七百二十二話 冥王不喰のメイバルとの激闘
ソリアードが放った魔矢は悉く赤茶色に散る。
赤茶色の魔力粒子が月明かりを受けて七色を帯びた彩雲と化した。
そんな彩雲を二振りの魔剣で払って現れた魔剣師。
髪は銀色に赤茶色が混ざって見える。
足下が煌めいた。
魔靴か飛行術か。
<導想魔手>のような<導魔術>の可能性もあるか。
「シュウヤ殿、邪魔なら――」
「――魔矢の攻撃は続けてくれ。魔剣師が間合いを詰めたら攻撃しよう」
「わたしも攻撃します」
「お二人とも、攻撃の時は何かしらの合図をお願いします――」
「にゃご」
「――分かった。相棒も自由に動け。そして、できる限り声掛けは意識する。それまでは魔矢を頼む。魔剣師の機動を少しでも見ておきたい」
「承知――」
ソリアードは精悍さのある笑顔だ。
そのソリアードは背中と腰の矢筒から魔線が繋がる複数の魔矢を指と指の間に挟んで魔弓に番えると、スタビライザーに魔力が集中するや魔矢を射出した。
魔矢は紫色と赤茶色の魔力を出しながら魔剣師へと向かう。
続いて槍のようなスタビライザーから――。
カトレアの花に似た花の魔力が迸る。
魔剣師は飛来してくる魔矢を凝視。
体からオーラ的な魔力を発した。
「――ひゃぁぁぁぁぁ」
ここからだと判別できない奇声を轟かせる。
足下から魔力の煙を立たせつつ横へと加速移動。
魔矢目掛けて二振りの魔剣を迅速に振るった。
魔剣の腹で魔矢を叩き刃で切断。
続けざまに飛来するソリアードの魔矢を真一文字に切断。
魔剣師は魔剣を振るいながら横回転。
回転しながら飛来する魔矢を切断。
魔剣師は体が駒のように回る。
魔剣の片方が血色に輝いた。
――<血魔力>を使うのか?
魔剣師は、その血色に輝く魔剣を巧みに扱う。
魔矢を弾くように切断し続けていった。
ソリアードは魔矢の射出のタイミングを狂わせる。
間が空いた。
魔剣師は身を翻すと――。
背中を晒しつつ伸身捻り中に魔剣を再び振るった――。
すると、雲に隠れた月が出るや魔剣師と魔剣を月明かりが彩る。
その彩られた魔剣から迸った魔刃がソリアードの魔矢と再び衝突し相殺――。
ソリアードはまたも驚愕。
「――チッ、わたしの魔矢を……あれが噂に聞く狂言の魔剣師か?」
「狂言の魔剣師カットマギーって奴か」
「はい、ネドー側の勢力が雇い入れた闇の仕事人。実力からして【八本指】、またの名を【八指】と呼ばれる存在かも知れません」
「あいつがか!」
「或いは【闇の八巨星】グループとも敵対する流れの凄腕か……」
「そっか、確証はないのか」
「はい。我らと敵対する闇ギルドの幹部や名のある強者を悉く倒したのは彼らのグループだと聞いています。ガルファ様も『現状、表に出すぎた存在であるが、最大限に警戒すべき相手であろう』と発言していました」
上界、下界と、セナアプアもまた広いからな。
しかし、ソリアードの装備品も特別と分かる。
「ソリアードの魔矢は特別なんだろ?」
俺は<導想魔手>を蹴りつつ、そう発言。
ソリアードは頷く。
「はい。
へぇ。
レネ&ソプラにベリーズが興味を持つかな。
俺もアイテムボックスには、環双絶命弓がある。
そのことは告げず、
「
「正解です――」
そう語る笑顔のソリアードは再び魔矢を射出――。
飛来する魔矢を見た狂言の魔剣師はニヤリと嗤う。
と、再び二振りの魔剣を振るった。
その振るわれた魔剣から迅速な勢いで迸った魔刃は宙空で魔矢とまた衝突。
ソリアードの魔矢は赤茶色の魔力光を発して散った。
その光景を見た魔弓ソリアードは眉間に皺を作り、
「――またか!」
と、叫ぶ。
先ほどあの狂言の魔剣師の魔刃を受けたから分かる。
ヘルメの魔法防御を得ていた沸騎士たちを魔界に送り返したのも納得だ。
クレインも語っていたが……。
あの狂言の魔剣師の魔剣が放つ魔刃は異常な重さだ。
勿論、ソリアードの能力と魔弓と魔矢も特別だと思う。
が、狂言の魔剣師は魔力操作の練度も巧みで強者だ。
あの魔剣も
「リュグインで放つ魔矢の<速連射>を――」
ソリアードは悔しそうでもあるが、なんか嬉しそうだ。
その狂言の魔剣師の背後に新手が出現した――。
新手は大柄の
当然、大柄だから狂言の魔剣師よりも魔素は大きい。
その
空戦魔導師たちか。
または空魔法士隊の隊長クラスか。
緊急幹部会に出席していない評議員たちの配下だろう。
まずは報告。
『俺と相棒とキサラが出た空域で敵と遭遇。相手は狂言の魔剣師カットマギー、
『此方も魔塔エセルハードで激闘が始まりました』
『ん、敵が多い』
『ペントハウスには侵入されてないけどガーデン内は激戦よ!』
『あ、血長耳の兵士がやられちゃった』
マジか。
俺は囮側か?
驚きつつ血文字を送る。
魔塔エセルハードの結界が破られたのか。
『俺たちは囮に掛かったってことか』
『囮ではないと思います。魔塔エセルハードを襲う攻撃は包括的。そのすべてが本気の部隊でしょう。ご主人様側の空域では、沙・羅・貂様たちが倒した敵もいますから』
確かに。
『人数的に俺たち側の空域が本命だったってこともありえるか』
『はい、一階と下の階層でも戦闘が始まったようです。ガルファさんに報告がきました』
地上のカフェは無事だろうか。
『分かった。報告は、よほどのことがない限りいい。ヴィーネたちは戦闘に集中してくれ』
『はい』
ヴィーネたちなら大丈夫だとは思う。
が、評議員たちの中に死者が出るかもな。
そう瞬時に思考する間に
「ゴォォォッ」
と咆哮し、独特の合図を送る。
狂言の魔剣師は魔剣を頭上に放って振り向く。
狂言の魔剣師は落下中の魔剣を掴みつつ上昇。
下の
と、直進してくる。
『閣下、あの
ヘルメが注目した
見た目は翼なしの獅子風のガーゴイル系モンスターに見える。
その背後に出現した空戦魔導師たちも強者だな。
前を飛翔する狂言の魔剣師は、更に急上昇。
上空から飛行速度を落としつつ俺たちを見やる。
と、二振りの魔剣を振るい複数の魔刃を寄越す――。
<鎖>と<
魔槍杖バルドークを風車の如く回して弾くか。
それか魔法でも試すかと思ったが――。
「ンン――」
「シュウヤ様とソリアード! 斜め上に出ます」
相棒とキサラが前に出た。
キサラは黒馬と魔獣が合わさった姿の相棒に跨がっている。
「――おう」
「はい。では、あの空飛ぶ
ソリアードは
「にゃおおぉ~」
血色の魔力が煌めくキサラを騎乗させたロロディーヌ。
前方に伸ばした触手の群れを鞭の如く振るい、狂言の魔剣師が放った無数の魔刃を弾き返した。
逆にブーメラン軌道で跳ね返ってきた魔刃を魔剣で弾く狂言の魔剣師は驚いたような面を見せていた。
さっき
「ふふ、ロターゼより凄い!」
「にゃおおお~」
「わたしも!」
神獣ロロディーヌの加速を得たキサラは迅速にダモアヌンの魔槍を振るった。
飛来した魔刃をダモアヌンの魔槍の矛が捉える。
見事に重そうな魔刃を火花を散らしながら切断――。
火花がキサラの衣装に燃え移ってしまうが、一瞬で炎は消えた。
キサラの衣装は修道服と西洋鎧がカスタマイズされた形。
黒騎士風のキサラ。
女性らしい胸甲が魅力的だ。
エロカッコイイ。
そのキサラはダモアヌンの魔槍と腕を見た。
重い魔刃をダモアヌンの魔槍ごと腕に感じたか。
キサラは気にせず――。
ダモアヌンの魔槍を回転させると、柄の孔を翳す。
翳した柄の孔からフィラメントの光線の群れを放出させて相棒ごと自身を覆うと、魔剣師が繰り出した魔刃を受け止めていった。
フィラメントが散って相棒に当たってしまう?
と思ったが杞憂だった。
フィラメントの光線の群れが俄に跳ねる。
波形を造り複数の魔刃を表面で転がしつつ外に弾いた。
それらフィラメント一つ一つの光線が強度を持ったピアノ線に見えた刹那――。
ソリアードの魔矢をハルバードで切断しまくる
《
《
《
更に、大きい紋章魔法陣が宙空に浮かぶ。
その紋章魔法陣から風の刃の群れが出た。
風の刃は空気の渦を無数に生み出す。
恐怖を感じる規模。
大魔術師アキエ・エニグマ的な魔法かよ。
『閣下、無詠唱の紋章魔法は《
『おう。分散して各個撃破と行こうか。苦戦したら直ぐに俺の左目に逃げてこい。ついでに誘う形でな』
『はい!
テンションが高いヘルメだ。
そのヘルメとハイタッチした気分となった。
と、左目から液体ヘルメが迸った。
常闇の水精霊ヘルメはいきなり両手を組む。
その指先に<珠瑠の紐>が絡むと、
「<闇水雹累波>――」
俺は心の中で『うひょっ』と驚き声が出た。
ヘルメの両手と指から群青色の閃光が迸る。
閃光は液体、または海だろうか。
ヘルメの両手を焦点に円錐状へと迸る群青色の液体は荒れ狂う海となった。
荒れ狂う海のような<闇水雹累波>は空戦魔導師たちの一部を飲み込む。
その大半は水に埋もれたと表現するに値するような死に方で墜落してゆく。
<闇水雹累波>の表面に月明かりが射す――。
水面と波頭も銀色に輝く<闇水雹累波>の海。
その<闇水雹累波>の中では無数の小さい闇蒼霊手ヴェニューとデボンチッチたちが泳いでいた。
周囲にも色取り取りなデボンチッチたちの幻影が出現した。
レアな光景かも知れない。
常闇の水精霊ヘルメの大魔法とも呼ぶべき能力か。
しかし空戦魔導師たちの一部には防御魔法を駆使して退くことに成功している者もいた。
そして、<闇水雹累波>を避けていた空戦魔導師はヘルメの存在を見て、使役している俺のほうが脅威と認識したのか――。
《
即座に魔槍杖バルドークを振るった。
《
<導想魔手>を蹴って位置を変えつつ――。
<鎖>と<
迎撃に成功――。
即座に《
一部の空域を占拠する勢いの《
俺の《
その空戦魔導師を蜂の巣にして倒した。
次に飛来してきたのは光る魔刃――。
風系か――再び足場の<導想魔手>を蹴った。
――風系の光る魔刃は追尾してきた――。
急ぎ頭部を傾けた。
《
風刃だから《
風刃、風切のエアカッターとかか?
一級魔術師だったゾル・ギュスターブを思い出す。
その風刃の光る魔刃に――。
<
豪快に破壊。
狂言の魔剣師が放った魔刃と比べると明らかに質が落ちる。
さて、お返しだ――。
狙いは《
《
が、その空戦魔導師は《
名の知らぬ空戦魔導師たちの一人。
強くて当たり前か。
空の戦いの専門家だ――。
<神剣・三叉法具サラテン>の攻撃を掻い潜ってきた相手でもある。
きっと魔法使い系の複数の戦闘職業が融合している方々なんだろう。
ま、それは俺たちにも言えること――。
その空戦魔導師は雷魔法を繰り出してきた。
雷球のようなモノが一カ所に集結しつつ幾重にも絡まった稲妻が放射状に宙空に迸っていた。
その雷魔法が俺に迫る――。
少し怖い。
が、その雷魔法に向けて――。
<
雷魔法の起点的な雷球を<
よっしゃ――。
そのまま背後の様々な魔法を放った空戦魔導師を貫いた<
空戦魔導師は胴体に風穴が空いた。
穴が空いた防護服が燃える。
と、防護服ごと体が爆発して空戦魔導師は散った。
<導想魔手>を蹴って回転しながら戦場の夜空を把握――。
背後の魔塔エセルハードが小さく見える。
その周囲で幾つもの爆発と魔法の火花が見えた。
皆、がんばれ。
右の上の相棒とキサラの動きを把握。
雷撃系の魔法がキサラたちを追尾していた。
フォローに<
が、俺のフォローは意味がなかった。
相棒の尻尾が少し膨れる。
と、黒毛から黒色と血色の稲妻的な魔力粒子が迸り雷撃魔法を打ち消した。
俺の<
相棒と親和性の高い魔力が<
――誤爆にはマジで気をつけないとな。
――俺は戦闘職業として魔法使い系は色々と身につけてはいるが、本格的に魔法使い&魔術師&空魔法士の訓練を受けたわけじゃない。
さて、他の空戦魔導師と空魔法士隊はまだいる。
俺がそう思っているだけで闇ギルドの凄腕かも知れないが――。
風の魔刃と火炎放射のような魔法攻撃を避けた。
再び<導想魔手>を蹴って宙空を跳び、位置を変えつつ――。
<生活魔法>で水を出し、《
同時に<魔闘術>を全身に纏った。
続けて深呼吸してから――。
<水神の呼び声>と<水月血闘法>を発動――。
<水月血闘法・鴉読>も同時にだ。
――水鴉が周囲を泳ぐ。
無数の水鴉がハルホンクの防護服だけでなく、魔槍杖バルドークにも付着。
嵐雲の形と似た穂先は、その水鴉を蒸発させる。
が、水蒸気の水鴉は嵐雲の穂先ごと魔槍杖バルドークに纏わり付いた。
魔槍杖バルドークは金属音を唸らせる。
羅の<瞑道・瞑水>的な感じだろうか。
不思議な水鴉と魔槍杖バルドークを見てから<導想魔手>を蹴った。
宙を迅速に駆ける。
両足に溜めた魔力の配分を変えた。
宙を上下左右の空間を活かすように跳ぶ。
「紅の疾風か! 動きが速まった!」
「霧を発する魔槍に水の鴉? 月に血だと?」
「――召喚憑依か? 召喚闘法か? しかし、あの速度は、大魔術師なのか!」
「網を張れよ! お前は空戦の偏差撃ちの名手だろう!」
「頼む、間接射撃のアゼボルン!」
「――うるせぇ! あの槍使いだけじゃねぇだろう」
「その通り――有効射程をこうも狂わせる相手は初めてだ! さっきの三人娘とは違う!」
「――大精霊と黒騎馬野郎と【血長耳】の魔弓に、皆が有能なんだよ!」
空戦魔導師か空魔法士隊の面々が文句をいいながら魔法を繰り出す。
空間の自由度を活かす。
飛翔速度のタイミングを変えた。
飛来する魔法の反撃を避けて、躱して、魔槍杖バルドークでぶっ叩く。
回避だけじゃない。
空戦魔導師に向けて前進――。
電光石火の勢いで槍圏内に入った。
その直後――。
魔槍杖バルドークで<水穿>を放った。
嵐雲の穂先から水鴉の形をした水蒸気が迸る。
――水鴉の幻影染みた水蒸気が目眩ましとなった。
「――な!?」
空戦魔導師の胸を穿った。
その右手ごと槍と化した魔槍杖バルドークを消去。
<導想魔手>を蹴って飛翔――。
――移り変わる夜空。
惑星セラの衛星は二つ。
大きい月の残骸と小さいお月様。
星々が彩る大宇宙が綺麗だ――。
そんな景色ばかり見ていられない。
他の空戦魔導師が放った風の魔法を視認。
同時に、相棒とキサラに向かう蛇的に伸びた火魔法を視認。
相棒は口を拡げつつ身を捻るや口を拡げた。
大きく拡げた口の中に濃い魔力の炎が集結。
そのまま神獣らしい紅蓮の炎を吐いた――。
紅蓮の炎は蛇のような王級規模の火魔法を逆に飲み込む。
夜空が夕焼けのようになった直後、空魔法士隊の隊長クラスを一人炭化させた。
槌の形をした土の魔法と風の弾丸系の強烈な魔法には、巨大な触手骨剣とダモアヌンの魔槍で対処していた。
毒の霧のような魔法には「にゃごぁぁぁぁ」と神獣ロロディーヌが大シャウト。
毒の霧を霧散させた。
すげぇな。
キサラも<魔謳>を披露。
ハスキーボイスの魔声が夜空に響く。
と、常闇の水精霊ヘルメも視認。
――え?
魔法攻撃を浴びてダメージを負っただと?
「ヘルメ!!」
体が欠けたように半身が液体状態。
<導想魔手>を蹴って急いで近寄った。
血のような水飛沫を発生させたヘルメ。
そのヘルメは不自然に氷礫を連発しつつ退いている。
「ふははは、魔力切れか」
「効いたぞ、効いた! やれ、やれ、やれ!!」
「ははは、精霊染みた魔法生物めが!」
「――大技を放った直後だからな」
「――追え!」
「チャンスだ! 魔法を喰らう度に液体が散って体が小さくなっている」
「弱点があるはずだ。コアを狙え!」
敵が調子に乗った。
隙を逃さず<
空魔法士隊か空戦魔導師か不明な男を<
追われていたヘルメに向かう。
が、ヘルメは俺をチラッと見て笑みを見せる――。
その笑みで悟った。
ヘルメは空戦魔導師と空魔法士隊の隊長クラスの攻撃を誘ったようだ。
追い詰められたふりをした常闇の水精霊ヘルメは身を翻しつつ液体から女体化。
体がぶれて霧状の体に変化を遂げる――。
その霧状のヘルメは、
「――<
空域に轟く魔声だ。
またも大技を放つ。
ヘルメの霧状の体から大きい波が発生。
波から群青色の<
その<
ヘルメはいつもの美しい姿に戻った。
いや、両腕が剣と槍に変化している。
右腕はグラディウス系の氷剣。
左腕はレジーの魔槍を魔改造した腕槍と化していた。
穂先は平三角の直槍。
柄の表面には箱船に乗った七福神的なヴェニューの模様が刻まれてあった。
俺の腰の魔軍夜行ノ槍業が震える。
が、無視だ。
そのヘルメは右腕剣と左腕槍を振るう。
直進するかと思ったが。
いきなり、巨大な氷壁が<
ヘルメの魔法か!
防御魔法の構築に失敗した空戦魔導師と空魔法士隊のメンバーは、その巨大な氷壁に挟まれて圧死。
しかし、素早く防御魔法を展開して巨大な氷壁を避けた空戦魔導師と空魔法士隊の隊長クラスがいた。
逃げた皆は大きな氷壁を見て驚愕している。
ヘルメが、生き残った空戦魔導師と空魔法士隊の隊長クラスを見ながら、
「<
と発言しつつ空戦魔導師たちに向けて前進。
長く太いグラディウス系の片腕を振るう。
魔槍の腕も振るった。
反応が遅れた空戦魔導師と空魔法士隊のメンバーを斬る。
一度に複数の空戦魔導師と空魔法士隊の面々を屠った。
常闇の水精霊ヘルメはマジ強い。
が、後続の空魔法士隊が、
「知能が高い水の大精霊を使役する槍使い……他にもいるってのに」
「冥王不喰のメイバルもマギーさんも苦戦中か」
「あの【血長耳】の魔弓野郎と、黒ペガサスに乗った騎士も強い」
「……【八指】のマロンさんのお陰で三人の神剣使いの追撃を避けられたと思ったら、今度はこいつらかよ」
「ひるむな、数では俺たちのほうが上!」
ヘルメは其奴らを無視。
氷礫の連続的な魔法を、触手骨剣を弾き続けている狂言の魔剣師に向けて放つ。
相棒は触手を引いた。
他の空戦魔導師と空魔法士隊の攻撃を避けるように飛翔。
キサラは相棒の機動力を活かすようにダモアヌンの魔槍を振るって空戦魔導師の放った火球をぶった切る。
「ンンン――」
神獣ロロディーヌの法螺貝のような喉の音。
相棒は、周囲の敵の注意を引き受けるつもりか。
斜め右上を飛翔していく。
その相棒に応えるつもりか、騎乗中のキサラは無手になって両手を拡げた。
キサラの動きに呼応する神獣ロロディーヌは速度を緩めた――。
――騎乗するキサラがカッコいい。
四天魔女ではなく本当に黒騎士キサラに見えた。
そのキサラは両手首の黒数珠に魔力を集結させると、俺を見やった。
鋭い眼差しだが、美しさに魅了される。
砂漠烏ノ型の兜に蒼い双眸が煌めく。
その蒼い双眸が宙に軌跡を描いた。
敵を見やったキサラ。
「――聞きなさい、闇ギルドと組んだ空戦魔導師と空魔法士隊たち!」
「黒い獣に乗っていたのは女だったのか!?」
「魔獣は知らねぇが、あの白い髪に修道服は、【天凛の月】の幹部。最近名を聞いた――」
「――【天凛の月】の四天魔女だ!」
キサラは空戦魔導師と空魔法士隊の面々を見て、
「今宵、神人を凌駕する光魔ルシヴァルの宗主様に手を出したことを後悔させてあげます――炯々なりや、伽藍鳥。ひゅうれいや――ひゅれいや、ひゅれいや――百鬼道ノ七なりや――伽藍鳥、ひゅうれいや――血ノ砂蝉なりや、百鬼血ノ八法。ひゅうれいや――」
超自然的な魔声が一帯に響く。
黒数珠から出た<血魔力>が質量の高そうな積層魔法陣を構成。
その積層魔法陣から、魔鳥が無数に出た――。
黒い煤と血色の魔鳥は螺旋回転しつつ空戦魔導師たちに向かう。
魔鳥の形はペリカンと似て非なるもの。
「――魔鳥だと?」
「防御を優先しろ!!」
空戦魔導師たちが口々に叫ぶ。
各自、防御魔法を展開。
空戦魔導師たちは、血の蝉も吐き出した魔鳥の攻撃を防いだように見えたが――。
防御魔法を打ち消された一人の空戦魔導師は全身に血の蝉の弾を浴びて体が穴だらけになる。
と、魔鳥に頭部を喰われて絶命。
「エペシュルア!!! クソがぁぁぁ」
仲間が死んだことで怒った空戦魔導師はキサラと相棒のあとを追う。
一方ソリアードは、狂言の魔剣師と
狂言の魔剣師と
ソリアードは複数の魔矢を周囲に浮かせつつ瞬時に魔矢を番える。
スキルか魔道具の力か不明だが……。
さすがは【血長耳】の最高幹部の一人。
そして、魔弓ソリアードという名を示すように――。
他の空戦魔導師の額を魔矢で射貫く。
同時に狂言の魔剣師と
強者に防御を優先させていた。
その凄腕射手のソリアードが、
「――チッ、動きが鈍ったが
確かに
魔矢が体の一部に刺さっているが、気にしていない。
飛来する魔矢をハルバードを振るって切断。
長柄の性能を活かす槍武術の技量は確かだ。
「――ソリアード。俺があの
「分かりました――」
俺は魔槍杖バルドークの角度を上向かせた。
<生活魔法>の水を足下に散らす。
《
<導想魔手>を蹴った。
――<超脳・朧水月>を活かす。
宙を滑るような機動の前傾姿勢で――。
「――ぐはは、俺に接近戦とは、あの槍使いなのか!」
嬉しそうに発言する
黒いハルバードに魔力を溜める。
更に、
土の装甲の一部が剥がれ落ちる。
機動力を高めた?
その
体毛を逆立てながら直進。
黒いハルバードを振るってきた。
受けずに斜め左に移動。
黒いハルバードの矛を避けた。
すると、黒いハルバードを持つ
更に、黒いハルバードの後方から闇色の魔力が迸る――。
推進力を得た黒いハルバードで俺の腹を狙ってきやがった。
その黒いハルバードの<刺突>系の突技を魔槍杖バルドークの柄で受けた。
魔槍杖の柄から紫色の火花が散る――。
火花が散る紫色の柄を握る右手を突き出した。
ぐわりと前に出た魔槍杖バルドークの石突の竜魔石が、下から
魔槍杖の石突の竜魔石を火花を散らしつつ口金で受けると、
「ぐぅぅ。なかなかだ!」
力の溢れる声を発しながら黒いハルバードを回す。
黒い穂先で俺の顔を撫で切るように回しつつ魔槍杖バルドークを引っ掛けるように弾く。魔槍杖を回し黒いハルバードの柄を押し流しつつ左手に移す。
同時に黒い穂先の刃を鼻先で避けた――。
その左手に持ち替えた魔槍杖バルドークで<刺突>を繰り出す。
狙いは腹と脇腹だったが
黒いハルバードを縦に構えて<刺突>を柄で防ぐと、その黒いハルバードを回転させて魔槍杖バルドークの嵐雲の穂先を横に押し出した。
俺は右に回りつつ魔槍杖を回す。
その右側から
が、穂先の薙ぎ払いは斜め下に出た黒いハルバードの石突と衝突。
――払いは弾かれた。
刹那、
体格を活かす右肩の打撃――。
俺の防御を崩すつもりか。
更に、短く持った黒いハルバードの柄の穂先で、俺の胸元を狙ってきた。
右足を退きつつ肩の打撃を魔槍杖バルドークの柄で受ける――。
肩の打撃は重い――が、同時に半身の姿勢に移行。
黒いハルバードの矛を魔槍杖バルドークの柄の表面に宛てがうように受けつつ魔槍杖バルドークを徐々に下側へと回し
竜魔石は獅子の毛並みを撫でただけ――。
俺は右手を突き出す要領で魔槍杖バルドークの竜魔石を突き出す――。
――裏拳の打撃を柄頭の竜魔石で往なした。
そのまま反撃の魔槍杖バルドークを上下に振るう。
が、横に避ける
大柄だが異常に素早い。
そんな素早い
足を退く。が、反対の右足の蹴りがきた。
その蹴りを避けたが、宙を跳ねるように側転しながらの蹴りには驚いた。
ムアイカッチューアのリズム。
しかも大柄の
魔槍杖バルドークで重い蹴りを受けつつ反撃の中段足刀を放つが、俺の蹴りを黒いハルバードで受けず、抱えて持とうしたから――左足の膝蹴りのモーションから短く持った魔槍杖バルドークの穂先で
嵐雲の穂先を受けずに退く。
が、素早く宙空に足場があるような機動で反転しつつ黒いハルバードで突いてきた。
そのまま数十合打ち合った――。
<刺突>と<水穿>に<闇穿>を混ぜつつ格闘のフェイクで押し込む。
が、
「グォァラァ!! 冥王不喰の誓いを破るぜぇぇ! ガルアァ!」
叫ぶと背中が盛り上がる。
闇色の魔力が全身から迸った。
その
極端に速度が増した。
急ぎ――血魔力<血道第三・開門>。
<
双眸が血走る
俺の<
口を開けて凶悪そうな歯牙が伸びる。
獅子の頭部が大きくなったように見えるぐらいの勢いで――。
俺の左肩と左腕の一部をハルホンクの防護服ごと喰らってきた。
痛ェェ――。
俺は右膝を上げて
宙に跳ね返った
身をくるくると回転させながら反転して、宙空で制止。
俺は身構えるように魔槍杖バルドークに盛大に魔力を込める。
魔槍杖バルドークからカカカッと不気味に嗤い声が響いた。
俺を凝視した
「槍使い! 魔人と似たお前の血肉を活かすぜぇ! <冥王豪拳>――」
<魔狂吼閃>は使わない。
<豪閃>だ。が、普通の<豪閃>でもない――。
<豪閃>の機動を活かす<投擲>――。
魔槍杖バルドークがぐるぐると旋回。
闇色の魔力の拳を薙ぎ払いながら
続けて<
しかしながら黒いハルバードの柄で急所をしっかりと防御。
<
刹那、サラテンたちの声が聞こえたような気がした。
<
そのまま魔槍杖バルドークを<
魔槍杖バルドークは<
刹那、<銀河騎士の絆>を心で感じた。
『……ふむ。素晴らしいサイキック。向上を図っていると分かるぞ。が、銀河騎士の槍武術も、また奥が深いのう……」
アオロ・トルーマーさんの渋い声が心の中に響く。
すると、
アイテムボックスから丸薬を取り出し、飲み込む。
瞬く間に体が回復し筋肉が盛り上がった。
魔力も得た
その超人的な
俄に<
魔槍杖バルドークを引き戻した。
「よもや、これを使うことになるとはな! くらえや、<冥王嬰倍刃>――」
――<闇穿・流転ノ炎渦>系か?
――<獄魔破豪>のような<魔槍技>か!
黒いハルバードと
このままだと、また俺の体に大穴が幾つも空く。
が、させやしない――柔を意識した。
水鴉を蒸発させ続ける魔槍杖バルドークの角度を変えた。
水蒸気の水鴉の魔力が覆う嵐雲の穂先で受け持つ――。
黒いハルバードの穂先と闇の刃の一部を受けた。
嵐雲の穂先から水鴉の形をした水蒸気が無数に散る。
バルの契約の証しも光った。
<旭日鴉の導き>か。
が、魔槍杖バルドークから受けた衝撃は凄まじい。
俺は足を動かすことなく衝撃で後方に三十メートルは飛んだか。
<冥王嬰倍刃>を実行中の
と、濃い眉毛を額のほうに引き上げつつ、
「――ぐっ、俺の<魔槍技>を受けきった……」
「――あぁ、不思議か?」
つばぜり合いに移行しつつ答えた。
「当然だ! しかも回復も早いうえに手応えもない? 風槍流とは思えない。まさか旭ノ魔拳抄の使い手か!?」
「いや、風槍流だ」
「……【天凛の月】の槍使いだな……名を聞こう」
黒いハルバードを押し込んでくる。
力のベクトルをずらして黒いハルバードの石突を繰り出してくる?
体から出た闇の刃を更に伸ばす?
と、先を読むが、
「……シュウヤだ。お前は?」
「冥王不喰のメイバルだ。で、シュウヤは八槍神王の上位なのか?」
メイバルは牙から血を垂らしながら語る。
不気味だが嗤っている。
「八槍神王の上位とは戦ったことがある。が、上位ではない、闘技場の試合には出たことがない」
「……ふざけた野郎だ。これほどの武を持ちながら天下覇塔の試合にも出てないのか」
「戦いは好きだが、俺も忙しいんだよ――」
と、言った直後に左手に神槍ガンジスを召喚。
左腕を少し動かしてフェイク。
俺の左腕と神槍ガンジスをまじまじと凝視する
体勢は崩れない。
気合いの漲る
「一槍は布石かよ、ますますおもしれぇ! 来いや、二槍使い!」
強引に黒いハルバード矛と体から出た闇の刃で魔槍杖バルドークを押し込もうとする。
その
「二槍使いか。一槍の風槍流があるからこその二槍流。そして、お前の豪の技は完璧に近いが……力だけが、すべてじゃないんだよ」
「なんだぁ? 吸血鬼系の種族とはいえ、所詮は人族だろうが! 力なら
「一槍の風槍流を舐めてもらっては困る――」
アキレス師匠から教わった風槍流『籠手返し』を意識しつつ――。
八槍神王第七位のリコの技術を応用――。
自然体とした手首の柔らかさを意識。
続けて、戦巫女イシュランと戦神ラマドシュラー様と一体化した時の感覚を強く想起。
魔槍杖バルドークを引き上下させる。
また上げた――。
――ゼロコンマ数秒も経たないうちに穂先と柄に連続して衝突した闇の刃と
「ぐぉ? なんだ、その槍技術は――」
同時に魔槍杖バルドークを真横に振るった。
直後――。
穂先の嵐雲に纏わり付いていた水鴉の水蒸気が血色の輝きを発しながら嵐雲の穂先に浸透。
すると、嵐雲の螺旋した穂先が解れるように紅斧刃の形に変化――。
烈火の如く燃えた紅斧刃が――。
「ぎゃぁぁぁ」
その血飛沫を吸い上げる魔槍杖バルドーク。
斬った
※ピコーン※<柔鬼紅刃>※スキル獲得※
スキルをゲット。
魔槍杖バルドークの穂先からドリルが巻くような音が響く。
元の穂先に戻る音か?
その魔槍杖バルドークを見ず、左腕を意識し肘を畳む。
そう、神槍ガンジスだ。
その左腕が握る神槍ガンジスで<光穿・雷不>を繰り出した――。
<光穿>の神槍ガンジスが
鎧ごと
その一弾指――。
八支刀の光が神槍ガンジスの後方に集結。
甲高い雷鳴を轟かせつつ
左耳がちぎれ飛ぶが、構わねぇ――。
雷鳴の音が一つに集約しつつ銀色染みた光を発した
夜空の彼方に消えた――。
よし、
耳をつんざくようだったが、それだけ強敵だったってことだ。
そして、あの黒いハルバードはセナアプアかハイム川だ。
仕方ない。
他にも敵はいる。
「おお! あの猛者を数合で仕留めるとは!」
「ふふ――」
「にゃおおおお~」
「シュウヤ様、あの防御陣を構築した空戦魔導師たちはわたしが――」
俺は頷く。
まだ残っている空戦魔導師と空魔法士隊がいる。
それらの敵は、キサラと相棒にソリアードの絶妙なフォロー攻撃で次々と倒れていった。
魔弓ソリアードのフォローはヴィーネの弓スキルを彷彿させる。
一方、狂言の魔剣師は――。
ヘルメの氷礫の連続的な魔法を二振りの魔剣で斬って対処。
宙を素早く駆けていた。
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