の歳をとった警官が嘔吐する音が聞えた。

「早く殺せ、全身が痛い、早く殺せ!」

目を左目から血の涙を流しながら吐き出すように言った。

「これからが本番だ、まだまだがんばってもらわなきゃ困る」

黒川はそう言って豪輔の口を左足で踏みつけて何回も捻ってから足を上げると豪輔の前歯や下の歯が根元から取れ歯茎から血を噴出していた、黒川は歯が喉に詰まって死なれてはつまらないので吐き出させ、もう豪輔の反応が薄くなり顔の血の気もなくなり真っ青になってきたのでここらが潮時と判断した。

黒川は豪輔の腹をナイフで切り裂くとピンク色の内臓が見えそれを見た黒川は強引に腹の中に手を突っ込み腸を引きずりだすと豪輔の口に突っ込んだ。

豪輔は引きずり出された腸を口にくわえた瞬間に雷に打たれたように目を見開いたまま動かなくなり先ほどまで呼吸で胸が上下していたが今は動いていなかった。

とうとう死んだか、そう思った瞬間に溜息をついた。

豪輔の血で汚れた手をリビングの隣の部屋の台所で洗ってからきれいになった手で胸から下げていた直径15センチくらいの少し角が凹んで引っかき傷が目立つペンダントを開くと中に黒川が七五三の時の幸せそうな家族の写真がはまっていた。

七五三の時の黒川の背後には両親の黒川弘と知美が写っていて、母親の知美は生まれたばかりの妹の千秋を抱いて両親は幸せそうに笑っていた。

父親の弘はまじめな人間で地方の国立大学を卒業して地元でインターネットで予約ができる都会からの農村・農業体験のネクストビレッジという会社を設立した、最初はうまくいかなかったが時代に合っていたのか段々と会社が業績を伸ばしていく中でアルバイトとして雇った母親の旧姓の野村知美と三十歳の時に結婚をした。

二十代を必死に働き三十四歳でできた子供だったので雅彰はものすごくかわいがられた、その時には会社は年商が一億を超えていた。

野々村豪輔は知美の弟で顔どころか性格も似ていなく、その頃には知美のところに何度も金の催促や借金の肩代わりに来ていた、会社ごと金を手に入れるために黒川一家を殺そうとしたのだが雅彦は運が良かったのか悪かったのか熱を出して家族が買い物に出かける時に家で寝込んでいた、その買い物の帰り道に交通事故に見せかけて弘たち三人が殺され雅彦だけが生き残った。

両親の遺産は雅彦のものになる予定だったが、その時の雅彦は法律のことなど何もわからず、更に野々村が暴力団と弁護士が用意した書類で両親の遺産のほとんどが豪輔のものになり、雅彦は児童養護施設に預けられ、それ以来豪輔とは会っていなかった。

豪輔の物になったネクストビレッジもすぐに他の会社に売りその時に売った会社の役員になりその会社でも暴力団を使って美人局や薬物を使用して他社を乗っ取り私服を肥やしたらしい。

だがそれももう終わった、もうやることはない黒川は拳銃を取り出して中の銃弾を確認すると中に二発残っていた。

拳銃を頭につけて深呼吸して息を吐き出してもう一度黒川はペンダントを見た、するとペンダントの写真の背景に刀が見えた。

黒川はその刀と同じようなものを先ほど床の間で見たのを思い出し黒川はそちらを見て歩いて行くと近くにいた歳をとった警官が撃たれて青白い顔をした若い警官に何かささやいていて、外ではパトカーのサイレンの音が近くそして多くなってきた。

連絡が取れない警官が二人いるんだ仲間が集まってきたのだろう。

床の間の掛け軸で倒れている刀を拾い上げると見た目よりも重さがあった。

「本物か?」

思わず一人呟いしまった、どうやら日本刀らしく刀を鞘から抜くと美しい刀身が現れた、刃の光の鋭さを見るとどうやら模造刀ではないようだ。

「おい、それで俺を殺すのか?」

日本刀を見ていると歳をとった警官の声が聞こえ振り返ってみると黒川を睨んでいて腹を撃った警官の胸は動かず目を見開いたまま口から舌を出して動かなかった、どうやら死んでしまったようだ。

「殺されたくなかったらおとなしくしていろ」

黒川がいい終わらないうちに家具がガタガタと揺れ始めその揺れは今度は十秒以上続いた、また地震のようで今度は大きく左右にゆれ先ほどは大丈夫だったリビングのガラス棚が開き中で飾られていた食器がすべり落ち地面で派手な音を立てて割れ破片や粉が死体から出ている血に混じった。

刀を鞘に戻して左手に持ち替えて右手をポケットに突っ込んで拳銃を取り出して銃口を自分の頭に押し当て周りの状況を見た。

足元には野々村家の死体から流れ出た血で血溜りができていた。

もう思い残すことはないと思い今ここで自殺しようと思ったが床で死んでいる野々村たちを見るとふと思ってしまった。

今ここで死ぬと死んでまでこいつらと一緒にいなければならないような気がしてきた。

そんなのはごめんだ、どうせ死ぬなら両親と妹に復讐をしたことを伝えてその墓のそばで死のう、両親は喜ばないかもしれないな。

豪輔の家の場所からなら車を飛ばせばここからなら家族の墓があるところまで2時間くらいでいけるだろう。

手に持っていた拳銃をポケットに戻して刀を捨てるかどうか一瞬迷ったが、持っていても問題ないだろうし拳銃の弾も残りがすくないから武器としても必要だろう、あとは・・・。

黒川は部屋の隅にある野々村たちが脱ぎ捨てた服の山のところに行きしゃがんで一つ一つのポケットに手を突っ込んで中身を探ったが車の鍵は見つからなかった。

「仕方ない」

立ち上がり後ろを振り返り警官を見た。

「おいお前」

歳をとった警官が顔を上げてこちらを見た。

「パトカーの鍵はどこだ?」

黒川が言うと歳をとった警官は言った。

「パトカーに付いたままだすぐに戻る予定だったからな」

「そうか・・・・」

黒川はそう呟くと外のパトカーに乗るために警官が入ってきた扉から廊下に出ようと歩き出した。

「そうだ」

呟いた瞬間に黒川が歳をとった警官の顎をめがけて蹴りを放ち、鈍い音と共に警官は地面に倒れ顎が外れたか砕けたようで口が異常に開いた状態で少しずれて不自然に曲がっていた。

気絶しているようで顎も砕けている様だから目を覚ましても仲間を呼ぶには時間が掛かるだろう。

部屋を出て廊下に出ると玄関は開いたままで外では警官を撃った時の発砲音のせいかそれとも地震のせいかわからないが道路には近所の住人がちらほら歩いているのが電灯の明かりで見えた。

警官が乗ってきたパトカーが近くにあるが近所の住人が出ているとなると警官の制服を着てない黒川が乗り込むのはよくない。

玄関には野々村たちが着ていたと思われる上着が壁に数着掛かっているのが見え、とりあえず玄関に行き開いていた扉を閉めて上着の中のポケットを一着ずつ念のために探して見ると表は黒色なのだが裏地が紫をしている若者のアキトが着そうな上着のポケットに車の電子キーが入っていた。

「これでいけるな」

黒川は玄関から出て野々村の家に侵入する時に見た車の駐車場のようなシャッターが下ろされた建物があったのでそこに歩いていきシャッターを開けた。

車に詳しくないのでよくわからないがBMWとベンツが止まっていて、黒川はさっき見た電子キーを見るとベンツの三ツ星のマークが書かれていた。

車に乗り込み刀を助手席の下に隠すように置きエンジンを掛けて車を進めると門があり外に出て門を開けなければ車を外に出すことができない、黒川も下調べをした時にわかっていたはずだがすっかり忘れていた。

エンジンを止めずに外に出て車一台が通れるように柵を開けていると近所のおばさんがこちらを見ていた。

黒川も何を言われるかわからないのでさっさと車の中に戻った。

「あの、すいません」

女性の声が背後から聞こえ車に乗るのを遮られた、舌打ちをしそうになったが堪えてなるべく笑顔を作って振りかえると中年の太った寝間着姿のババアがこちらを見ていた。

「何でしょう?」

黒川が言うとババアが言った。

「あなた、野々村さんのところの人ではないでしょ?」

(おせっかいなクソババアだ)

「はい、私は野々村さんのところの会社に勤めているものですよ、ちょっとお酒が足りないということで車を借りて買い物に行くんですよ」

そういって仕事だから仕方ないという感じて野々村家を見て振り返ってからババアを見てわざとらしく溜息をついた。

「皆さん出てこないけど大丈夫なの?」

「えぇ、皆さん地震でこぼれてしまった料理や飲み物の片づけをしていますよ、そして僕はお酒が飲めないので買い物に行かされるわけですよ」

「そうなの、ご苦労様です、地震で飛び出してくる人がいるかもしれないから気をつけて運転なさってくださいね」

「ありがとうございます」

そういって車に乗り込んでアクセルを踏んで車を進め野々村家の門を出て家族の墓に向かって走り出した。

車を運転して四十分くらいたっただろうか、黒川は野々村家の死体が発見されているか気になりラジオをつけたが、音楽と交通情報が流れてくるだけで民家で死体が発見されたというニュースはやっていなかった。

一時間もたっていないんだ、ニュースになるはずもないか・・・。

そう思っていると目の前の信号が赤で点滅をしているので車を止めた。

ふと外を見ると周りは住宅地から離れ墓のある山の方に向かって行るのですれ違う車も少なく歩道を歩いているような人間は一人もいなかった。

いきなりサイレンの音が響き渡り、驚いた黒川は慌ててバックミラーを見るとパトカーが二台背後の曲がり角からいきなり赤色灯を回転させて背後と斜め前に止まったと思うとすばやく警官が降りてくるのが見えた。

「クソ」

黒川は慌ててアクセルを思いっきり踏んで車を進め前にいた警官を一人跳ね飛ばしてパトカーを避け進んだ。

思わず大きく溜息をついた、どうやらもう指名手配されているみたいだ、だが俺は家族の墓で死のうと思っているだけだ、それを邪魔しようとするなら警察官でも殺してやる。

ハンドルを強く握り締めてバックミラーで背後を見るとパトカーが二台後ろからサイレンを鳴らして追ってきている。

「前の車止まりなさい!!」

同じようなことを繰り返しているがこちらは止まる気はない、更に進んでいくとパトカーが2台駆けつけ背後には四台のパトカーが集まっていた。

黒川の家族の墓が町外れの山奥にあるために一本道のような道を進んでいくためにわき道などがなく後ろのパトカーを振り切ることができそうにない。

「くそ」

目の前を見るとどうやら橋があるようで橋の上は電灯の明かりが点々と続いてた、黒川の車が橋に入ると突然橋の反対側で赤色灯を回転させたパトカーが現れてすばやく橋を塞いだ。

それに気がつき急いでハンドルを切りUターンさせたが後ろを見ると先ほど後ろを走り追ってきていたパトカーが橋の入り口を隙間なく塞いでいた。

どうやら警察の罠にはまったらしい、黒川はもう一度橋の両端を車が通れるか、車で体当たりをして強引にいける場所がないか見てみたが、そこは警察も考えているらしく通れそうな隙間はなかった。

「車から出て来い、おとなしく投降するんだ、君はもう完全に包囲されている」

外から警察が拡声器で呼びかけてくる声が聞こえる、どうやら本当にこれまでのようだ、警察に捕まるのなんて御免だが強行突破を試みてパトカーに体当たりしても運悪くこっちまで怪我してしまったら逃げることや自殺することもできなくなるかもしれない。

だが、あの野々村の家で死ぬくらいだったらここで死ぬのも十分ましに思えてきた、どうせ死ぬなら車の中は嫌だと思い助手席に隠していた刀を左手に持って車の外に出た。

夜の山の風は冷たくて復讐をやり遂げて興奮していた黒川を冷ましているようで気持ちよかった。

橋なら下に川があり飛び降りればうまく警察から逃げれるかもしれないと一瞬思い橋の欄干まで移動して下を見たが、橋の下は暗闇で何も見えなかった。

すると橋を塞いでいたパトカー一台動き出し黒川にゆっくりと近づいてきて車が通れるスペースが開いた、黒川はすばやく車に飛び乗るとアクセルを踏み車を動かした、隙間を見るとパトカーがスピードを更に上げてこちらに突っ込んでくるのが見え避けようと左にハンドルを切ったが、パトカーが避けた方向に向かってきた。

「本気か?」

どうやらパトカーで体当たりするつもりのようで急いで方向を変えようとしたが間に合わない。

ぶつかる瞬間に助手席の窓の向こうのパトカーを運転している警察官の制服を着たオッサンが鬼の形相で運転している見えと思うと爆音と共に体に衝撃が走り思わずドアのガラスに頭を打ちつけて視界が歪んだ。

痛みで目を覚ました、体中が痛くて仕方がない、足や手を動かすと痛みがあるが動けないというほどではなかった。

助手席を見るとパトカーが助手席のドアを粉砕していてシートにパトカーのバンパーの一部が突き刺さっていた、どうやら乗っているのがベンツの左ハンドルだったのでまだ良かったみたいだ、黒川は助手席の下の刀を探すと運よくすんなりと掴むことができ運転席のドアから外に出た。

するとこちらに向かって警官が走って近づいてくるのが見え、黒川は右手をポケットに突っ込み拳銃を取り出して空に向かって拳銃の引金に指をかけて引くと発砲音が聞こえた。

その瞬間に左肩に衝撃が走って持っていた刀を落してしまった。

肩を蹴られたような衝撃でよろけてしまったが橋の歩道の柵に手を付いて踏ん張って耐えた。

落してしまった刀を拾おうとしゃがみ込むと声が聞こえてきた。

「お前が俺の息子を殺したのか!」

男の怒鳴るような声が聞こえる方を見ると先ほど突っ込んできたパトカーに乗っていたオッサンの警官が拳銃をこちらに向けて立っていた。

「息子?」

黒川が肩が熱を持って痛み出してうまく喋れそうにないが搾り出して言うとオッサンの警官が震えるような声で叫んだ。

「お前が殺した若い警官の父親だ、お前のような人間の為になぜ俺の息子が殺されなければならないんだ、答えろ!」

オッサンの警官はいいながら顔を真っ赤にして涙を流していた、黒川は泣いているオッサン警官の目を見て言った。

「俺の邪魔をしたからさ、俺にはやると決めたことがあったんだ、そのためなら俺は何だってする、お前の息子を殺すことだってな!」

言い切ると同時に大破したベンツが細かく揺れ始めた、こちらに走って来ようとしていた警官も足を止めて周りを見ている、地震の揺れが次第に大きくなり始めた。

今だ、と思いオッサン警官から逃げようと振り返り走り出そうとするとオッサン警官がこちらに向けて拳銃を発砲しそばをかすめた。

だが地震は弱くなるどころか強くなり橋の上では地面がたわみ更に揺れが酷くなり立っているのがやっとになり片手が使えないと不便なので仕方なく拳銃をポケットに入れて右手を使えるようにした。

「逃げるな、死ね」

オッサン警官がいいながら拳銃を発砲したが二人とも激しくゆれているので黒川の近くを銃弾が飛んでいく音が聞えるのだがあたりはしなかった。

すると橋から何か金属の甲高い音が聞えたと思うと橋の地面が割れ始めた。

「逃げろ!橋が崩れるぞ!」

どこからか叫ぶ声が聞こえると黒川の近くの柵がたわみに耐えられなくて壊れて橋の外に落ちていき、黒川は地面に四つんばいになって地震が収まるのを待った。

揺れが地面から伝わるために撃たれた肩に痛みが走ったが次第に揺れが収まってきたので立ち上がろうとした。

「地獄に落ちろ」

声のする方を見るとオッサン警官が警棒を振りかぶりこちらに向かってくるのが見え避けようとしたが間に合わない。

後頭部を思いっきり警棒で殴打されて黒川は地面に倒れた、更に三回頭を強く殴打された。

頭が割れるようにガンガンと痛みが走り目の焦点が合わないと思っていると腹を思いっきり蹴飛ばされてると背中が先ほど壊れてなくなった柵の一部に当たった。

「息子の仇だ!」

オッサン警官が叫びながら黒川を橋の上から蹴り飛ばした、黒川は痛みで薄れていく意識の中でしっかりと刀を掴んで橋から落ちていく。

「こんな死に方か」

声になっていなかっただろうが呟いた。

黒川は落下していく感覚の中、オッサン警官がこちらを見ていているのが見えたが目を閉じて落下に身を任せて三秒くらいすると背中に強い衝撃が走り気を失った。

オッサン警官は蹴り飛ばした黒川が闇の中に落ちていくのを見届けてからその場に座り込んでただ橋の下に広がる闇を見みた。

すぐに近寄ってきた仲間の警官がオッサン警官に言った。

「あの男はどこに行った?逃げたのか?」

「この下に落としたよ」

「落したって・・・」

近寄ってきた警官がオッサン警官を見ると手に持っていた拳銃を自分の頭に当て引金を引き発砲音と共に血と脳漿が吹き出しその場に仰向けに倒れた。

「救急車を呼べ、早くしろ、それと犯人は橋の下に落ちたぞ、捜索するんだ!」

言っている間にも頭からは脳漿が流れ続けて地面を染めて行き、駆けつけた救急隊員によってオッサン警官の死亡は確認された。



黒川は全身が痛み出した、何か温かいものに包まれているような気がして痛みを堪えて目を開けると赤色の空が見え体全体が濡れていた、どうやら川の中を漂っているようだ。

川に落ちたのが夜中に近い時間であったが朝になっているのか?ふと自分の左手が何かを握っていることに気が付いて腕を持ち上げると刀を握っていた。

「刀は落さなかったか・・・・」

周りを見ると水が光を多く反射しているのだろうか虹色に輝いていて、川岸は見えなかった。

黒川が落ちた川はそこまで大きな川幅ではなかった、川の水を掬い上げて見ると水ではないらしく少し粘度があり七色の色に一秒一秒変化していた。

臨死体験とかで聞いたことがあったのと違うがどうやらここが三途の川らしい、それなら納得だ、それに刀や拳銃を持って濡れた服を着ているのに水の上に浮いていられるわけがない。

橋の上から落ちたんだ、下が地面であれ川であれ落ちた衝撃で死んだのだろう、まあ良い、やろうと思っていたことはほとんどできた、もう思い残すことはない。

人をたくさん殺したんだ俺はたぶん地獄に落ちるのだろう、刀を持っていない右手で胸元を探ってペンダントのチェーンを掴みペンダントを探り当てて開き中の家族の写真を見ていると赤色の空に何か白い光の玉が飛んでくるのが見え、ペンダントを閉じて白い光をなんとなく見つめていると、こちらに近づいてきた。

白い光に手が届きそうだと思うと光はつかめないとわかっているが思わず白い光の玉を掴もうと手を伸ばすと白い光が青色になり掴もうとした指先が砂のように分解されて青い光の玉に吸い込まれていく。

「何だ」

黒川は思わず叫び手を引っ込めようとするが神経なのか体が麻痺しているのか腕を動かすことができず痛みもなかった、自分の体が砂になり光の玉に吸い込まれていくのを見ながら体が捻れる感覚と恐怖を感じていると三十秒もしないうちに全身が砂になり光の玉に吸い込まれた。

光の中に入ると何も見えないが遠くで何か音が聞えた、それは女が喋っているような鼻歌を歌っているような音が聞こえ、聞いている黒川がやさしさと安らぎを感じ目を閉じると砂になった自分の体が音のする方に流れていくのが分かったが砂になった黒川が感じることができたのはそこまでだった。





「キャー!!」「逃げてください!!」

女の叫び声と男の声が聞え黒川は思わず目を開けると木の葉が揺れて葉の間から空が見えた、先ほど砂になって青い光の玉に吸い込まれた自分の体を見ようと立ち上がり自分の手を確かめると砂になった右手の指先はそこにあり動かすこともできた。

だが、頭痛が止まらないし全身も痛みとだるさが合わさっていてあまり力が入らない。

それに辺りを見渡して刀を探したが何処かに行ったらしまったようで見つからなかったが倒れていたところは森の中で太い木が生い茂っていて遠くの方は木が邪魔になり見ることが出来なかった。

橋に落ちた時も変な夢のようなものを見ていたときも持っていた刀を探すと倒れていたそばの草むらに落ちていたので手を伸ばして刀を掴んだ。

「いやー!」

先ほどの声の女だろう、先ほどよりも黒川の方に近づいてきているみたいだ、黒川が立ち上がると立ちくらみがして倒れ刀を掴んだまま地面に倒れた。

「もう終わりにしよう」

黒川は一人で呟きポケットから拳銃を取り出して拳銃を振り回して銃身にドロか何か詰まっていないか確かめた。

「ギャー!!」「死ね!!」

「逃げてください!早く!」

「嫌よ!一緒に逃げてよ!」

「早く逃げてください!」

叫び声の男と女の声が聞こえと何か分からない音が聞えた。

「そっちに逃げたぞ!捕まえろ!」

「そいつは任せろ!」

周りではまだ断末魔のような男の叫び声が聞えた、すると近くで爆発が起ったと思うと木が倒れ他の木とぶつかり木の葉が大量に舞った。

「捕まえたぞ!」

男の勝ち誇ったような声が聞こえると抵抗する女の声が聞こえてきた。

「放して!放しなさいよ!」

「うるさいガキめ!おとなしくしろ!」

「触るなトカゲ野郎!」

「元気がいいのは分かったから、そろそろ黙ってもらおう、そうしないとその口に布を詰め込んで喋れないようにしてやるぞ」

「トカゲ野郎だと!このガキ!」

「あまり殴るなよ、人質として使うんだから死なれては困る」

トカゲ野郎?

何を言っているんだ?聞き間違えか?もう体が痛くて耳までおかしくなってしまったようだ、それに何か争っているようだ、俺は一体どうなってしまったんだ、死んでいるのか?それとも生きて頭がおかしくなったのか、橋から落ちた後どうしてここにいるのか分からない、あの七色の川を漂い光の玉に吸い込まれたのは夢だったのかも知れないが今は落ちた橋も、道路らしきものも見つからない、とりあえず立ち上がろうと拾った刀を杖代わりにしてゆっくりと立ち上がった。

「いや!放して!誰か助けて!助けて!」

「一人では何もできない間抜けなガキだ!」

男たちの笑い声と女性の泣き声が聞える方向に、ゆっくりと気付かれないように刀を杖代わりにして歩いた。

もう倒れて眠ったほうが楽だ、一歩踏み出すたびに足から頭に掛けて痛みが走り視界がぼやけてしまうが、すぐに声の主たちが見え黒川は納得した。

どうやら俺は死んでしまったようだ、目の前には今まで見たこと無いトカゲが人間の大きさで服を着ているのが二匹いて緑色の長い髪をした子供を囲んでいた。

先ほど聞えたトカゲ野郎という声は聞き間違いではないらしい、まさに的を射た発言であったが人間の大きさのトカゲが二足歩行しているわけない黒川は辺りの様子を窺ったがカメラのようなものはなく映画の撮影というわけではなさそうだ、するとトカゲ野郎の一匹が子供の服の襟を掴み上げるともう一匹がポケットから布切れを取り出して猿轡のように噛ませようとすると子供は噛ませようとしたトカゲの指に噛み付いた。

「痛ぃ!」

いいながら指を噛まれたトカゲ野郎はすぐに子供の顔を殴った。

「くそぅ、手から血が出てる深く噛みやがったな!」

言ってもう一発子供を殴って強引に猿轡のように布を噛ませていた、トカゲ人間はどうやら本物らしいがそれはそれで問題だ。

とりあえず反対側を向き逃げようと歩き出すと足首をつかまれて反射的に掴まれた足を見た。

ドロだらけの手が黒川の足首を掴んでいて手の伸びてくる方を見ると自衛隊の礼服のような泥だらけ服を着た男が血と泥で汚れた顔で黒川を見ていた。

「おい、放せ」

黒川はトカゲ野郎に気付かれないよう小さい声で言うと足を掴んでいる男がかすれ声で話した。

「ファル様を助けてくれ・・・」

「うるさい、放せ」

そういって足を振り手を払うと男は顔を地面につけて動かなくなってしまった。

「おい、しっかりしろ」

杖代わりにしていた刀で男の頭を叩くが反応は無かった。

「おい、人間がいるぞ!」

「大分弱っているみたいだな、面倒だから殺せ」

先ほど見えたトカゲ野郎たちがこちらを見ていて、先ほど緑色の子供に噛まれた方がこちらに向かって歩いてきて手には筒のようなみたことのない物を持っていて筒先をこちらに向けようとしたので黒川はポケットに入れた拳銃を取り出そうとしたが何かが引っかかり間に合いそうにない。

すると何かに背中を突き飛ばされ地面に体を打ちつけて落ちている木の枝が体に当り痛みが走ったが発砲音が聞えトカゲ野郎を見ると、手に持っていた筒から煙か立つのが一瞬見え、痛みを堪えながら突き飛ばされた後ろを振り返るとそこには先ほど死んだと思っていた足を掴んだ男が立っており、服は血だらけで胸の真ん中に十円玉くらいの穴が開き血があふれてくるのが見えたと思うと黒川を一瞬見てから仰向けに倒れた。

「クソッ、別なのも生き残ってか、仲間の奴らにちゃんとトドメを刺したか確認するように言わないとな」

何がなんだか分からんが次は黒川が撃たれるみたいだ、どうせ死のうと思っていたんだが、殺されるなら抵抗してやる。

ポケットに手を突っ込んで拳銃を取り出そうとすると倒れた時に先ほど引っかかっていたところがうまく外れたらしくすんなりと取り出すことができ、今銃みたいなもので男を撃ち殺したトカゲ野郎に拳銃を向けるとトカゲ野郎が黒川を見て笑って言った。

「何だそれ!」

黒川はトカゲ野郎の口めがけて拳銃の引金を引くと乾いた音が響いた。

「ぐぇ」

トカゲ野郎の頭から血が吹き出して仰向けに倒れたが体は地面で跳ねていた、黒川は気力と残りの体力を振り絞りすばやく立ち上がると子供を捕まえていたトカゲ野郎がファル様と呼ばれているらしい子供を掴みながらこちらを見ていて黒川はそのトカゲ野郎に拳銃を向け引金を引くとトカゲ野郎の肩に銃弾が当りファルを放したが、ファルはその場に崩れ落ちてしまった。

「動くんじゃない!」

黒川が叫ぶとトカゲ野郎が撃たれた左肩を右手でかばいながら睨んできて、その腰に先ほど撃ち殺したトカゲ野郎と同じ筒の銃のような者をぶら下げているのが見えた。

「武器をこっちらに投げるんだ、そこの腰に付けている奴だ」

全身が痛いのに激しく動いた為か頭痛がしてくる、トカゲ野郎は言われたとおり筒状の銃をこちらに投げてきた。

「とりあえず、敵は討たせてもらおう」

黒川はトカゲ野郎の頭に狙いをつけて引金を引いたが弾が出ない、二回引いた、撃鉄もちゃんと動いている、そうだ弾切れだ、野々村たちを殺すのと今トカゲ野郎を撃つので使い切ったのだ。

黒川が一瞬拳銃に目をやるとトカゲ野郎がすばやく動いた。

「ウォー!!」

叫び声を上げながらこちらに突進してきたので黒川は手てに持っていた拳銃をトカゲ野郎の頭に投げつけたがひるむ様子もなく突っ込んできた。

ポケットに入れている他の拳銃を取り出そうと思ったがその時間はないと判断し杖代わりに使っていた刀を鞘から抜かないで突進してくるトカゲ野郎に振り下ろした。

頭の骨が砕けたような鈍い音と感覚がしてトカゲ野郎はそのまま地面に倒れ痙攣を始めた。

黒川は刀を鞘から抜き目の前で地面にうつ伏せで倒れたトカゲ野郎の首筋に突き刺して傷口が大きくなるように左右にえぐるように振ると血が大量にあふれてきた。

これなら確実に死んだだろうと思い先ほど拳銃で頭を撃ったトカゲ野郎にも念のために止めを刺すためと振り返るとそこには頭と口から血を流したトカゲ野郎が立ち上がり近づいてきた。

すばやく刀を構えようとしたが間に合わずトカゲ野郎が飛び掛ってきて黒川は仰向けに倒れトカゲ野郎が上に乗っかり大きく口を開くと中には鋭いサメのような歯が並んでいるのが見え、噛み付いてこようとするので黒川は両手でトカゲ野郎の首を押さえて抵抗しているとトカゲ野郎の口から流れ出た血と涎が顔にかかった。

「くそっ」

トカゲ野郎の生臭い息が顔にかかる、もう体力が残っていないのでこれが限界だ、ナイフが腰にあるのを思い出したが手を離した瞬間に噛み付かれるだろう。

トカゲ野郎が何か雄たけびを発すると更に力が強くなった、もうだめだと思いふと緑色の髪の毛のファルと呼ばれた子供のことを思い出しファルがいたところ見るとそこにはもう姿がなかった。

この場所から逃げたようだ、黒川は自嘲的な笑いをした。

黒川はトカゲ野郎の首から手を離すと急に手を急に離したので勢いあまって左肩に噛み付かれて全身に痛みが走った。

「クソがァァァァー!」

今にも失いそうな意識を叫び声を上げて保つと右腕で腰のサバイバルナイフを取り出した。

「くたばれ、トカゲ野郎ォォォー!」

叫びながらサバイバルナイフをトカゲ野郎に突き刺したが肩に噛み付いている力は弱まらない。

黒川はサバイバルナイフを何度も何度も突き刺すと大量の血がトカゲ野郎の頭から流れてきて顔にかかり目を開けることができないがひたすら突き刺した。

急にトカゲ野郎の力が抜けて黒川に倒れてきて体重がかかって潰されそうになった。

どうやら死んだらしい。

上に乗っているトカゲ野郎の死体を残っている力を振り絞って横に落して血がかかった顔を拭いて目を開けると木と葉の切れ目から深い紫色の空が見えた。

もう指一本動かす力も残っていない、体中が痛くて仕方がない、噛まれた肩が痛み熱を持ってきて段々と意識が遠くなってきたが、誰かが近づいてくる草を踏み潰す音が聞えた。

もう死ぬのか、目を閉じて大きく深呼吸をして覚悟を決めた。

「しっかりして」

女が喋りかけてきている声が聞こえるのと同時に右腕が持ち上がったと思うと、声の女の背が黒川を引きずりはじめた。

黒川は目を開けて引きずっている女を見ると先ほど助けた緑色の髪をしたファルと呼ばれた子供であった、こうしてよく見るとまだ小学生のような感じた。

「無事だったか、良かった」

その声はファルにも聞えたらしく引きずっている黒川のを見た。

「・・・・・・・」

ファルが何か話しかけてきたが黒川が聞き取ることができず耳が遠くなり、ファルは手が滑ったのか黒川は地面に倒れた、倒れた時に痛みも感じず気が遠くなり視界がぼやけ自分が死ぬのを感じながら目を閉じた。

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