第23話 騙して悪いが仕事なんでな
前回までの斬魔機皇ケイオスハウル!
佐助は湖猫のシド・マキシマと共にギルドから発見されていない遺跡の探索へ向かう事になった。
ハチャメチャな方法で遺跡に突入するシドに面食らう佐助であったが、結果的には遺跡の防衛兵器と戦闘用大型ショゴスの破壊に成功。
シドの腕前と経験に感心しつつも「もう遺跡荒らしは懲り懲りだよぉ!」となる佐助なのであった……。
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遺跡に堂々と乗り込んだ俺達の前に現れたのは武装をした
遺跡に乗り込む直前に俺が投げつけた元気玉もどきによって壁に空いた穴からわらわらと奴らが湧いてきた。
「ゴッドハァアウル!」
ケイオスハウルから繰り出される魔力の竜巻が
「ヒャッハー! 神話生物は消毒だぁ!」
レッドキャップの火炎放射が魔力流で動きの止まった
「やったかサスケ!?」
「まだです、こいつら丈夫なのできっちりトドメを!」
動けなくなった敵にメイスと拳が次々突き刺さり肉塊に変えていく。ミ=ゴの時よりも迷いなく身体が動く自分に少し驚いた。
それと同時に、人間相手じゃないと楽だとも感じるようになっていて更に驚いた。
戦闘が終わったと判断した俺は自分達が突入した広い空間を軽く見回す。
このドームのような部屋は一体何の目的が有るのだろうか。
「……さて、ここは何処ですかね」
「知らん!」
知ってる!
「少し調査するので待っててください」
「おう! 周囲の警戒は俺に任せな!」
左腕を口元に近づけてチクタクマンに声をかける。
「チクタクマン、周囲の地形を調べられるか?」
「オーラィ! やってみよう! サスケ、君の視界情報を借りて精度を上げる。この部屋に有る通路を集中して観察してくれ」
「了解した」
俺が大気に漂う星屑のような魔力の流れを注視していると、チクタクマンがソナーや魔力探知を用いた簡単なマップを作成してくれた。
「これでどうかね?」
「ありがとう。レッドキャップに転送しておいてくれ」
「オーケー!」
早速地図を確認してみる。
俺達が居る少し大きな部屋には遺跡突入時の戦いで空いた風穴と元から存在した二つの扉が有って合計三つのルートが有るみたいだ。
今、俺達が戦った古のものは風穴から出てきたことを考えれば、先ほどの戦闘で空いた風穴を通るのが一番安全な気がする。
風穴の向こう側には何も居ないと確定している訳だし。
「シドさん、この後はあの風穴を通るのが安全かと思われます」
「それには俺も同意だ。こういう場所では可能な限り滅茶苦茶に動いた方が敵の動きも混乱する。特に今回は貴重な文化的遺産を持ち帰る訳じゃねえ。金目のものを見つけ次第お持ち帰りして上に報告するのが目的だ」
「では……」
その時だった。頭上から突然キラキラとした魔力の光が降ってくる。
次の瞬間、上から突然白いエクサスが降ってきてレッドキャップに飛びかかった。
「シドさん!」
「びびんな!」
だがレッドキャップは咄嗟に身を躱し、逆にメイスで襲撃してきたエクサスの頭部パーツを破壊。
更に背中を見せて逃げようとしたエクサスの下半身にあるホバークラフト部をアサルトライフルの集中射撃で破壊。
やぶれかぶれになった白いエクサスが鞭のような両腕で殴りかかってくるが、それも紙一重の動きで回避し、エクサスの両肩関節部の装甲の隙間をアサルトライフルで破壊。
動けなくなった白いエクサスのコクピット以外を念入りにメイスで叩き壊し、だるまのような姿に変える。
戦闘民族アズライトスフィア人やべえ。
「しっかしなんなんだこいつは?」
シドさんは明らかに困惑している。
困惑しているのはこっちです。
「……もしかしてこいつ、
「神話生物がエクサスに乗るのか?」
「俺は見たことが有ります。ミ=ゴが似たようなものを開発していました」
「だとしたら……思った以上に厄介だな」
「とりあえず俺が尋問をしてみます。魔術師なので精神攻撃には耐性があるつもりですし。もしかしたら金目の物を持っているかもしれません」
「応ッ! 任せたぞ」
ケイオスハウルでだるまエクサスとの接触回線を開く。
『クッ……殺せ! 誇り高き機甲騎士であるこの私が敗北した上に人間のような下等種族に辱められるのはごめんだ!』
すると突然女性の声が頭の中から聞こえてきた。
彼らは言葉ではなくテレパシーを使うって言うからな。
「お前を殺す訳にはいかない。幾らか聞きたいことも有るんでな」
特にエクサスに何故乗っているのかは後々ゆっくり聞かせてもらいたい。
『聞く……身体に聞くということか! やはり人間というのは下劣な種族……』
「ねえチクタクマンお前の翻訳魔術壊れてない?」
「勘違いしないでくれサスケ、壊れているのはこの
\知ってる!/
『チクタクマン!? まさかあのニャルラトホテプの……そうか、私を機械仕掛けの化物にしようというのだな! 騎士の誇りも奪われ下等種族の奴隷に堕とされてしまうなんて、そんな……人の子など……』
ガコォン! 耳に残る金属音。
ケイオスハウルで思い切りコクピットを殴りつけてしまっていた。
なんて恐ろしい精神攻撃なんだ。
とりあえずこいつは道案内+盾にしてやるとしよう。
「良いからさっさと金目の物を出せ! 金銀パールプレゼント! オーケー!?」
『ぴぃっ!? 出します出しますぅ! 私の知ってる人間と違うぅ!』
「サスケ、君も順調に
「脅迫も対話だ。どうせこいつらのことだしまたぞろ地球人を家畜にしようとしてるんだろ? ラブクラフト先生が言ってた!」
様子がおかしいと思ったのかシドさんから通信が入る。
「おいサスケ? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですシドさん。いやあ
「その強敵とやらは潰さなくて良いのか?」
「人質です。ケイオスハウルの腕力ならコクピットを盾にするくらいはできます」
「ガッハッハ! グッドだ! 俺も軍に居た頃は似たようなことをやったぜ!」
「それでは俺が先行します!」
「おう、頼んだ。だがその前に……」
「なんです?」
「ああ、実は一つ仕事をな……」
こうして俺達は無事に
勿論ギルドにも通報した。逃げる程度の時間は有るだろうし、これを機会に知りもしないでこの世界の人間を見下すのはやめて欲しいと切実に思う俺なのであった。
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「さて……どうしてこうなったんでしょう」
「日頃の行いだろ」
格納スペース一杯の財宝を回収し、無事に遺跡を脱出して五分ほど航海した後のことだ。何時の間にか全方向からエクサスが近づかれてしまっていた。
というか、囲まれていた。
岩陰や水底などバラバラに動いていた筈のエクサスが急に息を合わせてこっちに向かって来ているのだ。
「いやあすいませんシドさん! 危険な遺跡の探索お疲れ様でした! 迎えに来ましたよ!」
オープン回線で無線通信が入ってくる。
子供の声だ。こいつがシドさんの言うところの情報屋なのだろう。
「情報屋ァ、随分物々しいお迎えじゃねえか。なんで俺が今日遺跡に向かうって分かった?」
「そりゃあ、ギルドの方にも僕の目は光ってますから……」
「目、ねえ……ヒヒッ、そいつは良い」
「ともかくシドさんにもしものことが有っては行けないと思いまして! 僕も愉快な仲間達を雇い入れてこうしてお出迎えしたんですよ?」
「ようシド! この前は良くも騙してくれたな! このギルドの狗め!」
「さっさとこさえた借金返しやがれ!」
「こっちはてめえのせいで奴隷貿易がパァだ!」
「ここで会ったが百年目、兄貴の仇を討ってやる!」
「さっさとお宝を置いていきな! さもなきゃここで海の藻屑にしてやるぜ!」
成る程、シドさんの日頃の行いがよーく分かった。
確かにこいつは日頃の行いのせいだな。
「いやーすまんなお前ら、本当にすまん。だが、まあ、その……なんだ」
シドさんが笑っている。
まあ笑うのも仕方がない。
それにしたって酷い詐欺の片棒を担がされたものだ。
「――――出てこい、サスケ!」
「応ッ!」
俺はコクピットについたボタンを押し、迷彩魔術を解除。
するとシドさんを囲む敵の前に10m近い巨体を誇る漆黒のエクサスが現れた。
そう、俺とチクタクマンは遺跡を出てからずっと機体を魔術で隠していたのだ。
護衛任務までやらされるとは思ってなかったが、こういうのなら悪くない。
凍りつくならず者達、彼らは聞いてないだのクトゥグアを押し返した機体だのお前が先に行けいいやお前が先に行けだの口々に言い合い、先ほどまでジリジリ縮まっていた包囲網は硬直してしまう。
「な、なんだその機体! 何故お前みたいな不良湖猫がナンバーズのお気に入りを援軍に連れて来ている!」
「悪いな坊主。でもパパやママに習わなかったか? 悪い子になっちゃ駄目だって。なにせもっと悪い大人に騙されるんだからよお!」
「くそっ!」
「ギャハハハハハハ! 可愛いもんじゃねえか!」
情報屋を名乗る少年は慌てて逃走を開始。
それと同時に包囲網は決壊を始める。
「行くぞサスケ。報酬はこいつらのエクサスだ」
「今回俺達悪役っぽいですね」
「知らんのか、悪党相手なら幾らやっても文句は言われんのだ」
「ふふっ……ですね」
ケイオスハウルが両腕を天に掲げると魔力を帯びた蒸気が腕関節から力強く吹き出す。
俺とチクタクマンはもはや機能していない包囲網の只中へと飛び込んでいった。
「騙すようで悪いが、仕事なんでな」
俺はとびきり嗜虐的に微笑んでいた。
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せっかくのお宝は戦闘で海の底に沈んでしまった。悪銭身につかずなんて言うけれど、人間を狙う神話生物から奪った財宝も身につかないなんて聞いてない!
チクタクマンならこういう時なんて言うのだろう?
ともかくもう遺跡荒らしなんて懲り懲りだよぉ!
第二十四話「Easy come, easy go」
邪神機譚、開幕!
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