S社員と作業屋編⑬

僕に電話をしてもらえなかったことにより、遅刻したSはそのまま行方をくらました。


そしていつも通り、僕はSの分までホールで仕事をした。

そして早番の終礼をしようと、事務所でバイトが並んでいるときに、

行方をくらましていたSが入ってくる。

もちろんバイトも僕も「なにしにきてん?」みたいな顔をした。

そして予想していたように、Sの逆ギレが始まった。


「みんな!聞いてくれ!俺、このおっさんにハメられてん!!」


バイトの前で、僕を指さし非難する。

おっさんとは、僕の事である。


「俺は今日はちゃんと朝から起きてたんや!、ただ、遅番と勘違いしてただけなんや!それをこのおっさんは!自分の勝手な判断で、電話連絡せんかったんや!俺を遅刻させるために!!」


演説を垂れだしたが、まさに小学生レベルの言い訳である。

そして確実にこいつは朝から起きていなかったくせに。と思う。

そしてバイトも納得しない。Sにバイトが反論する。


「Sさんがシフト確認してないのがいけないんじゃないですか?」


その通り!

バイトの言うことが正しい。

そこでSの詭弁が飛び出す。


「ええか!みんな!このおっさんは仕事がでけへんねん!それで店長がこのおっさんの仕事を俺に任せるようになってん!つまり、このおっさんが無能やから、俺が、このおっさんのせなあかん仕事をやってるねん!もっと俺かてホールに下りたいし!すべてはこのおっさんの仕事でけへんのがあかんねん!!」


シフトの確認をしてなかったことの言い訳にもならない詭弁が飛び出す。

僕は何か言ってやろうと思ったが、出てきた言葉が一言だけだった。


「・・・お前、もう、帰れや」


「はあ!!!???」


「もう、いいで。帰りや。」


バイトにもこれ以上Sの詭弁を聞かせたくなかったし、バイトもみんな呆れていた。

そしてSが僕に放った言葉。


「・・・・死ね!」


もはや幼稚園レベルの発言になってきた。

さらにSが放つ、


「お前、ネタ面白くもないのに、芸人し腐りやがって!そんな事してて、嫁はなんも言わんのか?」


「嫁は関係ないわ!応援してくれるわ!」


「ふんっ!お前みたいな奴に養われて、アホな嫁やの!」


「!!!!!」


「可哀想で、仕方ないわ!お前とこの家族みんな!」


「!!!!!」


「あほじゃ!お前に養われてる、


嫁も!


子供も!


みんな、あほじゃ!!」


プツン!!


俺の、妻と子供を?


侮辱した?


こんな虫けらが??


次の瞬間、僕はSに掴みかかっていった。

それがSの仕掛けたものだとわかっていたが、許せるものと許せないものがある。


自分を制御できずに、僕はSに掴みかかっていく・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る