藍と紫



幾許いくばくかの夜明けが痛みに消えて藍と紫

ポップスの音速に紛れて

残された呼気の回数を減らす

朝露が零れなければ

息もできやしないのだと

募る朝陽に思い知らされて

煙草の灰が思わぬところにひらりと

一抹の後悔のようになる

隣の部屋で眠るきみが目覚めた時

幸せな偽りに満ちたポップスが

亜音速になるか超音速になるかなんて

もうどうだっていいこと


蘇る色が温度を許していく藍と紫

昨日の西部劇の続きは

今日のメルヘンでこなしてしまおう

向き合う銃の引き金は

クラッカーの紙テープを散らすよ

毎夜の呪いで熊が暴れても

一撃で仕留めてしまえる

隣の部屋で眠るきみが目覚めた時

花火の後始末をしている僕が

うそぶく起承転結を

見抜いても見抜かなくても

どうせ痛みのなんて

一昨日のうちに

蹴り飛ばしてしまったから


蛙の合唱は僕のメタファー

ペンギンの行進は婉曲表現

戯れにためらうすさびの中で

合唱と行進が重なる

物見遊山ものみゆさんだけじゃもったいない

命の積算が

喜びを知るのでなければ

お遊戯とも呼べやしない


隣の部屋で眠るきみに

出会えるのはもうすぐ

灯蛾とうがが離れていく藍と紫で

つまらない殉情じゅんじょうを試してみても

なしつぶてを知るばかり



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