恐怖の五期生編⑨

その店が死ぬほど忙しいのは覚悟していた。

もちろん死ぬほど忙しかった。

早番が終わると、店長の前に必ず2、3人バイトが並ぶ。

今日で辞めさせて下さいというバイトだ。

「はい。お前、今日までね。お前もね。お前もね!」

店長は2つ返事で聞き入れると、そのまま派遣会社に電話する。


「明日、派遣2人よこして!いや、3人!」


まるで出前のように、派遣アルバイトの追加を依頼する。

まさにアルバイトは駒であった。


僕は東館の一番忙しいコースに入れられた。

五期生の一般公募の生き残りの1人と一緒に入るように言われた。

僕は他店でさんざんパチンコ屋の仕事はわかっていたが、一般公募の彼は様子がおかしかった。

一緒にコースに入るとガタガタ震えている。

「どないしたんや?パチンコ屋の仕事、どこまでわかるんや?」

と、聞いてみると。


「・・・パチンコ屋に入ったの、今日が初めてです!!」


まじか!?

全くの未経験か?

パチンコ屋未経験どころか、パチンコ未経験か?

こんな地獄の戦場に、丸裸で入ってきたのか?


常にお客さんがパンパンの状態で、一般公募の彼にまともに教える事もできない。

僕は1人で二人分動いて、彼には

「俺の後ろにつけ!見よう見真似で動け!」

と、伝え、なんとか戦場をかいくぐろうとした。

しかし、常に50人以上のコースで未経験の彼はやはり、足を引っ張る。


お客さんの玉をこぼす、ランプ対応がわからない。


異変に気が付いた拡声器の店長が、僕らのコースに入ってくる!

「なんで、こんな呼び出しランプばっかりつくんや!このコースは!」


「すいません。」

僕は謝ったが、感のいい拡声器を持った店長が、すぐ一般公募の彼の目を見る。

やはり、まだ震えている。


「お前!!・・・・素人やな!!」


「・・・・はい。」


一般公募の彼は店長に掴まれ、コースから引きずり出されて連れて行かれる。


「いやあぁぁぁーー!!」


確かに彼は、そう叫んでいた。

どこに連れて行かれたのか?

そして、ランプまみれのコースに僕は1人残された・・・

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