三百三十三話 再訪・城塞都市ヘカトレイル

 ◇◆◇◆



 【月の残骸】の新事務所は新街にある。

 新街は、またの名を貧民街ロウタウンという。

 しかし、新事務所の周辺は貧民街ロウタウンとは思えないほどの活況ぶりだ。


 城塞都市の広場と見間違うほどの人口規模だろう。


 木工品を売る鱗人カラムニアン

 毛皮を売るドワーフ。

 古代金貨専門の店舗を作ろうと目論む人族。

 エルフの金剛加工職人が金剛矢を売る。

 小柄獣人ノイルランナーが羊毛を運ぶ。

 猫獣人アンムルの武道家が力自慢をする。

 槍と剣を持った女鼬獣人グリリの戦士が笑う。

 

 カズンと瓜二つの豹獣人セバーカの槍使いが、向かいの三度笠をかぶる侍の虎獣人ラゼールを睨む。


 御者の虎獣人ラゼールが、『決闘か?』と言うようにそれを眺めながら馬車を動かしては、馬車の方向を狂わせて、向かいの馬車と衝突しそうになっていた。

 

 反対側を通る人族の冒険者はエルフの魔法使いの頬の印を指摘。


 小柄獣人ノイルランナーの剣士はそれを見上げながら『自分にもマークならある』と力強く宣言するや、自身の背負っていた箱を床に降ろす。と、背中から棒を伸ばす。

 棒から旗が展開された。

 旗には『天下無双』と文字が書かれていた。

 更に、


「南マハハイムぅ~のぅぅ、城塞都市ぃぃぃ~、ここで俺はぁぁぁぁ、一旗あげぇぇぇるんだぁぁぁ!」


 小柄獣人ノイルランナーらしくない歌うような大声を張り上げた。

 そして、箱を左右に広げて、意外にも、武器の路上販売を始めていた。


 そういった一風変わった小柄獣人ノイルランナーを含めて様々な商人、冒険者、武芸者たちがいる。


 皆、忙しなく、道具箱、化粧箱、毛皮、根野菜、油、玉、羊毛、魚、レーメの毛、肉、天然砂糖、塩、キュトンの実、クアリ豆、レーメ豆、クルックの実、魔煙草、等の各地から仕入れた商品を売っていた。


 中には品と品を交換する商売人もいる。

 まさに、新しい街を感じさせる雰囲気となっていた。


 この活況ぶりには主な原因が三つある。


 まず第一の理由。

 

 【月の残骸】が運営している船商会の存在だろう。

 今も、その船商会の男たちが、甲板の上で会話中だ。

 彫りの深い精悍な男が、


「しかし、海光都市からの直ルートがここまでスムーズに進むとは」


 と、魚人に話しかける。彼の名はゲットー。

 

 海賊【油貝ミグーン】に捕まり、他の船乗りたちと同様に営倉の中に閉じ込められていた。シュウヤたちが救った人材だ。

 ゲットーは救出された時……突拍子もなくオレンジ色の風を身に浴びたような不思議な縁をシュウヤから感じていた。が、ある理由から決して、口には出していなかった。

 因みにシュウヤは、ゲットーを初めて見たとき『クック船長』のような顔と評している。


 そのゲットーは【月の残骸】の黒猫号を預かる船長として辣腕を振るっているが、船仲間を含めて、上司の副長メルにも話していないことがあった。

 それは出身の霊霧島に関することだ。ハイム海の東にその島は存在する。


 その霊霧島に関することは一切口に出さないゲットーだったが……魚人海賊アッテンボローに、他の多数の海賊たちと、幻の銀船を巡った争いと資源の奪い合いの競争に参加した武勇伝と、ナナフシ団に所属していた頃のことを自慢気に船乗り仲間には話していた。


「……【血月海星連盟】の名は効果絶大ですぜ。群島諸国サザナミのハーミット団も避けて通る」


 魚人は連盟の名を免許状のように話す。


「確かにハイム川黄金ルートを巡る際は居心地が良すぎるぐらいだ。まるで国公認の十二大海賊団に所属している気分だな」

「ぐばば、船長、大きく出たなァ。さすがに、総長にも【大海賊私掠免許状】はないと思うぞ?」


 魚人が話す大海賊私掠免許状。

 それは国から正式に他国の船を襲ってもいいという許可が出たことを証明する正式な許可証だ。

 十二の有名な大海賊団は、それぞれ違う国と都市から許可証を貰い、他国の船を襲い襲われるといった争いを永らくハイム海とローデリア海を越えた大海原で続けていた。


「……そんなことはわかっている。しかしロックはいいのか? 昔の海賊団を裏切り、どちらかといえば、大陸の一地方、しかも陸がメインな【月の残骸】の配下だが……」

「いいんですよ、船長。なじみ深い海光都市には戻れていますから。それにそれよりも個人的に重要なことがあるので」

「そりゃなんだ?」

「……メル副長に惚れました」


 魚人ロックの言葉にゲットーは驚く。

 両肩を揺らし、大げさに左右へ腕を広げた。


「――副長に惚れただぁ? 最高幹部の首脳陣だぞ……よくもまぁ……」


 ゲットーは魚人ロックのもみあげから、鰓と角を見て哀れむ。


 副長の好いている方は、総長だ。

 俺を助けてくれた偉大な槍使い。

 この辺りじゃ珍しい平たい顔だが、整っているうえに腕っ節も強い。

 そんな総長にロック、お前が、魚人が、敵うわけもない。

 しかし……想うだけなら自由だ。


 大切な仕事の仲間でもある。


 一途な魚人の恋ぐらいは応援してやるか……。

 ペルネーテに寄港した時に、メル副長へとそれとなく飲み会の話を振ってみようか。


 船商会の対海賊船対策とでもいえば、メル副長もきてくれるはずだからな。

 ロックは魚人で種族が違うが、海光都市を含めた各地域での貿易業務、基本の船旅、船乗りとしての仕事をいつもがんばっている。船長として、その仕事ぶりには応えてやるさ。


 今後も……激しい海の大自然、モンスター、海賊が待ち受けているのだから。

 海神セピトーン様、黒猫号ともども、ロックの恋愛運も、よろしくお願いしますよ。


 と、船長として表情を厳しくしながらも、海神セピトーンへ祈りを捧げていた。



 ◇◇◇◇



 第二の理由は領主シャルドネだ。

 彼女は領主館の一室で白髪の老人サメから報告を受けていた。


 正方形の大きい部屋。

 暖炉の中に青紫色の長方形水晶がくべてある。

 青白い色とすみれ色の炎が、炉の上で踊るようにも見え、室内を艶色に照らす。

 特別な香りが部屋中を満たし、シャルドネの専用部屋に似合う奥ゆかしい雰囲気を作りだしていた。


「あの場所が金鉱を生むとは思わなかったですわね……」

「はい」

「月と血に乗じて、わたしも税収が低い貧民街ロウタウンの改革に乗りだそうかしら……」

「いい考えかと。レフテン側の南部、サージバルト領に大商会の投資話が浮上しているようですし、陸路の街道整備の名目でヘカトレイル後援会を中心に、中小の各商会にばらまきを行い街道の活性化を促しましょう」


 シャルドネは、サメの意見に頷きながら、新しく側近に加えた人材を見る。


『彼を買って正解ですわね。黒き戦神ことゲンザブロウ・ミカミ……彼の意見を取り入れたら、早速商人たちとの交流が増えたのは驚きました』


「あなた、過去、都市計画の仕事でもしていたのかしら?」

「……閣下、わたしの能力スキル名と同じの座右の銘でもある『拳々服膺』の言葉通りに実践したまで……たまたま『利潤の最適化の技法』を知っていただけのことです。それに、『無から生じるのは無だけ』といいますから、元からこのヘカトレイルには素養があったのですよ」


 ゲンザブロウ・ミカミは、鋭い視線だが、眼鏡が似合いそうな涼しげな表情を浮かべて語る。


「不健康に見えますが、さすがは地下オークションの人材ですわね……」

「買って頂き、恐悦至極……」


 ゲンザブロウ・ミカミは、鋼のような視線は変えず、日本人らしく頭を下げていた。

 その所作は、日本人その者を体現したような隙のないお辞儀だ。


 シャルドネは目を細め……。


『……無理をして参加を決めて大正解ですわ! 頭が切れて能力の高い人材は、お得感ばりばりですの! ムサカを落とすための、戦争の切り込み隊を任せようと考えていましたが、サメの防諜組織の小隊を任せても結果を残しそうですわね』


 と、ロールを帯びた金髪を指に巻き付けながら考えていた。



 ◇◇◇◇



 そして、第三の理由が、【月の残骸】と【白鯨の血長耳】の同盟効果だろう。

 城塞都市ヘカトレイルの裏社会を支配していた【血長耳】と、迷宮都市ペルネーテの裏社会を支配していた【月の残骸】の同盟。


 二つの闇ギルドの同盟は、その力関係から闇社会に【血月布武】と呼ばれるようになる。

 ヘカトレイルの他の闇ギルドは脅威に感じていた。

 そこに、【ノクターの誓い】を潰したのは槍使いという怪情報も加わった。更に【血長耳】の大幹部の戦闘妖精クリドススと風のレドンドの両名も、この【月の残骸】の事務所に出入りしていると噂になると……この地で成り上がろうという野心を持つ小規模な闇ギルドたちは、血と月の連携が本格的に始まると恐怖した。

 中には、有名な槍使いと戦って倒しては名を上げたいと考えている強者もいたりするが……。

 しかし、最近は、「俺があの槍使いだ」や、「いや、俺が黒狼連れの槍使いだ」と、勝手に名乗りを上げる偽者が次々と出回り、いったい、だれが本物の槍使いか?


 そんな謎の争いも、とある場所で生まれていた。

 中には本物の強者の槍使いも交ざっているお陰で、余計、混乱に拍車が掛かっていく。


 そんな彼らは【月の残骸】に、肩書きの【八頭輝】以外にも、新しい名を付けていた。


 ……影翼旅団を退けた天凛堂の勝者、【天凛の月】と。


 そして、この残骸に変わる新しい【天凜の月】の、または【月の残骸】の新しい事務所に、この間まで敵対していた人物が……。

 何食わぬ顔を浮かべながら受付の美しい女性と会話を続けていた。



 ◇◇◇◇



「チェリは、あの槍使いの部下なんだァ?」


 特徴的な声音で喋る男。

 ぼさぼさな髪だが、その毛の一本一本がチェリの顔に絡むように動く。

 魔力が宿る毛、<導魔術>系の技術が必要な魔力の質。

 それは裂帛の気魄が髪の毛に宿っているように感じさせる爽やかなモノだが、チェリには不快でしかなかった。


「レンショウさん。さっきから、この方が、妙に馴れ馴れしいのですが……」


 酌婦としての経験を持つチェリであったが、ここまで初対面で馴れ馴れしい相手はさすがに初めてであった。

 ボディータッチをするように髪の毛のような細いモノに全身が弄られているような感覚を受けて、さらに嫌悪感を強く感じて、細い眉を中央に寄せている。


「彼、カリィは確かに怪しい。が、現時点でフリーの殺し屋としてはヘカトレイルで随一だと言えるほどの実力者だぞ」

「……持ち上げるねぇ。君も戦ったらナカナカ強そうだ。ゾクゾクする経験ができそう……」

「レンショウさん、本当に・・・大丈夫なのですか?」


 チェリは茶色の虹彩を濃く滲ませるように眉間に皺を作る。


「まぁそう睨むな……【ロゼンの戒】で仕入れている公爵側の情報を手土産に、【月の残骸】への売り込みをかけるうえでの用心棒だ」

「ボク、用心棒~♪ でも、君もいい性格をしているねぇ、裏切るなんて」

「なんだと?」


 レンショウは不機嫌になったのか、ガスマスクのような魔道具の下部から黒色の薄い防護膜を首下に展開しながら袖口を見せるように腕を持ち上げる。


「その袖口から微かに漏れている……美味しそうな魔力からして、特殊な暗器使い?」


 カリィは、仲間に暗器使いがいたことを思い出しながら語る。

 指摘を受けたレンショウは、『まだ、風吹雪の技を見せていないが、どういうをしてやがる……』と内心焦りを感じながらも、一呼吸を入れてからクールな顔つきで、冷静になるよう努めながら口を動かした。


「……俺が、金を払う立場だと忘れたのか?」

「いやいや、忘れてないよ♪」


 カリィは両目を細めて『仕事が終わったら彼と戦おうかな? ボクにプラスかも。お金さえ稼げれば、依頼人が死んでもアルフォードは文句を言わないだろうし』と考えていた。


「なら口出し無用。それに裏切りなんて日常茶飯事だろうが」

「そうだねぇ」

「……俺は勝ち馬に乗りたいだけだ。もうじき古都市ムサカは本格的な戦争状態と化す。その情報は聞いただろう?」

「聞いたサ……オセベリア軍がハイム川を越えたとね」


 レンショウはカリィの言葉に頷く。


「そこでだ……チェリ」


 レンショウはチェリを見つめながら語る。


「昔のよしみで、月の残骸の上層部へと連絡を取って欲しいのだが」

「……連絡を……まだこの事務所は設立したばかりです。わたしもただの支部員でしかないので、上層部といわれても、困ります」


 チェリは、事務所の奥で休む【血長耳】の幹部たちを見つめていた。

 

 それは『あの方々ならば上層部といえるかも?』と暗示している視線でもあった。


「まぁいい。血長耳たちにも挨拶をしてこよう」

「……わたしはここでの仕事がありますから」

「了解した」


 レンショウはチェリから視線を逸らし、隣で立つカリィに目配せしつつ革の前掛けを引っ張って立ち上がり、事務所の奥で愉しげに話すクリドススと思慮深げに話をしているレドンドに近寄っていった。


 チェリは、その様子を窺いながら……。


 大丈夫よね?

 ここで争いは起きない?

 もう……止めたくなってきたかも。

 給金が良くても、こう緊張感のある仕事だと辛い……。

 前の盗賊ギルドの仕事は単に情報を流すぐらいだったから楽だったけど……。


 この【月の残骸】の仕事、辞めようかなぁ。

 でも、キッシュの新しい故郷作りに協力したいし……。

 農場で大変なことがあったから、少しでも資金作りをがんばらないと……うん。もう少しだけ、【月の残骸】の事務員をがんばっていこう。

 でも、昔の上司であるレンショウさんが現れるなんて……。

 しかも、元部下のわたしに、強そうな彼が頭を下げてくるなんて思いもしなかった。


 でも、あのカリィさんという人は……目が怖い。

 何か不気味であまり好きじゃないなぁ、と後ろ姿を見ていると……。


 突然振り向いてきたカリィ。


 ニコッと微笑んできたカリィの悪態笑顔カーススマイル

 チェリには、その表情と胸元に抱える鞍敷が微妙に絡まって見えた。


 余計に寒気を覚えるチェリであった。



 ◇◆◇◆



 ノーラと幸せな一夜を過ごした次の日。

 視界に小型のヘルメがぷかぷかと浮かぶ。


 左目に格納したヘルメは、ノーラとのえっちな夜のことは指摘してこない。

 ゆったりとしたペースで黒猫ロロと一緒に歩く。


 【月の残骸】の新事務所はこっちかな……。

 人々が行き交っていて騒がしい。

 焼き団子を売っている屋台もある。


 発展しているし。

 因みに宿で別れたノーラにはペルネーテの自宅と【月の残骸】の場所を教えてある。


 その際「送るよ」といったが……。

 ノーラは、


「……嬉しいけど、その優しさは毒よ?」

「すまん」

「ふふ、そんな顔をしないで……わたしだって……ううん。それじゃ、妹がいるペルネーテへと向かう前に、整理しなきゃいけないことがあるから、じゃあね」


 朝早くに起きたノーラは名残惜しいといった顔色だったが……。

 悩ましい体を隠すように速やかに着替えを終えていた。

 ノーラは部屋に戻ってきた黒猫ロロが足下に来たので、笑顔となってから、その黒猫ロロを持ち上げて、腹に顔を埋めて猫吸いを行うと、相棒を赤ちゃんでも抱くように、胸元に抱えて、「ロロちゃん~可愛いでちゅね~、おめめがつぶらで、ちゅっ」と鼻先にキス、黒猫ロロは瞼を閉じて開くと親愛の情を示す。

 そんな黒猫ロロとのコミュニケーションを行ったノーラは、相棒を離すと、優美な足取りで扉を開ける。

 廊下から射すランプの明かりが彼女と重なり鏡のように眩しく見えた。

 ノーラは振り返ると、笑顔を見せてくれた。

 細い片眉を下げてウィンクを寄越し、さっと身を翻す。

 去り際もいい女だった……。

 そんなノーラの去り際を思い出しつつ……騒がしい新街を歩いていると……。


 ――【月の残骸】の事務所を発見。

 新しい事務所の建物だが、一発で分かった。

 

 真新しい看板。

 月の形に、黒猫。


 あの月は、ペルネーテの【迷宮の宿り月】の地下室の入り口の厚い扉の表面を飾っていた月のマークだろう。


 宅配便ではないが、分かりやすい。


 そして、正面の戸は大きく開かれてあった。

 楽市楽座で商売の自由が保障されているように……建物の入り口から様々な人材たちが出入りを繰り返している。


 よーし、あの中に入って、まずは挨拶だ。

 社長やCEOが一般社員になりすます、アンダーカバー的な気分で、入り口から足を踏み入れる。


 胸を張って事務所に入るなり――。

 サイプレス系の香りが漂ってきた。

 鼻孔から入った香りが臓腑に染みこむ……。


 宿を出る前に<精霊珠想>の訓練を兼ねた水の膜でヘルメの液体で体を包んでもらって体の掃除をしたんだが……このいい匂いを得て、なんとなく体が浄化されたようないい気分となった。


 そんないい気分で――。

 ふがふがと黒猫ロロのように鼻を動かしつつ大手を振って茶色の床の上を歩いた。


 【月の残骸】の事務所は混雑していた。

 一見すると、冒険者ギルドと間違えそうなぐらいに色々な種族の方が存在した。

 

 皆、仕事で忙しそう。


 刈り上げの髪形と濃い髭が特徴の狩人さんもいる。

 狩人は肉屋さんか。

 

 その狩人でもある肉屋の人族は、羊肉を麻袋から取り出し、机に肉を乗せていた。

 そして、机にある書類に羽根ペンで羊肉の数を書いている。


 その肉屋の隣では、重そうな革細工を床に下ろしているドワーフたちがいた。


「【フェニムル村】の商売が儲かるらしい」


 と、轆轤魔鉱石の転売話を繰り広げていた。

 地名に少し興味を抱く。

 ここは闇ギルドというより、商会の事務所にしか見えない。


 ま、大商会、商会を兼ねるのが当たり前らしいからな。


 そんな噂話を耳にしつつ……。

 カウンターに近寄ると、綺麗な女性と目が合った。

 

 ん? そばかすの頬。

 

 ああああぁっ、チェリだ!


「……チェリか?」

「え、あっ、シュウヤさん!?」


 チェリがそう発言した途端――。

 【月の残骸】の新事務所は静まり返った。


 職員たちは俺を中心に左右に分かれた。

 それはモーゼが海を割ったかの勢いだ。


 そして、集団心理という奴か?

 付和雷同の心理か、馬革細工の商人や、大量の綿の実を持つ商人たちも、慌てた様子で端に移動してしまった。


 黒猫ロロも皆が離れて、


「ンンン、にゃ~?」


 と鳴いた。

 相棒の声的に『どうしたにゃ~』という意味だとすぐに分かる。

 

 すると、受付の奥から妙な粘り気のある視線を感じた。

 チェリを見ていたい。

 チェリと話をしたいが……。

 思わず、奥からくる嫌な視線と目を合わせてしまった。


 ……マジか。一気にメランコリックな気分だ。

 なんで【影翼旅団】のカリィがいるんだよ。


 ヴェロニカとメルが戦ったカリィ。

 しかも……クリドススとレドンドさんも傍にいるじゃないか。


 他にもガスマスク系の防具マスクを装着した怪しい男もいた。しかし、戦いの雰囲気ではないから、少し混乱。


 が、まずはチェリだろう。


「チェリ、元気そうでよかった。メルから名を聞いて、まさかとは思っていたが、本当にチェリだったとは」

「はい! 勿論元気です。シュウヤさん……」


 チェリはひまわりのような明るい笑みを浮かべてくれた。

 しかし、昔の、酒場での一件を急に思い出したらしい。


 そばかすの部分を朱色に染めつつ視線を斜め下に逸らす。

 細い顎先を斜め下に向けるチェリだ。

 俺も自然と斜め……というか、彼女の豊かな双丘さんを見つめてしまう。


 うむ! 素晴らしい巨乳さんである。

 前と変わらない。

 あの巨乳さんと戯れた昔の俺……。

 

 なんか、むかついてきた。

 あんな素晴らしい胸を!

 昔の俺は、なんてエロいんだ!


 とアホなことを考えながら、


「……はは、ところで、キッシュはどうしている?」


 俺の言葉を受けたチェリ。

 俺の面を見て、オカシナことを考えていたと察知したようだ。


 可愛く微笑むと、


「あ、気になりますよね。キッシュはヘカトレイルにはいません。聞いていると思いますが、南のヒノ村を越えた【バルドーク樹海】の先の【樹海】にいます。その【樹海】の山奥にはキッシュの故郷があるんですが……今、そこで新しい村を、故郷を再建しようと奮闘中。だから、わたしもヒノ村の子供たちと協力して小さい農場を作ったり、レーメ、羊を少数ですが飼育を始めたり、良網草ヨイモイの栽培もがんばろうとしていたのですが……」


 何かあったのか? 

 チェリは顔色を悪くした。


「どうしたんだ」

「畑が荒れて家畜が少しずついなくなる事件が続いています」

「続いているということは現在進行形? モンスターか泥棒か、めどはついている?」

「はい、モンスターだと思います。大きい足跡がありましたから。しかし、そんな足跡を追っていた冒険者経験のある子供たちが追いかけたまま行方不明になってしまったのです……」

「ン、にゃぁ」


 黒猫ロロはヘカトレイルでは子供たちと遊んでいた。

 昔を思い出して『助けるニャ~』と鳴いているのかもしれない。

 あのキッシュの側にいた子供たちだったら……。


「……そりゃ大変だ」

「はい、キッシュはすぐに子供たちの行方を追い、調べました。ですが、モンスターの巣はオークを含めて無数にあります。ヒノ村と違って、キッシュの新しい拠点は樹海の一部ですし、バルドーク山から竜、有名なヴァライダス蠱宮から蟻、等……結局、子供たちの行方はわからずじまい。だから冒険者を雇おうとしましたが、場所も秘境……色々と村の再建にお金をかけたばかりで……雇えない状況なのです。子供たちは行方不明のままで、キッシュは責任を感じてしまい……」


 おいおい、まじかよ。


「そうだったのか……もしや、チェリはその資金作りのためにここで働こうと?」

「そうです。【月の残骸】の副長様からのスカウトですが、『貴女、盗賊ギルド【ロゼンの戒】の情報員ね? そこのお給金の倍を出すから、貴女の才能と美貌を提供してくれないかしら?』と、わたしの情報をどういうルートで入手したのか分からないのですが、上手く口説かれまして。ちょうど、今話したように、わたしもお金が必要だったこともあり……」

「そっか、メルらしい。その場に四角い顔のエルフと短い黒髪の刀を持った美人さんがいたりした?」

「はい。後ほど、大幹部の方々と聞いてびっくりしました。というか……やっぱり、シュウヤさんは……」


 チェリは、周りから注目を浴びていることに気付くと、小さくかぶりを振る。


 そわそわしながら、


「……この【月の残骸】の総長様ですよね?」

「そうだな」

「……あの、酒場でのことは……」


 俺が上司であることを急に意識したようだ。

 か細い腕と、何度もキスを重ねた小さい唇を震わせるチェリ。


 不安に思ったのかな。

 大丈夫なのに……。


 その彼女の不安を、払拭させようと、チェリの手の上に優しく手の内を重ねた。


「――勿論、大切な思い出だ」

「……嬉しい」


 チェリ……かわいい女性だ。


「槍使いさん? いいムードだけど~、ちょっといいかな?」

「ワタシも用事があるのですが」

「お前より、俺のほうが用事がある……」


 特徴のある声たちだ。

 

 しかし、俺とチェリの甘いムードは壊れてしまった。そんな声たちを本気で無視しようかと悩む。


 が、ここは【月の残骸】の事務所。


 そして、俺は一応、総長だ。

 ……仕方ない。


 ――と、その声の主たちに視線を向ける。


 カリィとガスマスク男。

 クリドススとレドンドさんが揃って机の横にいた。


 チェリは空気を読んで、


「それじゃ、シュウヤさん……」


 そう小声で呟きながら、俺の手の甲を厭らしく指で触りつつ離れていった。

 さすが、元酌婦……。


 さりげなく行う、エロアピールが頗る上手い。

 そんな思いは微塵も表情に出さず――。


 カリィと目を合わせた。


「……カリィ、よくもまぁいけしゃあしゃあと面をだせたな? メルに毒を浴びせたことは忘れていないぞ……」


 メルはヴェロニカがいなければ死んでいた。


「……怖い顔を向けないでほしいなァ」

「おい、カリィ。槍使いと面識があるとは一言も……」


 カリィは武威、気を張り巡らせるように髪の毛を逆立てていた。


 そして、股間をアピールするように変態立ち・・を行っている。


『あのポーズは生意気ですね、尻に氷の杭を打ち込んで、痛い説教をしましょうか』

『……いいぞ』

『え……』


 ヘルメは俺にツッコミを期待していたようだ。

 すんなり同意したことに、驚いたのかデフォルメのまま回転しつつ視界に現れる。


 お尻をぷるんぷるんと震わせていた。


 そして、ネオンにビューティフルな塊を思い出させるぐらいにそのお尻が強く輝く。


 思わず、※ピコーン※輝く尻※

 と、スキルを獲得するような気分になった。


 俺が輝く尻を獲得してどうするというツッコミは、だれからも来ない。


 そして、その『お前がお尻を震わせてどうする』といったような華麗なツッコミが、自然と幻影の精霊ヘルメに入ったようにヘルメの尻の動きが停まった。


 が、思わず注視した精霊ちゃんより、カリィの連れのほうだな。


 ガスマスクの男……隙がない。

 かなり腕の立つ男と判断。


 あのガスマスク型の魔道具にはどんな効果が……殺菌効果、毒ガスを防ぐとかではないだろう。

 

 首筋も覆われているし、和の甲冑の面頬のように首の防具も兼ねているのかもしれない。


 妙にカッコいい。

 ほしいかもしれない。


「……あの槍使いが怒っていますから……レドンド」

「あぁ……」


 俺のことを知るクリドススとレドンドさんは各自それぞれのスタイルを維持しながら後退していた。

 天凛堂の戦いを見ていた彼女と彼ならば当然の反応だろう。


 さて、あえて……。

 無視したが、やはり問題はカリィだ。

 戦うなら外だな……あそこを潰してやろう。


 誘導するか。


「……怖い顔は当たり前だろうが。戦いに来たという認識でいいんだな? 戦うなら外でやろうか?」

「……いやいや、戦いに来たンじゃナイ。ボクはもう旅団じゃナイよ。今は用心棒だし、お金稼ぎをがんばっている最中なのサ。この間の戦いだって、ボクの命が懸かっていたンだよ。逃げるために必死だったのサ。だから、そのメルという人にも謝っておいてよ――」


 ――ふざけるな。

 という思いで、短剣を<投擲>――。

 が、カリィは瞬時に<導魔術>系の魔力の糸を目の前に展開。


 俺の<投擲>した古竜の短剣を、その<導魔術>系の魔力の糸で掴んで防いでいた。


「……」


 カリィは防いだ短剣を掴むと、その刃を舐めていく。


「――どう? ボクも成長したんだァ。あ、これ、返すね――」

「……舐めるな」


 律儀に返してきた古竜の短剣。

 本当に戦う気はないらしい。

 涼しげな表情だし、股間は見ないが。

 舐めた短剣は嫌だが……それだけでバルドーク製の短剣を捨てるのはもったいない。

 ということで、布で入念に刃を拭き取る。


「……あ、ごめん、舐めるのは癖なのサ」


 謝られると反応に困る。


「まぁいい、拭いたからな」

「よかった。で、分かってくれたかな。ボクは死にたくないから戦わないよ? この間も仲間の戦いだったから、ボクは参加したまで。そして、生き残るために、ある工夫をして表に出ないようにしたんだから」


 だからか。

 それで地下にいて表に出ていなかったんだな。

 そして、この余裕は、カリィなりに、俺の心理を分析した上でのスタンスか。


 戦いになっても別にいいという、刹那生滅的な生き方。

 狂った自由さと武侠の心か。

 その狂っているが、狂っていない、武と狂気の狭間の心意気は分かるような気がする。そのことは告げず……。


 カリィの表情の裏の感情を突くように、


「……なら、なんでここに来たんだ。隣の男関係か?」

「そうサ。それに、槍使いとの戦いはボクに取って宝物・・なんだァ。だから、変に聞こえるかもしれないけど、この間のことは許して欲しい……」

「許すわけないだろう。だが、戦わないのなら追うつもりはない」

「話はついたかな……【月の残骸】の総長様。カリィのことは改めて謝罪しよう。済まなかった」


 ガスマスク男が割って入ってきた。

 彼に謝られても……。


「いえ。ところで、お名前は……」

「そうですね、自己紹介が遅れました。わたしの名はレンショウ。元は【ロゼンの戒】ヘカトレイル支部で工作の一部を請け負っていた者です」


 聞いたことがあるぞ。


「【ロゼンの戒】のメンバー。その名、前にも聞いたことがありますね。鴉という名は?」

「……鴉をしっているのですか? いやはや顔が広い。さすがは総長様です」


 カルードと旅をしている女性だ。

 ユイと合流できたかな。

 黒猫ロロではないのだし、まだ早いか。いや、ルシヴァルだからもう合流したかな。

 血文字で連絡がないから分からない。

 一方でヴィーネからは『寂しい』と何回も愚痴の血文字が……。

 彼女の修行が心配になったが、ま、大丈夫だろう。


 脱線したが、レンショウさんの渋いガスマスク型の魔道具に視線が向いてしまう。

 鑑定したら、超古代文明の技術が使われていた、と、分かる代物かもしれない。


 いや、欲しいアイテムなんかよりキッシュだ。

 はやる気持ちを抑えて、


「……知り合いです。鴉さんと面識があるのですか?」

「……数度だけ会ったことがありますが、詳しくはしりません。サーマリアでの仕事ぶりは優秀だったと聞いております」


 盗賊ギルドの仕事はメリッサから聞いたことがある。

 色々と多岐に及んでいるらしい。

 その仕事ぶりが優秀なら<従者長>のカルードも自分の<従者>に、血の家族に、鴉さんを迎えるかもしれないな。


「そうですか。しかし、レンショウさん、話の途中で悪いのですが、用事がありまして。手短に用件を済ませたいのですが」


 そう、俺は正直、キッシュの下に向かいたくてしょうがなかった。

 彼女の辛そうな表情が脳裏に浮かんだだけで、辛くなってくる。


 どうにかしてあげたい。


「……ここで対サーマリア戦線の戦力に雇ってもらえないかと……」

「勘違いしているようですが、俺たちは国の出先機関ではないです。血長耳の盟約は知りませんが、戦争で美味い汁を吸いたければ、ここの領主に挨拶したほうが早いと思いますよ。戦力を増やしているようですからね」

「……」


 俺の言葉を受けたレンショウは、逡巡。

 また、ガスマスク型の魔道具が少し形を変えて渋くなると、少し離れたところで見ていたクリドススに視線を送る。


「ワタシたち血長耳は、今回の仕事にはノータッチ。女侯爵様は独自の戦力網で、快進撃を続けているようですネ」

「そうですか、【血月布武】はオセベリアとサーマリアの紛争に手を出さずでしたか……」


 彼はクリドススの言葉に頷きながら、カリィに目配せする。

 まるで、血月が出ないならば、チャンスがあるぞ、という顔付きだ。


 レンショウは微笑むと、視線を向けてきた。


「……分かりました。では失礼します」


 丁寧に頭を下げると、レンショウは、カリィと再び目を合わせて、


「カリィ、出るぞ」

「いいのかい? ここに所属したほうが勝ち馬だと思うけど」

「お前はそれでいいのか? 話を聞いていただろう」


 カリィは嬉し気に細い眼を輝かせて、


「――女侯爵♪」

「そういうことだ、行くぞ」

「お金は大事♪」


 カリィは喋りは言わずもがな、独特の歩法で、レンショウの後ろをついていく。

 その歩き方でよくわかった。


 凄まじく強くなっていると。


 細かな体重移動、足先の動き、魔力操作、<導魔術>と<魔闘術>の兼ね合い……。

 正直、武術を学ぶ相手として、疼く相手だが、股間はもう見たくない。

 だから、バイバイだ。


 レンショウとカリィが去ると、レドンドさんとクリドススが近寄ってきた。


「ワタシは、急ぎセナアプアに帰ります。詳しくはレドンドから話を聞いてやってください」


 クリドススは忙しいらしい。

 レドンドさんのほうは俺に何の用だろう。


「レドンドさんですか、俺に何の用でしょう……」

「あ、その前にウチの総長から言づてがありました。話しておかないとワタシ、殺されてしまいます」


 スキップしていたクリドススが振り向きながら語っていた。


「レザライサが、何だって?」

「……魔窟のセナアプアに来い。専門の宿で色々・・用意して待っている。お前が興味を持ったエセル界に連れていってやろう。お前なら空旅の専用装備も要らないだろうからな? と、笑って、珍しく怖い顔をせずに、女の表情で訴えてきました」


 思わず抱き合ったレザライサを思い出した。

 俺の腰使いが気に入ったと厭らしい表情で語る、あのハートマークの映った瞳は忘れられない。


「……なるほど、いつか向かうかもしれない。色々・・は楽しみだ」

「……正確に伝えておきます、では――」


 戦闘妖精と通り名があるだけに、足に羽根が生えたような機動で、入り口から消えるクリドスス。


「シュウヤさん、いいですかな?」

「どうぞ」


 畏まったレドンドさん。

 イケメンのエルフの剣士さんなだけに、周りの女性から視線が集まっていた。


「わたしの用件は、マハハイム山脈地下の探索です。ベファリッツ大帝国の遺産、地下回廊の探索の手伝いをお願いしたく……」


 また興味深いことを……。

 だが、まずはキッシュを優先する。


「それは興味深い。ですが、俺も今は用事があります」

「大丈夫です。総長を含めて、わたしたちはエルフですから、急いでいません」

「そうですか。なら考えておくとだけ。まだ戻ってきてから、ヘカトレイルの冒険者ギルドにも顔を出していないですから」

「了解しました。シュウヤさんが前向きに考えてくださるだけでも嬉しいですよ。広大な地下世界には無数のモンスターが犇めいていますからね。魔界、地下世界……」


 わくわくする。

 だが、師匠のところにも、いずれは帰る予定だ。

 ミスティたちの研究結果が出たあとに地下世界に連れていくという予定もある……。

 かなり先になりそうだ。


「それでは、わたしは血長耳の事務所に戻ります。冒険者ギルドにも顔を出すと思うので、その際はよろしくお願いします」

「わかりました」


 レドンドさんは剣士らしい所作で丁寧にお辞儀。

 【月の残骸】の事務所をあとにした。

 

 俺はすぐにチェリに視線を向ける。

 マジな視線だ。

 恋い焦がれているような表情かもしれない。


「……その目、凄く妬けるけど、キッシュはヒノ村か、新しい村にいるはず。側にいてあげてね」


 チェリは、嫌だけど、嫌じゃないと言った女の表情を浮かべながら話していた。

 友思いな素晴らしい女性だ。


「悪いな」


 そう言い残して、踵を返す。

 【月の残骸】の事務所から外に出る。

 

 無我夢中で走った。


 そして、何故か、足が重くなって足を止めた。

 ――キッシュ、大丈夫だよな? と空を見上げる。

 サイデイルだったか?

 あの星はどこだっけ……。


 一緒に見た夜空を思い出す。


 黒猫ロロは「ンン――」と喉の音を僅かに鳴らして肩から跳躍。

 着地した相棒はトコトコと歩いて、振り向く。

 

 俺が何も言わずとも理解していると語るような面だ。 

 その相棒の黒猫ロロは頭部を傾げた。


 白髭の下がり具合から笑ったような印象を受けたが……相棒はプイッと前を向く。

 菊門を晒して尻尾をふりふり。

 すらりと伸ばした前足が地面に触れると、後脚が可愛く跳ねる。

 トコトコとリズムに乗って歩く黒猫ロロさんだったが、俄に走り出し、黒豹から黒馬に変身すると、その黒馬から神獣ロロディーヌに変身を遂げた。

 その神獣ロロディーヌに飛び掛かる、もとい、跨がった。

 目の前に来た触手手綱を掴んだ瞬間――。

 相棒は「ンンン――」と獣らしい息遣いと喉声を発し、力強い四肢で地面を捉えると強く地面を蹴った――斜め前へと跳ねるように駆け出した。

 相棒自体がバネにでもなった勢いだな、と思わず体勢を低くした乗馬スタイルに移行――。

 体毛の柔らかさは気持ちいい、股にフィットする直の筋肉はゴツく硬いが軟らかさも併せ持つ特別な筋肉だと分かる――。

 今の走っている時の神獣ロロディーヌの胸元と足の筋肉は凄まじいほどに張っていることだろう。


 前足で巨大な壁を押し倒すように城塞都市ヘカトレイルの高い壁を捉えてから後脚で壁を踏み台にして一気に空高く飛翔する――。


 キッシュ待っていろよ――。

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