キマイラと生きた乱世 ※改稿作業中

キダ工健

0部 プロローグ、登場人物紹介など

プロローグ 少女独白

 強い雨が降るある日、ある草原に一人の少女が立っている。

降りしきる雨の中にたたずむ女。非常に絵になる光景だ。

ただしその体が血に染まっていなければの話だが…


「……これで最後」


 その少女の眼は尻餅をつき、怯えきった表情の男を捉えていた。その周囲にも数人男が倒れている。しかしそれらの殆どは地面に伏したまま微動だにせずわずかに動けるものもうめき声を上げて。

 男達が無抵抗だったわけではなく、死体も含めて全員が小型の刃物を手にしている。


「や、やめろ……やめてくれ!」


 唯一まともに口を動かせる男も足に深い傷を負っている。逃げられないと悟ればあとは命乞いをすることしか出来なかった。


「もうアンタに手は出さねェ!だから頼む!」


 必死だ。当然、誰だって命は惜しい。たとえ今まで自分が相手と同じ立場だったことが何度あったとしても

だが彼らの言葉は受け入れられなかった。


「……ごめんなさい」


 その言葉は懇願の拒絶を表すのか、それとも良心の呵責からか。どちらにせよその言葉を発した後、男の首に吸い込まれるように少女の持つ得物が突き立てられた。


「がげっ!…………」


 断末魔をあげ、男は動かなくなった。


「でも」


 まだ息がある連中を淡々と仕留めていく。地面と水平になった人間を殺す事などこの少女にとっては作業でしかない。


「……生きなきゃいけないから」


 最早言葉を話すこともない死体に、そして自分にそう言い聞かせ少女はその場を離れる。後に残る物は血に染まる草花とその上に倒れ込む肉塊だけ。

もうこの草原には喚く者も悲鳴を上げる者もいない。

やがて崩れていた天気は日が差し込み雨露が木漏れ日に照らされる美しい自然を見せるようになっていった。

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