第十一話『天秤 - ライブラ』

「普通はそんなに動けませんね!」

と、奈緒子がサラに対して、体術を絶賛したあと、こちらをちらっと見た。


「ほんとに、このチームは実はすごい人が多いですね。」

「どういうこと!?」

と、奈緒子の僕に向けられた視線と言葉に、サラが反応した。なにか具体的な特徴を捉えてると思われる奈緒子に対して、ピンとこないサラ。たしかに、ジュンはRPGに詳しいけどぉ、とつぶやいている。


その質問に対し、ぐいっと、僕に近づいてくる奈緒子。

そして、眼鏡に手をやり、押しあげる動作をする。


「ジュンさん、それ、かなり強い武器ですよね!?!?」

と僕に向かって訊ねた。


「え??なんで分かったの??」

と僕は応えるのが精一杯だった。とくに隠しているわけではなかったのだけど。

そう、この武器は、ゲーム開始時にランダムに与えられる最初の武器。しかし、正体は、SSSランクの武器「 神の剣 -デュランダル 」だった。そのことに、奈緒子が気がついたようだ。


でも、この武器はネットなどにも形状が公開されておらず、わからないはずなんだけどなぁ、と思いながら、先程から、奈緒子が繰り返すしぐさを思い出していた。


「メガネ??」

と、思いあたり、僕は口に出した。


「もしかして、メガネにスキルがついているの??」

と僕が奈緒子に訊ねた。


「そうなんです。防具:魔女のメガネにつく『天秤 - ライブラ』です。」

「え!!それはすごい!!」

奈緒子が口に出したスキル名、それはA+ランクのスキルだ。


SSSランクの「 神の剣 -デュランダル 」がいきなり出てしまっているので、感覚が狂ってしまっているが、A+ランクのスキルも相当すごい、なかなか出ないレアスキルだ。


「その武器の方がすごい気がしますね!」

まさに天秤にかけて鑑定するようにメガネを押し上げて、「 神の剣 -デュランダル 」を観察する奈緒子。


「強さは、どういう風に表示されるの??攻撃力がそのまま表示されているわけじゃなさそうだね。」

「そうなんです!!」

僕の推理に奈緒子が目を輝かせて応える。


「色で表示されるんです!!」

「色かぁ」

それは思いつかなかったな、とちょっと悔しかった。


「ジュンさん自体には、色が出ていないのですが、剣だけ、かなり強く色が出ているんですよね。こんな色は見たことがないです、その武器かなり強いんじゃないですか??」

「試してみようか?」

奈緒子の推理に、実際にやったほうが、納得行くかな、と思ったので、少し進んでモンスターを見つけた。


「スライムだ!実際に試してみよう!」

そう言って、スライムに近づく。


そして、スライムが僕に気がつく前に。


抜刀する。


SSSランクの神器。「 神の剣 -デュランダル 」を。


刹那、スライムにエフェクトが奔り消滅する。

遅れるようにスライムのダメージが表示される。


「99,999」

最高のダメージ、いわゆる、カウントストップの数字を表示した。


「ぇ、ええええぇぇぇぇ!!きゅうまんきゅうせんきゅうひゃくきゅうじゅうきゅう!!??」

それを見ていた。サラが叫ぶ。

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