第三十一話 逃走
南の
「佐助よ。この扉、門番に気づかれぬように開けたられると
「わかりませんな。やってみんことには……」
「どうするかな……」
「
佐助は足音を忍ばせ、門番に近づく。
「アグッ……!!」
眠っていた門番は、痛みに目を覚ました。険しい
「門を開けろ」
「……」
幸村が門番に近づくと、
「開けよ」
幸村は、
「
「わかった!わかった!言う通りにする!命ばかりは助けてくれ、オレはしがない
佐助は、門番の
「
門番の男は、手慣れた
「開けたぞ……助けてくれ……たのむ」
門番は、刀を突き付け鋭い
幸村が言う。
「用は済んだ。命まではとらん」
佐助が門番に凄む。
「追ってくるなよ!くれば刀の錆にするぞ!」
門番は、おずおずと言う。
「その
(そう言われているのか)
幸村は思いつつ応える。
「そうだ。すまなかったな。では、さらばだ」
言うと幸村と佐助は馬を走らせた。
門番の男は、ヒゲ剃り跡の青々とした口元をゆがめて笑う。
「ククク……ウェダリアへの
ゲンと
「門を破られたぞ!幸村たちが
詰め所の奥に詰めていた兵たちが、
(味方は
ゲンは、先頭切って馬を走らせる。
「捕らえるぞ!殺してもかまわん!」
起きて来た
佐助は、
「御館さま、追って来ましたぞ!あの青ヒゲめ!」
幸村も振り返る。追って来たのはニ十騎ほどか。二人で戦うのは
「逃げるぞ!」
前を向けば、道が
「左へ!左が
二人は旧街道へと馬を走らせる。
「いかんな……」
幸村は後ろを振り返ると言った。
ゲンは、ニヤニヤと笑って弓に矢をつがえる。
「たのむぜぇ……当たってくれよぉ」
弓を引き絞る。幸村の後ろを走る佐助を狙う。
「ははん!
佐助は門番に向かって叫んだ。
「……それは、どうかな……っと!!」
ゲンが矢を
─── ヒヒュン ンン!
という
「オイオイオイオイ!アブねーじゃねーか、この青ヒゲ!さっき命は助けてやったろ!」
「知らんわ!おまえらみたいな
ゲンは次の矢を放つ。また佐助をかすめる。
「くそ!もう少し左か!」
「ヤメろ!この青ヒゲ!恩知らずが!」
ゲンにつづいて追ってくる騎士たちも、次々と矢を放ち出した。
幸村と佐助のまわりに矢が降り注ぐ。
「御館さま!マズイですな!これだけ撃たれると、当たるのも
「オレは刀しか持ってないからな!刀じゃどうにもならん!何か手はないか!何かあるだろう、忍びの者なら!何かこういう時使える
「え!?いや、そんなこと言われましても!何かあるかな!?」
佐助は手綱片手に、
「あー!あった!御館さま、
「地味でも何でも良い!早く使え!」
「はっ!恩知らずの青ヒゲが!これでも喰らえ!」
佐助は、袋の中から何やら取り出すと、
「ああああぁぁ!!」
追手の馬が次々と倒れ、兵たちも投げ出され
「あっ!
地面に投げ出されたゲンが起き上がりながら叫んだ。
「卑怯なのはお前もいっしょだろうが!どうせ卑怯なら勝ちやがれ!」
佐助は、馬を飛ばしながら叫んだ。
「御館さま、そうですよね!?」
「……そうだな。ミラナどのも待ってるし、今はまだ死ぬわけにもいかんしな。ここは道幅が狭く避けること横に避けることが
「まぁ忍びの者は、備えが
「うん……それならそれで、早く使ってくれ……」
幸村は
二人は旧街道を南へ。ウェダリアへと急いだ。
「なんだか気になる。へんな感じがするのよ、その
アズニア城にて、
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