11話
寝ているあいだにそっと誰かが枕元に菓子をおいていったようである。椅子に座ってそれをバリバリ食べていると、
ねえねえと言って桃色のドレスを身に纏った少女がアンドレアに近づいてきた。昨夜会った。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、何のよう?」
「活躍した話してくださらない?剣士なんでしょ?」
少女は微笑んで向かい側の椅子にちょこんと座った。
アンドレアはしばらくうーんと考えていたが、いくら考えてもまだ何の活躍もしていないのである。
「活躍なんてしてない……まだ」
「嘘よ、ドラゴンを倒してきたって」
じわじわ擦り寄ろうとする少女から逃げようと、アンドレアは後ずさりした。
「怖がらなくてもいいじゃない」
「うわっ!」
「ま、この程度のことで怖がるなんてあなたって随分意気地のないことね?」
「グレイプニル、グレイプニル!」
「…………」
呼んでも叫んでも誰も来ない、広い部屋に叫び声が響き渡る。もっとお嬢様というのはおしとやかなはずだ。しばらく経って従者の様子を見に来たグレイプニルが、
あっけにとられてどたばた劇を無表情で観覧していた。
「お嬢さんと随分仲がよくなったんだな」
「あ!グレイプニル!助けてくれよ!」
「聞いてくださいな、グレイプニル様、私ちょっとお顔を拝見しにきただけですのよ?だってちょっと可愛いっていうものだから」
薄ら笑いを浮かべてグレイプニルは、しばらくその様子を観察していた。
そのようなやり取りを重ねている間に給仕が部屋に入ってきて呆気にとられてお嬢様と声を低めに話しかけた。そうするとお嬢さんは事情をぽっつらぽっつら話し始めて、やれやれと給仕が愛想を尽かすように宥めた。アンドレアもようやく混乱から立ち直ると、事情をようやく聞くことができた。
「新衣装お披露目パーティー?」
お嬢様は涙ぐんだ様子でアンドレアの様子を窺った。
「友達なの。彼女、いっつも特上の男前連れてるの……うちはいつもヨボヨボのおじいさんで恥ずかしい……」
「ドナベルの特上の男前ねえ、それって女王の騎士の連中が代わる代わるつき合わされてるだけだな」
あははと付け足すように笑って、グレイプニルは朝食に手をつけた。
「女王の騎士団って?」
「いやね、アンドレア、あなた何も知らないんだから。この国には家柄、見た目、強さ何の遜色もない騎士団がいるのよ、選ばれるのはたった15人で、それで、私一度くらいはああいうの連れて歩いてみたいの」
「俺スラムから来たんだけど」
「いいの!ねえお願いアンドレア、一晩貴公子のふりをしてくれるだけでいい」
上目遣いで少女はアンドレアに懇願した。
「冗談じゃない、何のしきたりも知らないのにさ!」
「あなたじゃないとだめなの」
真摯に見つめられると目のやり場に困る。姫が近づくと何ともいえない良い香りがした。
グレイプニルに目で助けをこうと、あっさりと関係ないとでもいわんばかりに目をそらした。
「お嬢様、爺が泣いてしまいますよ」屋敷の規模よりは少ない使用人は、そのお嬢様の軽率な思いつきをすぐに否定した。
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