第2話




どこまでいっても果てしのない光に満ち溢れた世界を、僕と大きな奴はゆっくり進む。

僕ら以外にも動いているものはたくさんあり、そのものたちを真っ黒くまん丸の目でチラリと見ながら

大きな奴はその大きな体を揺らして進む。


真っ黒い目というものは、何を考えているかわからなくて、なんだか薄気味悪い。


(おい、一体どこに向かうんだ?)


いつまでも何も言わない奴の長い体を追いかけて僕は聞いた。


(はじまりの場所さ)


(はじまりの場所?)


(俺はお前をそこまで連れていく。そこから自分で始めるんだ)


奴がそう言ったとき、とがった口、丸いけれど鋭い目つき、クネクネして長い体のものが


ゴツゴツした岩かげからヌラヌラと出てきた。


(おい、そいつは誰だ?)


長い奴が大きな奴に聞いた。


(はじまりの者だ。手を出すな)


大きな奴が答える。


(へえ、お前に水先案内の役がきたのか。大変だな)


(大変ではない)


(水先案内の役の後には知らない世界が待っているっていうぜ)


長い奴がクネクネ体を躍らせ言った。


(知らない世界も悪くないだろう)


大きな奴が大きな口を少し開いて笑う


(ふん、俺はお断りだね!)


長い奴は、僕の周りをグルリと一周して、また岩かげにかえっていった。


(今の奴は一体誰なんだ?)


(いやらしいウツボさ)


大きな奴が軽蔑のまなざしでもって答える。


(僕は「はじまりの者」って名前なのか?)


僕は大きな奴の頭のほうに回り込み聞いた。


(俺はそれしか知らない。お前には名前はない。ただお前は「はじまりの者」でしかない)


大きな奴はその長い顔の先で俺をつつき先へと促す。


(じゃあ、お前には名前があるのか?)


(今まではなかったが、お前がつけたくばつければよい)


一瞬上からの光が消え、そこは暗くなった。


(じゃあ・・・)


僕は狭い所にいたときに、よく頭の中に響いてきた名前を言ってみた。



(こころ・・・こころってどうだ?)


大きな奴は、真っ黒い目をまばたきさせた。



(こころか・・いいだろう。そう呼んでくれ。じゃぁ進むぞ)


大きな体をくねらせて、こころは先に進んだ。


僕はこころの上にある三角のところにつかまった。







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