第20話 *10* 6月21日金曜日
六月二十一日金曜日。
〝
――なんで恋人やカノジョではなく愛人……。
当人が騒いだところで面白がられるだけなので、紅は無視を決め込む。黙っていれば人の噂も七十五日、夏休みに入れば気にならなくなる。それまでの辛抱だ。
しかし、厄介なことが残った。顔を合わせる度に仕掛けられる遊輝のアプローチ。美術室に通ってくれるだけならそれでいいのだが、皆の前で甘い言葉で攻めてくるのは勘弁願いたい。おかげで紅の足は美術室から再び遠のきつつある。
「ねぇ、紅ちゃん。身も心も僕のものにならないかい? 絶対に幸せにするよ!」
「お断りいたしますっ!」
廊下でばったり会うなりこれである。こんなの有り得ないし、望んでもいない。紅は頭痛を感じる。
――だれよ、あたしのささやかな幸せを邪魔するヤツはっ!
まだ平和だと思っていたハイスクールライフが荒れ始めたのにようやく気付く紅だった。
(第二章 七つの色は心を乱す 完)
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