アニマ・フェイカー

柳瀬 真人

プロローグ

 狭いコックピット内に警告音が鳴り響く。

 レーダーを確認、敵機を示すレッドマーカーが1つ。

 こちらに向かってきている。

 僕を殺しに。  

 だから殺される前に殺す。

 見た事もない、しゃべった事もない相手を殺す。

 今までそうしてきたように。

 生きるために。

 そして、これからも――

 ヘッドマウントディスプレイで敵機を目視確認。

 敵機は地上から10メートル程を低空飛行。

 呼吸を整える為、大きく息を吸い込んで大きく吐く。

 操縦桿のグリップを握りこみ、フットペダルを踏み込む。

 自機が旋回しながらアサルトライフルをかまえる。

 敵機をロックオン。  トリガーを引く。

 銃口から高熱を帯びた弾丸が連射される。

 敵機は蠅のように飛行しながら弾丸を回避。  

 地面に着弾。  砂煙が舞い上がる。

 砂煙の中から敵機が飛び出して来る。  左右のアームに内蔵されていた2丁のサブマシンガンがせり出す。

 底の見えない黒い二つの銃口は、僕の命を刈りに来た死神のひとみのように見えた。

 敵機は低空飛行で更に距離をつめて来る。

 コックピット内に警告音が鳴り響く。

 2丁のサブマシンガンから連射された弾丸が僕を殺しにくる。

 僕は歯を食いしばりながら回避行動、砂煙を巻き上げながら逆に急旋回。

 数発の弾丸が自機の左アームに被弾。  破壊。  衝撃が襲う。

 バランスを崩した自機が傾く。

 呼吸が乱れる。

 一瞬、ディスプレイに蒼い空が映った。

 そういえば、こんな雲一つない澄みきった空を見たのはいつ以来だろう。

 僕は、まだ死にたくない。

 僕は、まだ生きている。

 僕は、この世界で生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 


 

 

 

 

 

 


 

 

 

  















 






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

   

 

  

 

 

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