TAKE集4
(NG07シーン TAKE1)
「こちらです」
エレベーターで一階に上がると横にホテルのようなロビーがあり、フロントには見目好い女性が立っていて折り目正しい会釈をされる。
新見はそれを気にすることなく向かいの壁にあるエレベーターに乗り換え、少女がついて来ると最上階の十二階のボタンを押す。
少しの浮遊感の後に到着した十二階で下りるとポケットから出した鍵で目の前にある扉を開けた。
先に靴を脱いでスリッパを差し出せば、少女もサンダルを脱いで揃えてからそれを履く。鍵をかけ直して廊下を歩くと少々大きいのか歩きづらそうなペタペタという足音が後ろを続いた。
リビングのソファーに腰掛けている冬木。
テーブルにある灰皿には煙草が火の点いたまま放置されていた。
「うわ、まさかと思いましたけどやっぱり冬木さん寝ちゃってましたか」
サマーニットに灰色のTシャツとスウェット姿のリラックスしている冬木に、新見の後ろからひょっこり顔を覗かせた少女が声を上げた。あちゃーと額に手を当てる。
撮影前から眠い眠いとぼやいていたので予想出来た光景だった。
寝顔は結構可愛い、なんて思いながら紗枝はそれを眺めた。
「起こしましょう」
「え、ちょっと可哀想な気が……」
「この後、組で会合があるので遅れる訳にはいかないんです」
「なるほど」
冬木は新見に文字通り叩き起こされた。
(NG09シーン TAKE1)
「何悩んでんだ」
「松田さんの登録名で。出来るだけ分かり難いものにしようと思ったんですが、漢字自体が簡単なので崩すと‘はむ’になっちゃうんですよね」
紗枝の言葉に背後から「ハムは止めてー! あとハムスターとかハム公も!」という松田の悲鳴がする。
「…その渾名つけられたことでもあるんですか?」
思わず聞き返した紗枝に松田が笑みを引っ込める。
「小中高とね。まあ、全員沈めたけど」
「わりとシャレにならないので真顔は止めてください」
「あはは、ごめんちゃーい」
(NG09シーン TAKE 裏)
「お疲れ様です、ひいらぎ。お茶でもどうぞ」
「ああ、サンキュー。あき」
「つきくさちゃん、タオル取って~」
「……はとむぎには笑われたくない」
「あれ、なんかわたしだけ疎外感…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます