チューリップ

 チューリップとは言っても、植物のチューリップではありません。鶏の手羽に切り目をいれてくるっとめくり、その肉をチューリップの花にたとえたから揚げですね。


 昔はパーティーや誕生会、お弁当の花形だった気がしますが、最近ではあまり見なくなりました。今ではお手ごろな値段でもも肉も胸肉も手に入りますし、やはり下準備に手間がかかりますしね。おまけに食べるときに手が汚れたり、骨に何かを巻いたりしなきゃいけないのもネックなんでしょうか。


 実は、私の母は手羽元でチューリップを作ってくれていたのですが、手羽先で作ったほうがポピュラーらしいと最近知りまして、軽い衝撃を受けました。

 どちらが正解というわけではないのですが、通りで母のチューリップは茎が太いと……(手羽の骨はチューリップの茎にあたります)


 肉に下味をつけて片栗粉をまぶして揚げるわけなんですが、それが夕食に登場すると本当に嬉しかったものです。それこそ本当に食卓にぱっと花が咲いたように華やぐといいますか、ハレの日の料理でしたね。

 元々、母は料理が好きではありません。それでも、肉をめくる手間がかかるチューリップを揚げてくれたことは感謝です。


 それにあの形がなんともいえず楽しいんです。よく漫画に出てきそうな骨付き肉を彷彿とさせるからでしょうか。

 わくわくしましたねぇ。まるで自分が海賊か何かになってワイルドにがぶりと肉に食らいついているようでした。実際は漫画よりもずっと小さいんですけれど、子どもの私には大きなロマンでした。


 私の夫も実はチューリップが好きなんです。まだ一度もチューリップのから揚げを食卓にあげたことがないので、次の結婚記念日にでもこっそり内緒で用意してみようかなと思います。

 ……半年以上先ですけれどね。

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