第15話 私が教授するのでございます

 バサ______

 バサ______



 私達は今、浴場にいます。


 私の目の前で、二人の美少女が何の躊躇もなくその若々しく、みずみずしく、まだ何の汚れも知らない白く美しい柔肌を私の前にさらけ出しました。

 眼福です、眼福。

 しっかりと目に焼けつけます。

 ここは天国でしょうか?



「……うーん、やっぱりなんかなぁ……」

「どうかしたの? ロモン」

「いや、なんかアイリスちゃんの私達を見る目がまるで_____」

「考えすぎじゃないかな? 目玉なんてないし、この子メスだし、そもそも人間じゃないし…ぼく達の身体に興味持つわけないんじゃないの?」

「……ま、そうだよね!」



 やばいやばい、なんてロモンちゃんはこんなに勘が鋭いんだろう?

 私の前世って男だったのかな?

 いや、女の身体が好きの女だったのかも。


 何となく、本当に勘だけど、後者だったような気がするんだよね……。

 

 そんなもうとっくの昔に過ぎたようなすぎてないような不確かな記憶は置いといて、とりあえずお風呂に入ろう。

 そうしよう。



「あ、またお姉ちゃん胸大きくなった?」

「んんー!? そういうロモンだって……あーあ、早くもっと大きくならないかな? せめて拳よりは大きく…」

「そうだねぇ…。 ねぇ、アイリスちゃんはどう思う?」

「いやいや、だからアイリスちゃんはゴーレムだって」

【むねは……あ! いえなんでもございませんよ】



 しまった。思わずどうすればバストアップするのか教えてしまうところだった。

 危ない危ない……。

 

 胸どころか皮膚もないような岩の人形がいきなりバストアップの話をしだしたら絶対怪しまれる。



「それにしてもさ」



 リンネちゃんが話を切り替える。

 因みに、私の身体は既に泡まみれとなってる。

 美少女の細い手で擦ってもらえるのすごく気持ちいい。



「あの…ボブゴブリン達倒した技……なんだったの?」



 その話しか。

 うん、この娘達に教えてもいいかもしれない。

 有用な技だもんね。



【あれは昨晩、私が自己開発した技二つを掛け合わせた技でございます。魔流の気 と 魔集爆 という名前です】

「え、魔流の気ってどんなの? 少しイメージができないよ?」

「やってみてよ!」

【では、見ていてください】



 私は二人を離れさせ、片腕に魔流の気を纏った。

 水色のオーラが、腕から炎のように滲み出てくる。



「すごい……」

「たった一晩で? こんなのを?」

【はい。できました】



 私は腰に手を当て、胸をはる。



「これには、どういう効果があるの?」

【どうやらこれを纏った部分のHP、MP以外のステータスが上がったみたいなんです。これを纏った時と纏ってない時では、攻撃した際の威力が違いましたから】

「それは…お姉ちゃんにピッタリだね! 私が習得してもいい事あるかな?」



 それも、実は試してあるんだよ。

 魔法を使うタイプの人にピッタリの使用方法。



【ええ、あるかと思います。この纏っているモヤは、遠距離攻撃として飛ばすことができますし、この状態で、魔法を撃つとどうやら効果が上がるらしいのです。まだ『ペア』しか試してませんが】



 昨日私は、腕が弾けた時に土を補給しつつもペアを唱えてみていた。

 それで、ふと思いついたから 魔流の気 を纏ってペアを唱えてみたところ、より効果があがったんだよね。



「私、それ覚えたい!」

「ぼくも!」

【では今日一日の特訓は3人でこれの習得訓練をいたしましょう】

「「うん!」」



 お湯で身体の泡を落としてもらい、白いタオルで身体を拭かれた私と、身体を乾かし、普段着に着替えた双子は、リビングで魔流の気の特訓を始めた。



【よろしいですか? まずMPを意識するのです】

「MPを意識?」

「どうやって?」



 もしかして、私がMPを偶然、慣れていないものだから意識できただけで、普段使ってる二人には意識するのは難しいのかもしれない。



【MPをですね、『自分で操れる血液』だと考えてみてください】

「「ん? わかった………やってみる」」



 私の言葉がわかりやすかったのか?

 いや、まだ少し疑問が残ってるみたいだね。

 二人は軽く了承し、しばらく目をつむり、MPに意識を集中させてるみたいだったが……。



「うーん、難しいよ…」

「アイリスセンセー! お手本見せて!」

【先生ですか…まぁいいでしょう。それではお手本です】



 先生といわれるのも悪くない。

 私は片手に魔流の気を纏ってみせた。

 魔力の流れがわかりやすくなるように、ゆっくりゆっくりと実演をしながらね。



【どうですか?】

「なるほど、どうやるかはわかったけど……」

「でもそれ、多分私達じゃやりにくいよ…。もともとあまり魔法が得意でないゴーレムがやったから簡単にできたのかも」



 確かにそうだ。

 だが、これを覚えれば他の魔法の習得も魔力の流れの意識によって安易になるはずだし、二人には是非とも覚えてもらいたい。

 魔力の練り方がミソなんだから。

 すでに始めて3時間経とうとしてるが……なにかいい方法はないかな?



【ですが、これを習得すれば魔力の流れをマスターできるわけですから、魔法も扱いやすくなるはずですし、武術の鍛錬もよりやりやすくなるはずなんです!】

「うん、わかってるけど…」

「難しいなぁ……。ねぇ、一つ、質問いい?」



 リンネちゃんがハイと手を上げていった。

 服の隙間からみえる脇がいい感じしてる。。

 いや、んなこと言ってる場合ではないけど。



【どうぞ】

「これって、武器にも纏わせることできる?」

【ええ、できますよ】

「そっか、どったら何が何でも覚えないとね」



 武器に纏わせられるかどうかは確かに言ってなかったね、説明不足だったよ。


 ……ん? 他の物に纏わせる? 


 あ! そうだ!

 私から二人にこれを移して纏わせれば……もしかしたら感覚がつかめるかもしれない!



【お二方、少しお手を拝借したいのですが?】

「ん? どうするの?」



 ロモンちゃんはクイっと首を傾ける。

 可愛い。



【リンネ様の質問の『武器に纏わせる』ことができるかどうかで思いついたのです…。私が直接二人に纏わせて、感覚をつかんでもらえばいいんですよ】

「な、なるほど!」

「えへへ、ぼくのおかげ? ぼくのおかげ?」

【ええ】



 二人が嬉しそうに顔を見合わせてはしゃいでいる。

 これはうまくいくかもしれない。



【では、手を】

「「うん」」



 二人はそう言って、ロモンちゃんは私の右手を、リンネちゃんは私の左手をしっかりと握った。



【では送り込みますよ! それっ】



 ドゥォと音がして、二人の手は水色のモヤモヤに包まれた。

 そして二人ともが同時に目を大きく見開いた。



「「今のだっ!!」」



 そう、同時に叫んだ。

 その声にケル君は驚いて起きちゃったようだけど。



「わ、私、もうできる気がする!」

「ぼくも、コツをつかめた気がする!」

【では、やってみてください】

「「うん!」」



 二人はコクリと頷いて返事を元気よくした。その顔をとても嬉しそうだ。



「はぁっ!」


 

 ロモンちゃんの右人差し指の先端から第一関節までの間に、水色のモヤモヤが纏われていた。



「えいっ!」



 リンネちゃんの右中指の先端から第二関節の間に、水色のモヤモヤが纏われた。



「「やったーーー! できたーー!!」」

【おめでとうございます!」】



  喜びのあまり、二人は私に抱きついてきた。

 お風呂一緒に入ってた時はそんなに大きな胸はないと思ってたけど、そうでもないみたいだ。

 なかなかの弾力……。

 私のステータスも、すべてかなり上がりやすくなったらしい。


 しかし、喜びもつかの間、二人はへなへなと倒れこんでしまった。



「ふぇ……MPすっからかんんだよぉ〜」

「うん……ぼく、もうダメ……」



 人間はMPがなくなるとバテるのか…。

 最初だし、魔流波にMPをたくさん持ってかれちゃったみたい。

 こりゃ難儀だね、思い思いに魔法が使えないじゃん。



【鍛錬を積めばこれに必要なMPは少なくなります。私も昨日の間で消費MPを30から10に引き下げることができましたゆえ、お二人とも、頑張ってください!】

「う……ん、がんばる〜!」

「そだね、お父さんとお母さんのように強くなるためだもんね〜」

【それでは、お昼休憩をとったらもう一度練習しましょう】

「「賛成」」



 二人は気力があまりないような感じでヘナっとさた返事をした。

 聞いてるこちらまで気が抜けそうだ。



「ありぇ? ところで、おじいちゃんは?」



 そういえば、いまウォルクおじいさんとガーナさんはいない。

 お風呂に入ってる間に出かけてしまったようだ。

 そして二人はこの状態…まさか……。



「お昼ごはん……誰が作るの……!?」



 そう、この二人のお昼ごはんを作る人がいないのである。

 

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