現実のはじまり

第2話

 夢の中の姉は、うつぶせの状態で川面に浮かんでいた。

 引き上げられて初めて、腹を鋭利な何かで刺されて死んだと分かった。

 二人の幼い姪たちが母親の遺体に向かって駆け寄ってくる。

 それを抱きとめ、「見ちゃだめっ!」


 ――という自分の叫び声で目が覚めた。

「夢か……」

嫌な夢だった。しかし、夢の中で死んだ人間は、実際には長生きすると聞いたことがる。

「悪い夢じゃないわよね」

 自分に言い聞かせるようにそうつぶやいて、仕事に行く準備をしていたとき電話が鳴った。

「もしもし? お姉ちゃんがそっち行ってない?」

 いつもどおり少し早口な母親の声に、なんだか言いようのない不安が込み上げてきた。


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