第052話 赤い水

ある日、川が赤く染まった。飲んでみると、その水は血の味がした。


上流にある山から川は流れてきていた。私は山へ向かった。上流へ向かうにつれて、山の様子は変わっていった。森があり、様々な植物が茂っていたが、どれもみな同じ実をつけていた。宝石のような、真っ赤な木の実。大小さまざまだが、大きめのものでは手のひらに収まらないほどの物もある。枝からもぐと、赤い液体を垂らした。食べてみると、その実は血の味がした。


川に沿って歩いていると、蛇が川からこちらを窺っているのを見た。私は少し距離をあけて進んだ、蛇はこちらを威嚇するように牙をむいて小さく鳴くと、また川へ潜っていった。樹の上にも、川の周りにも蛇はいた。こちらから刺激をする事は避けて進むことにした。


水源は山の頂上にあった。火口のように山頂部が大きくへこんでおり、そこに湖があるはずだった。湖には巨大な心臓が浮かび、力強く脈打ち、規則的に血液を噴き出している。私の心臓が、湖を血で満たし続けていた。

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