第30話 思い切って、告白したのですが………でございます
自分の仲魔が、強い魔物に進化したら普通は嬉しいんじゃ?
「魔物使いがね……自分の力量に合ってない魔物に殺されちゃう事件は、稀によくあるのよ。ロモンはまだ13…明後日で14歳ね。普通はそんな歳で極至種を扱うのは無理……いえ、私でも難しいわ。だから…ロモンが過去の魔物使いみたいにならないか、今日はずっと、アイリスちゃんを観察してた」
彼女は一呼吸をおき、そのまま話を続ける。
「でも…そんな心配は全くいらなかったみたいね。アイリスちゃんは、ロモンとリンネの事を本当に大事に思っている。現にさっきは必死で二人を守ろうとして、回避できる攻撃を全部受け止めた……。お母さんは嬉しい! これからも、ロモンとリンネをよろしくね? アイリスちゃん」
【承知しました】
お、お母さんに認められたぞ!
「お…お父さんも、アイリスちゃんはロモンの良いパートナーだと思うぞ! うん」
お父さんにも認められたね。
「フォフォフォ……どれ、皆んな、終わったか?」
全てがまとまったタイミングで、家の中からおじいさんがひょっこりと出てきた。
「うん、終わったわ」
「そうかそうか、じゃあ皆んな、うちの中に入りなさい」
私達はその言葉通り、ぞろぞろと家のなかに入っていった。
◆◆◆
「どうやってロモンはアイリスちゃんと知り合ったの? 手紙には、『トゥーンゴーレムのアイリスちゃんを初めての仲魔にした』ということぐらいしか書かれていなかったから…教えて?」
お母さんは、おじいさんが淹れた紅茶が入っているティーカップをそっと机の上に置きながらそう、ロモンちゃんに問いた。
「ん……わかった」
ロモンちゃんは、私と彼女が初めて出会った日の出来事を、ポツリポツリと、お母さんとお父さんに語った。
「そうなの……それは辛かったわね。でも話の通りだとすると、アイリスちゃんは契約する前から人間的思考だったわけだけど……。うーん、やっぱりありえないわ」
そのことは、私達はこの数日勉強した時にわかっている。
実はトゥーンゴーレムはほとんど知能はなく、攻撃してきた者だけに攻撃を仕返すしかない程のど低脳だということだ。
だから念話とかも、ほとんど会話にはならないらしい。
大体、トゥーンゴーレムは人間、魔物ともに経験値の肥やしという共通認識であり、トゥーンゴーレムが生き残り、進化できる確率は100匹に1匹。
さらに生まれてくる方法は岩が変異した自然発生であり、トゥーンゴーレム以外のゴーレムは、実は最初から二段階目の『リトルゴーレム』として、ゴーレムの両親のあいだに生まれて来るらしい。
つまりは、この世界の生粋の雑魚なんだ。
お母さんは私の方を振り向き、こう訊いてきた。
「結局、アイリスちゃんって何者なの? とてもじゃないけど、何か理由があって、そんな知能をもっているとしか思えないのよ……」
成る程、するどい。
まさにその通りだね。
元は小石であるということは説明してもややこしくなるだけだと思うから、この際、皆んなの前で、前世の記憶がある事だけは、話てしまおう。
【そのことなのですが、皆様…輪廻転生ってあると思いますか?】
「輪廻転生……生まれ変わることだよね?」
「そうだよね、でもそれがどうしたの?」
私は一呼吸分間をおいて、話を続ける。
【実は私、前世の記憶が残ってまして……どこの誰なのかなどはわからないのですが…前に人間だったということは覚えているんです】
その言葉を聞いたお母さんは、顎に手を当てて、こう言った。
「確かに……そうでもなければ説明がつかないことがたくさんあるわね……」
「でも驚いたな…本当にあるんだな、転生って」
お父さんはまた、私を物珍しそうにマジマジと見つめてくる。
しかし、この言葉を聞いて、慌てていたのは双子のようで。
「あ、アイリスちゃん! 前世は男? 女?」
「あっ……そういえばぼく達、裸を何回も見られてる…添い寝もしたし…あ……あ…アイリスちゃんが男の人だったらっ…!」
「「私(ぼく)、お嫁にいけない!」」
そこか…二人とも顔を真っ赤にしてるし…。
正直、私が男か女かは全くもってわからないが、多分女だろう。
無理の理由をつけるとしたら、女の勘ってやつかな?
【私には性別の記憶はありません。しかし、おそらく女だったと思われます】
「な……なんで?」
【女の勘ってやつですよ!】
「「な…なにそれぇ……」」
みんなが私達のやり取りを見て大笑いをする。
しばらくして、おじいさんの料理が運ばれてきたので、私達全員テーブルにつき、ご飯を食べた。
そのあとは、私はリビングで直立不動になり、そのまま眠りについた__。
だって、やることなかったんだもん。
◆◆◆
次の日の早朝、私とロモンちゃんとリンネちゃんはお父さんとお母さんに外に呼び出され、沢山の技を見せてもらえた。
早速、どんどんと私は特技を吸収していき、かなりの量の技を習得。
これで、ロモンちゃんとリンネちゃんにしっかりと教授ができるはずだ。
私とリンネちゃんで、お父さんの技を見ているあいだに、お母さんは私の手の側で、ロモンちゃんに魔物使いの魔法を色々と教えていた。
お母さんは、自分の娘の異常な飲み込みの早さに最初は驚いていたが、それが私の特技の効果であるということにしばらくしてから気付いたようで、少し複雑な顔をしていた。
午後、お昼ご飯を食べてからは、お父さん、お母さん、ベスさんに、私が魔流の気を教えた。
ものの1時間程度で全員習得することができ、特にお父さんなんて、すでに他者に気の受け渡しができるレベルになっていた。
これが才能ってやつだろう。
そのあとは、属性魔法を知っている限り全て教えてもらうことができ、非常に魔法のバリエーションが増えた。
夕方は、今度は私が料理を作り、みんなに振る舞った。
前世の記憶があるという設定をフル活用し、日本独特のこの世界のみんなが知らないような料理を出したところ、かなり評判が良かった。
ちなみに作ったのは糸こんにゃく無しの肉じゃがね。
ご飯を食べたあとは、朝にはまだ見せてもらえてなかった技の残りの見物・習得をし、久々にロモンちゃんとリンネちゃんとお風呂に入ることができた。
だけどすこし、裸になるまでの動作がぎこちなかったなー。
まぁ、結局はじっくりと見ることができたのですが…いやぁ、眼福眼福。
お風呂に入ってる最中、お母さんがお父さんを叱っている声が聞こえたので、よーく耳をすませてみた。
なんと! お父さんは娘達と一緒にお風呂に入ろうとしていたのです!
この娘たち、明日で14歳なんだしさすがにお父さんと一緒に入れないでしょ。
入ろうとしていたお父さんを、ベスさんがお尻に噛み付いて阻止したらしい。 ナイス。
お風呂から上がったあとは、二人を早く寝かせ、私とお母さんで、ケーキを作成した。
明日のためのケーキだ。
私は感覚的に久々のケーキ作りに、とても気持ちがたぎっている。
お母さんは私のケーキを作る腕前にひどく驚いていたようだった。
ケーキが出来上がって、お母さんも無地眠らせた後、私はただ黙々とドーナツの焼く前を作る作業に勤しんでいた。
是非とも、ドーナツの美味しさを知ってほしいな。
ドーナツを作り終えた私は、またリビングで直立したまま眠った。
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