「お約束」な少女漫画

相田 渚

プロローグ

「お約束」

何事にも「お約束」がある。

例えば、昔話の最後はめでたしめでたしで締めくくられる。ミステリー小説だったら何故か探偵のいる先々で事件が起きる。昼ドラではなんやかんやあった末に「お前を殺して俺も死ぬ!」というセリフと共に男女が心中を図ろうとする。戦隊ものなら正義の味方が必ず勝つ。少年バトル漫画は「俺達の戦いはこれからだ」という主人公のモノローグで最終回を迎える。

そして例に漏れず、少女漫画でも「お約束」は当然、存在する。

 

平凡と自称する美少女なヒロインが同じ学校のイケメンに恋をする。けれども好きな人の隣にはお似合いの女の子が…。とても自分じゃ敵わないと諦めつつも、ひょんなことから彼と親しくなり紆余曲折を経て、無事彼と結ばれる。

 

ヒロインが最終的に好きな人と結ばれるという「お約束」は、裏を返せば第三者がこの二人に恋心を抱いても成就することはないということだ。


ヒロインより前にヒーローとどれだけ良い感じになろうが、たとえ付き合っていようが、最終的にヒーローはヒロインと結ばれる。


それが少女漫画における「お約束」だ。


いずれヒロインと恋に落ちるヒーローを好きになるだけ無駄。

そんなことはわかっていた。

けれども、わかってるくらいで心は制御なんてできやしない。

 

つまるところ、ヒロインと結ばれる運命を持つヒーローを、好きになってしまったのだ、私は。

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