WHO ARE なにものだ。
4A
(あ、ここでもいいかな。)
そうした動きは僕だけでなく、出たり入ったりが多いために維持されている渋滞であり。実際、三台ほど後ろを走っていた乗用車も。僕が抜けるのとほぼ同じタイミングで、グレーの車体に
そんな街道とは打って変わって。真新しいガス・ステーションは、「空いてる」どころか「ガッラガラ」であり。こんななら、カート20台位の草レースが開けるのでは?と思う程で。じっさい、ここで給油している車両は僅か二台……そのどちらも、ドライバー自身で給油ガンを突っ込んでいる。
(ふぅむ、このタイプか……)
セルフ・サービスでの給油は久しぶりだったけど。タッチパネルの操作など、親切によくできていて、カードの支払いなどで迷うことも特になく。
むしろ。閉口ものだったのは、シェヴラの変な設計のほうで。この車:給油口がなんと「ドアと前輪の間」にあり、車内からの操作では開けられないのだ。
『ほんと。車のカタチって、ハッタリだらけさ。どんなに意味深な形状でも、引っぺがせばいつもの部品が顔を出す。たとえば最近、左右のヘッドライトの下のあたりを深ぁくえぐった顔の車を見かけないかい? あれ、たいてい奥に黒い
――などという、ビルの持論に惑わされ。「給油口を出すレバーが絶対にあるはずだ~」と呟きながら、血眼で車内を探し回っても。ボンネットを開けるためのロッド位しか発見できず。シェヴラの操作マニュアルを、助手席正面の物入れで見つけるまで5分以上も掛かってしまった。ここが混んでいなくて本当によかった……と思う。なんとも妙な位置に「鍵のかかった
(つまらないことにエネルギーを使ってしまった……ふー。どれ、ここで僕も補給といくか?)
ここでは。給油に来た客が、ちょっとした買い物もできるようにと、コンビニエンス・ストア等が併設されており。そういう顧客のためのパーキング・エリアへと……それも、目指す売店のすぐ傍へと停めるのも。ここまでガラ空きであれば、全く苦にならなかった。
僕は、あまり考えずに。ボトル入りのアイスコーヒーと、チリ・ビーンの焼き立てブリトーを買い込んで。シェヴラの右ドアを開け、店員から貰った……やや大きすぎのペーパー・トレーを助手席に置こうとして。充電中の
(おっと……この状態で使えるんだったっけ?これって。)
まずトレーでもって、
(大丈夫みたいだな。おっ…?)
ホーム画面の封書アイコンに、「2」という数字がオーバーラップしている。ノヴァル支給の
(やっば……いつ受信したんだろう?)
容赦なく冷めていくブリトーと、放置していたメールとを天秤に掛けて。わずかな煩悶の末に、メールの方を開くことにした。
一通目のほうが届いたのは、一週間ほど前であったので。うっすら冷や汗をかきながら
(あれ? ファラに……
それで少し悩んだあと。僕がプライベートで使うモバイル・メールの側で、自動転送を設定していたのを思い出した。私物の携帯は、暫くこのかた寝床の傍の充電クレードルで惰眠を貪っており。もとよりそんなメールが来る方でもなかったので、
もっとも、そのようにすると、ノヴァル側の監視システムが容赦なく「記録」してしまうのだろうが。そういうことで文句を言ってきそうな知り合いも……特に思い当たらなかったので。
(無視しちゃったことになるけど、会えたんだからまあいいかな。じゃあ、もう一通は……?)
多分、アルだよね……と思って<次のメッセージ>をクリックした僕は。
「……ラビーニャ・クァンテーロ、だって!?」
とうの昔に、縁が切れた筈の養家(の、とりわけ口煩い従妹)が、とうとう。ついに、僕につながる「ルート」を発見してしまったぁ……という切迫感(?)に襲われて。
えー、一体いつなんだ?――と受信日時をみたところ。ちょうどファラが僕に、クァンテーロ家の動向について注意を促していたその頃で。流れ的にも、ファラが僕のメールアドレスをラビーニャに教えていた……という推測が成り立ちそうであった。
(なんだ。ファラは一体、どういうつもりなんだよ……「注意しろ」って言っておいてさ。自分でお膳立てしてるんじゃないか、ん? まあでも、
『
(うわー、いきなりすごいな。ラビーニャらしいけど……)
『寧ろ、私たちから
(ええ、今更。だいたい「もう来るな」って、叔父さんから言われたぞ。)
『ごめんなさい、どうか私たちを
(………………え?)
あまりに唐突な謝罪……で終わるメールに。不意を突かれた僕は、彼女の意図を測りかね。運転席に座ったまま、暫く茫然としていて。すっかり冷たくなったブリトーは、砂糖と塩の味しか感じられない代物となって。食欲を失った胃袋へと、温くなったアイスコーヒーで流し込むのも
トレーやカップのゴミも捨て、ようやくシェヴラを街道へと戻したとき。僅かに遅れて、あのグレーの車体も。ドラッグストアから滑り出て、割り込むように合流してきて。先程と同じで、三台ほど後ろをついてくる形となった。
「うぉ……!?」
それで、さすがに僕も。
何者かに「尾行」されていると、疑わざるを得なくなったのだ。
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