死の天使2

(ハヤト、悔い改めればもれなく寿命を三十年のばしましょう)


 黒き翼の天使が自分を見下ろしている。

 背中に銀色の鎌が見えた。


(まさか死神? 東大の先輩教授の『放射能を食べて応援』というフレーズを真似して、『はじめての福島ラジウム温泉』という本を出したけど、ネットでボコボコに叩かれたけど理由が分からない。いや、東大は親父の七光りの裏口入学で馬鹿なのが原因かな?)


 ついつい本音が出てしまう。


(あなたはなかなか賢いですね。自分が馬鹿、いや、無知の知を知っている。今回は特別に許して……あれっ? 死んでる?)


 死の天使ルカは死因が分かるスマホを覗き込んだ。


(セシウム梗塞かあ。セシウムによる心筋梗塞だわ。もう五年目だし、福島に住んでたら仕方ないよね。遅かったか。南無阿弥陀仏)


 ルカはそっと手を合わせた。

 何故か念仏である。仏教にも天使はいるのだ。

 馬鹿、いや、無知だったけどいいやつだった。

 成仏してください。



    †



「ハヤト、携帯に出なさいよ。福島から帰省してくると言ってたのに! 合コンのメンバー足りなくなったら女の子からブーブー言われちゃうじゃない! 大学教授合コンはどうなるのよ!」


 婚活の女神アリサは昨日に続き不審死の証人として警察に呼び出されることになる。


「でも、警察官も公務員だから、これは案外いけるかも」


 と言いながら、イケメン警察官を物色するのであった。


 今日も京都は平和である。




解説:福島県で急増する「死の病」の正体を追う!~セシウム汚染と「急性心筋梗塞」多発地帯の因果関係~【第1回】http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1921954.html


✳東大→東日本大学の略称である。

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