同人以上、恋人未満。

吉永動機

intro

——風が気持ちいい。まるで私の身体の中にも吹き抜けるよう。

鳥の鳴き声が遠くで聞こえる。それは広い空を飛んでどこまでも行けることを歌った、自由の歌にも聞こえた。私は思わず空を仰いでしまう。

偉い人が言うには膨張し続けているらしい宇宙があって、その中にポツンと地球が浮かんでいて、青い空が私たちを抱きしめるように包んで、その中心に私たちは居る。

そんな壮大なイメージを浮かべながら胸いっぱいに青い空気を吸って、魂まで洗われるような錯覚に陥る。

でも錯覚じゃない。私は私が感じたことがすべて現実だと知っている。

自分の気持ちに嘘をつけないことを知っている。

——いや、みんなが教えてくれたんだ。

だから私は今、ここに立っている。

熱く灼けた砂地を踏みしめて、足の裏がジンジンとするのを感じながら——耳を澄ます。

波の押し寄せ、引いていく音が心地よい。

耳を優しく撫でて、決して気分を害さない。

レット・イット・ビーとはこういう境地のことを言うのだろうか。寄せては返す波は引力以外のどんな制約にも囚われておらず、鳥と同様それを羨ましく思う。

でも私は、私たちも同じだと知っている。

——いや、これもまた、みんなが教えてくれたことだ。

私は知っているつもりだったけど、本当の本当は知らなくて、でもみんなは私が教えてくれたんだよと言ってくれた。

そう言ってもらえて初めて、私は知ったんだ。

だからこそ。

私たちは一つの風景写真なんだ。

太陽が全てを照らしていて。

風がゆるやかに吹いていて。

海はたおやかに揺れて。

波が浜辺で自由をかたどり。

白い砂浜に立って、ビーチボールで遊んだり、ビーチパラソルの下で休んだり。

すべてが心地よくて、すべてが完成されていて、楽しくって、嬉しくって、笑顔がこぼれて。

そんな風景に私たちはいる。

いや、違う。

きっと——私たち自身が、そんな風景なんだって——教えてくれたんだ。




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「作家ってさ、誰に何を売ってると思う?」

「……そりゃ、読者に本とか作品を売ってるんでしょ」

「そういうことじゃないんだよ。そんなのは、どうだっていいのさ」

「……じゃあ、何を売ってるの」

「聞きたいか?」

「言いたいんだろ」

「……」

「言いたいのならどうぞ」

「……作家はな、悪魔に魂を売ってるんだよ」

「へえ」

「いやマジでだからな」

「ふ〜ん。じゃ、普通の生活できなくなるね。大変だね」

「本当だからな。作家になった以上、普通に生活して、恋愛して、青春して……なんてこと、望めない」

「作家は恋愛禁止なわけ。アイドルじゃないんだから」

「禁止なんじゃなくて、そんなことできなくなっちまうんだ」

「どうして」

「どうしてって、そりゃあ……悪魔に魂を売ったからだろう」

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