千四百二十九話 石箱と黒い札と仙王槍スーウィン
皆に、
「皆、一先ず退きながら対処しよう」
「「「「はい――」」」」
『閣下、いつでもわたしを使ってください』
『はい、御使い様!』
『精霊の二人はそのままで、危なくなったら二人に頼る』
『はい!』
「ウォォン――」
「にゃごぉ」
霊湖の水念瓶から<水念把>を<レイブルハースの粘体>にふりかけながら、黒い霧を噴出させている黒い葉を擁した茎に向かわせた。
大きい鯱のような<レイブルハースの粘体>に茎の群れが絡み付いていく。
茎と黒い葉から黒い霧が噴出。
すると、<レイブルハースの粘体>の周囲で、黒い霧を噴出していない、黒い葉を擁した茎の群れに、黒い霧を出している茎が攻撃を行い、退けていた。
黒い霧を噴出している茎の群れが黒霧ハフラルーンがいる茎の群れだろう。
その隙に、霊湖水晶の外套を払うように魔皇メイジナの腰に左腕を回し、
「ングゥゥィィ」
「あぅ――」
と魔皇メイジナから女性らしい声が響いたが、構わずメイジナを抱えて霊湖水晶の外套で<武行氣>を発動し、全身から魔力を噴出させる。そのまま背後に跳ぶように飛翔しながら黒霧ハフラルーンの黒い葉と茎の群れを凝視、数は多すぎて把握が難しい。
<闇透纏視>だと凄まじい旧神の魔力が反応しまくりで、これまた把握が難しくなる。
有視界と掌握察の魔素把握のほうが状況が分かりやすい。
この辺りからして、戦いは単純ではないと旧神たちの蠢きを見て少し恐怖を覚える。
が――液体を元にした鯱の<レイブルハースの粘体>は囮になりえる。
いつでも蒸気的な魔力となって、霊湖の水念瓶の中に引き戻せるから……暫く黒い霧を放出している黒い葉を擁した茎の群れを引き寄せてくれ――。
抱えている魔皇メイジナは、
「シュウヤ、我は――」
神だろうと復活したての美人さんだ、助けるのは当然。
「今は後退し、様子見です」
「それは分かっているが……まったく初めて尽くしだぞ……」
魔皇メイジナは照れている? はにかむ魔皇メイジナの表情は可愛らしい。
そのメイジナは俺のインナーと筋肉を見てから頬を朱に染めつつ霊湖水晶の外套を触りながら、
「――この外套の内側は水、どこかの湖に通じている? それが絹と水晶的な素材の外套でもあるのか不思議だ。籠手の手甲の魔印は見たことのない術式……ふむ、もう我が知っている魔界ではもうないのだな……我の民たちは……」
と発言、やや疲れが見えるような顔付きの魔皇メイジナに、
「俺に掴まっていてください」と言うと「ふふ、分かった」と頬が朱に染まっている笑顔が良い――六本の腕が俺の腰に回ってくると魔皇メイジナの乳房の柔らかさと乳首の硬さを腰に得られて嬉しかった。
「ングゥゥィィ、エッチナ、ハルホンク、ゾォイ!」
「ぶはっ」
ハルホンクの愉快な言葉に笑った。
黒い霧を噴出している黒い葉を擁した茎は<レイブルハースの粘体>に絡みまくっている。すると、四方の地面から黒い葉を擁した茎の群れが<レイブルハースの粘体>に絡み付いている黒い霧を噴出させている茎へと向かう。
あの黒い葉を擁した茎の群れは、他の旧神たちだろう。
旧神エフナドの黒い葉と茎は蛍光色の魔力が強いから分かる。
その黒い霧を外に出している黒い葉を擁した茎に絡みつくと、複数の茎から剣戟音と法螺貝と和太鼓と心臓の鼓動音が響いてきた。
無数の黒い茎から虹色の血飛沫のような液体が周囲に散った。
傷を受けたような茎と茎と黒い葉と黒い葉から桃色の魔力と烏賊の形をした半透明の魔力が現れ散る。
あの旧神たちが宿る茎たちは、黒い霧を周囲に放つ黒い葉を擁した茎の群れから俺たちから引き離そうと奮闘してくれているようだ。
ありがたい。
シュバス=バッカスの女性の姿はないが桃色の烏賊の形をした魔力が見えたから旧神エフナドと共に、あの黒い葉を擁した茎の群れとなって黒霧ハフラルーンの黒い葉を擁した茎の群と戦ってくれていると分かる。
すると、黒霧を放つ茎の群れが絡み付いていた<レイブルハースの粘体>は蒸気的な魔力に変化すると霊湖の水念瓶の中へと帰還した。
霊湖の水念瓶の中に煌びやかな液体と霧のような魔力が増える。
宙空に浮いている〝霊湖の水念瓶〟の耐久度はまだ不明だから使用頻度は低いが、たまにはな――。
「おぉ……不思議な液体が入った瓶を扱えるのか。シュウヤは槍使いと思ったが、水属性の魔術師でもあるのだな」
魔皇メイジナからの言葉に頷き、
「はい、〝霊湖の水念瓶〟です。俺は<水晶魔術>も使えます」
「<水晶魔術>……」
知らないか。
魔皇メイジナは古い魔皇のはず。
魔皇バードインがまだ生きていた頃か?
もっと前なら【レイブルハースの霊湖】は知っているかもしれないと思ったが……。
魔皇バードインが霊湖を支配し【バードイン霊湖】に変化を遂げた後は上級神の魔界王子テーバロンテが、その地域を支配していた。【バードイン城】も魔界王子テーバロンテの居城だった。
だから、霊湖を知らないなら<水晶魔術>は分からないだろう。
そして、鮫の小像の〝レイブルハースの呼び声〟に戻さない。
黒霧を放つ黒い葉を擁した茎の群れは宙空に留まった刹那を狙う――。
<
「……え、シュウヤは光神ルロディスの神界騎士団でもあるのか?」
その言葉に【バーヴァイ城】で待機中の神剣ピナ・ナブリナを持つエラリエースの姿を一瞬思い出す。
「神界騎士団ではないです。が、光神ルロディス様と水神アクレシス様と戦神ラマドシュラー様と戦神イシュルル様などから加護があります、そして、悪夢の女神ヴァーミナ様と悪夢の女王ベラホズマ様とは絆があります、更に悪夢の女王だったヴィナトロスを眷属にしました」
「な……」
驚く魔皇メイジナの顔は見ない――。
<
黒い茎を数十と突き抜けた<
昏い洞窟内に蒼白い閃光が発していくようにも見えて凄まじく綺麗だった。
「にゃごぁぁ――」
魔皇獣咆ケーゼンベルスは「『ウォォォォン、黒い霧の旧神! 素直に退け、悪神ギュラゼルバンを封じる契約は不履行だ!』」
と叫びつつ衝撃波を黒い霧を噴出している茎だけでなく――。
他の黒い茎の群れも吹き飛ばした。旧神エフナドなどの黒い茎は見た目が似ているからな。
魔皇獣咆ケーゼンベルスは、
「ウォン! 他の旧神たちよ、済まぬ――」
と神意力を飛ばさず黒い霧を出している黒い葉を擁した茎を狙う。
左前足を振るい、その爪で黒い葉と茎を切断した。
ヴィーネは
黒い霧を放出している茎に突き刺さった。
光線の矢から緑色の蛇が茎へと移り、黒い茎の中に緑色の蛇が浸透していくと黒い茎は腐ったように萎れて爆発した。
が、爆発は黒い霧を出している黒い葉が覆い被さって威力が減退されると、その黒い茎は他の茎の中に吸い込まれていく。
ヴィーネはガドリセスに武器を変えて<血魔力>を通しながら前進し跳躍し飛行術で飛翔しながら素早く袈裟懸けを仕掛けた。
黒い霧を放っている黒い葉を擁した茎を斜めに切断。
切断された黒い茎は蒼白い光を発して消えた。
そのヴィーネは<血道第一・開門>を意識し、主に両腕から周囲に<血魔力>を撒きながら飛翔していく
宙空で身を捻ったヴィーネから放たれた無数の<血魔力>を浴びた黒い霧と黒い茎は瞬時に蒸発し、蒼白い光を放ち消えた。
キサラはヴィーネの左斜め前からダモアヌンの魔槍を掲げて前進し、<血魔力>を有した天魔女流<血烈叭槍>を繰り出す。
茎の群れの一部を円状に粉砕するように穿ち複数の茎を貫いた。
更にダモアヌンの魔槍を振るいながら跳躍し、柄の穴から無数のフィラメント状の光線を靡かせていく。キラキラとした<血魔力>を帯びている。
そのフィラメント状の無数の光線が黒い霧を放つ茎を切断しまくった。黒い葉も蒼白い光を発しながら消える。
シュレゴス・ロードが言っていたように光属性に弱い。
旧神たちの記憶を体感したが、恒星をも破壊した黒い霧や黒い塵ではないってことか? それとも光魔ルシヴァルの血が特異性があるからかな。
そして、この黒霧ハフラルーンも悪神ギュラゼルバンの討伐や封印に失敗しているんだからさっさと契約を捨てて素直に退いてくれればいいんだが――。
「ぬおぉぉ、黒い霧よ退け――」
「閣下に寄るな――」
光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスは骨剣を振るい<バーヴァイの魔刃>を飛ばしていく。
<バーヴァイの魔刃>を浴びた黒霧は蒼白い光を発して蒸発。黒霧を茎から放出している茎の群れも次々に皆から攻撃を喰らい蒼白い光を発して消えていく。
と俄に動きを変えた茎の群れがあった。
黒い霧を反対側の宙に放つようなフェイントを行い、群れから離れる黒い茎が出現し、それらの黒い茎は、黒霧の放出を強めながら無数に枝分かれをして俺たちを囲うように拡がり<バーヴァイの魔刃>など、皆の攻撃を器用に避けていく。
が、キサラの<血魔力>を有したフィラメントの攻撃が宙空に靡くと、その逃げた黒い霧と茎の群れを捉えるように切断した。蒼い塵となって消える。
黒い霧を噴出させている茎の群れは少し宙空で留まる。
勢いは弱まったように見えた。
そんな黒い霧へと目掛け――。
――五つの<
五つの<
が、すべての黒い霧を放つ黒い葉を擁した茎は倒しきれない。
茎の群れは多いし、増殖し続けていく。
他の旧神たちも俺たち側に加わって、黒い霧を放つ黒い葉と擁した茎の群れを攻撃しているが、あまり変化がない。
<水念把>を意識し、霊湖の水念瓶からレイペマソーマの液体が口に付着。
「『旧神エフナドに旧神シュバス=バッカス、退いていいぞ、あとは俺が倒しきる。そして、黒霧ハフラルーンとやら、言葉を聞いているのなら素直に退いてもらう。そもそもが、悪神ギュラゼルバンを倒す契約に失敗しているのだからな!』」
と俺の神意力を含んだ<水念把>の言葉は振動波のような声の攻撃となった。
黒い茎のすべてが止まって黒い霧の噴出も止まった。
口に付いた【レイブルハースの霊湖】の液体が様々に変化していた。
周波数ごとに形が変化するクラドニ図形を思わせる。
と立体的な幾つもの幾何学模様に、言葉から生命を得たようなフラワーオブライフの形もある。そのフラワーオブライフの形はパッと煌めきながら花火的な水飛沫となって周囲に散っていた。
他の黒い茎は後退し離れた。
ヴィーネたちも俺の行動に合わせて後退。
黒い霧を出していた茎の一部が集積し、気色悪い肉の体が構築された。
肉の体の表面に無数の小さい渦が巻いている。
その渦の一部が開き眼球が現れると、
「『我……黒霧ハフラルーン、ノ、誓イガアル、……途中デ止メルコトハ、デキナイ、ガ、我ノドコカニ、アル、石箱ト黒札ヲタオセバ……』」
どこに口があるのか分からないが神意力を含んだ言葉が心にも伝わってくると、肉の体と眼球から黒い霧が滲み出ては黒い霧が再び襲い掛かってきた。
――石箱と黒札を倒せか。
「ンン――」
渋い〝アメロロの黒豹服〟と成っている黒豹の相棒が左前に出る。
「相棒、左側の黒い霧を吐いている茎を全部燃やせ」
「にゃご~」
「ひゃぁぁ」
口を拡げた
魔皇メイジナの悲鳴は分かる。
<導想魔手>を作った。
<導想魔手>に魔皇メイジナを守らせつつ水念瓶と共に背後に回し――。
『強烈! 熱波は怖いですが……』
相棒の炎で左側の黒い霧と茎が蒼白い光も見えずに消えた。
妖精のヘルメは怯えた姿で少し踊る、チャーミングだった。
その妖精のヘルメの動きに合わせるように――「ナイスだ、ロロ!」と言いながら<握吸>を発動し仙王槍スーウィンの握りを強めながら右側に跳躍――。
<闘気玄装>を強めて――。
<
――<血想槍>を使う。
――神槍ガンジスで<血龍仙閃>――。
――聖槍ラマドシュラーで<攻燕赫穿>――。
――霊槍ハヴィスで<光穿>。
――白蛇竜小神ゲン様の短槍で<白蛇竜異穿>。
連続的なスキルの使用で黒い霧を放つ肉と眼球を擁した黒い葉と茎の群れを蒼く燃やすように倒しまくる。やがて、石箱と黒い札に黒い葉と茎が絡み付いて、その黒い葉と茎が人型を構成している怪物が見えた。
「『ヌゴァァン!? ハフラルーンメガ、我ノ存在ヲ、ガ、オ前ヲ、タオセバ!!』」
人型の怪物は口と体から黒い波紋と黒い霧を飛ばしてくる。
<朱雀閃刹>を前方に放ち、黒い波紋と黒い霧を蒸発させながら突進。
<朱雀閃刹>は途中で黒い波紋に相殺されて消えた。黒い葉と茎が絡み付いている石箱と黒い札に近付く、その石箱と黒い札目掛けて<白炎明鬯穿>を繰り出した。
仙王槍スーウィンの穂先に発生した水の膜から銀色の炎が発生――。
その仙王槍スーウィンの穂先が黒い葉と茎ごと石箱と黒い札を突き抜けながら銀色の閃光染みた炎を周囲に発生させる。
石箱と黒い札など人型の怪物は蒸発するように消えた。
刹那、黒い霧を吐いていた茎の一部は霧を止めて、「『カノ者ヨ、ヨクヤッタ――』」と言いながら他の旧神たちの黒い葉の中に収斂していく。
よっしゃ――。
これで黒霧ハフラルーンの魔皇メイジナ様と悪神ギュラゼルバンなどを倒し封じる石箱と黒い札の契約は消えたか。
仙王槍スーウィンから漏れている銀色の炎がまた渋い。
ラムーの鑑定結果を思い出す。
『名は、〝仙王槍スーウィン〟階級は
「「おぉ」」
「静まった、旧神の墓場が静まりましたぞ!」
「うむ、閣下の大勝利!」
背後のゼメタスとアドモスが興奮。
魔皇メイジナは無事かと確認、振り返った。
唖然としているが、大丈夫だ、<導想魔手>を消す。
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