第五話 5-3

 翌日。土曜日でも当然学校はあったが、仕方なく大会申請をして休みを取らせてもらった。部活の大会なら顧問の先生とかがまとめてやってくれるけれど、私個人の活動だから、面倒な書類を書かなくちゃいけなかった。

 時刻は午前九時。アンドロメダを予選会場まで走らせる。立仁とは現地で合流する予定だ。昨日言った身だしなみについて、聞き入れてくれたのか分からないけれど、今は祈るしかない。

 マルチキャリアタッグバトル、その予選は土日の二日間で行われる。今日は第一戦から第二戦までで、翌日に第三戦と第四戦――すなわち準決勝、そして三位決定戦と決勝。その後予選通過決定戦、つまり決勝戦の敗者と三位決定戦勝者による、予選通過を賭けた試合がある。

 日曜のボリュームが凄い事になっているように思えるが、この予選の全参加タッグが三十二組。その第一戦だけでも実に十六試合になる。更に第二回戦の八試合で、計二十四試合もあるのだ。単純な試合の量なら、今日が一番多いだろう。まあ、地区予選の最初は見ごたえのある試合はあんまりないだろうけど。

 その分、翌日の試合数はたったの八試合。ただ、その試合内容は準決勝や決勝がある関係上、とても濃い。明日の観戦チケットは、ただの地区予選の割にけっこう売れてるんだとか。それに、決勝後に行われる予選通過決定戦も、決勝と同じくらい盛り上がるらしいが、当然私と立仁の目標は決勝で勝ち残りそのまま本戦に出場することだ。

『決勝で負けたということは、全国では通用しない』

 誰が言ったわけでもない。立仁も口に出して言ったことはない。でも、この大会に出場し、ましてや全国を本気で目指している全ての人々が抱えているものだ。確かに、ここで負けても、次の全国では勝てるかもしれない。だが、予選で敗北した時点でその二人の実力の程が知れるという考えは、私には否定しきれない。

 会場の競技場が少しずつ見えてくる。私の二度目のマルチキャリアバトルが、始まる。今度は一人ではないけれど、一人のときよりも緊張してきた。心臓の鼓動が身体中に響き渡る。ホバー機構のアンドロメダは揺れなんて殆ど無い筈なのに、心なしか私を取り囲むすべてが震えているように感じた。


 

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