第6話 仲魔契約でございます


「いや、偶然ってことも……」


 

 リンネ呼ばれていた、水色の髪のショーカットのこれまた可愛い少女がそう言った。



「わかんないよ? 偶然じゃないかも、試してみようよ」



 ロモンという水色のストレートの長髪の可愛い少女がそう言った。



「それもそうね。トゥーンゴーレム、ボクの言葉がわかるなら、3回回って2回拍手してよ」



 おおっ!? リンネちゃんはボクっ娘でしたか。いいですね〜。

 ボクっ娘はいいですよー!

 まぁ、とりあえず言われた通りに3回回って2回拍手してあげて見た。



「本当にわかるんだ……」



 そんか信じられない物を見るような顔はやめて欲しいな……できるもんはできるんだって。

 ぎゃくに不思議がられてる方が私にとっては不思議。

 もうー、本当にでてっちゃうよ?



「ねぇ、もしかしてお姉ちゃん、"掛け算もできない"とか全部この子に聞こえてたんじゃ……」


 

 恐る恐る、申し訳なさそうにはなったその言葉にたいし、私は全力で肯定の意で首を振った。



「わ…わわ、ご、ごめんなさい!」

「ありゃ……ごめんさい」



 まあ、謝ったんだから許してあげよう。

 二人とも可愛いから特別だぞ?

 私はゆっくり首をふった。



「はっはっはっ……まさかこんなトゥーンゴーレムが居るとはな。トゥーンゴーレム……いや、魔物全体の常識が覆ったな。まぁ、おそらくこの子がイレギュラーなだけかもしれんが」



 おじいさん、楽しそうね。

 そんなに言葉がわかるのってすごいのかな? 魔物全体までとか言っちゃうか。

 そっか、私は相当イレギュラーなのか。

 これは面白い。


 なんにしろ天才として注目されるのは、なかなか快感を覚える。



「ねぇ、ロモン、この子と仲間契約しちゃえば? 新しい"仲魔"欲しがってたじゃん。せっかく魔物使いになったんだからさ、お母さんからケル君借りるんじゃなくて。こんないい子二度と見つかんないよ?」



 魔物使い? 仲間契約? なんじゃそりゃ。



「でもお姉ちゃん…言葉を理解できるこのランクの魔物なんて普通は居ないし、誰かともう契約していて、今は自由行動ってだけかもしれない…」



 そう、ロモンちゃんは言うけれど、わたしは誰とも契約してません。

 そもそもわかりません。

 なんなんでしょうか、契約とかいうそれは。



「ロモンや、この子のどこにも契約マークはついとらんぞ? つまりは"野良"だ」



 野良って……野良って……言い方が気になるなー。

 まるで野良猫とか野良犬とか言うように言わないでほしいなー。



「そうなの!? ねぇ、聞いてみよって、聞くだけいいじゃない…ロモンを助けてくれたんだよね? そんなの普通の魔物じゃ絶対ありえないんだから」

「そ、そだね…お姉ちゃん。私、この子に聞いてみる」



 そう言ってロモンちゃんは私の目線に合わせてかがんで、こう私に話しかけた。



「私と……仲間契約しませんか?」



 そう言われてもわからない。

 私はとりあえず、わからないという意思表示のために首を傾げている。



「だ……だめ……かな?」



 私はブンブンと一度首を振り、再度首を傾けた。



「なあ、ロモンや。その子に仲間契約の説明はしたか?」

「あ、いけない! 忘れてた」



 ナイスおじいさん、私はそれが聞きたかったんだよ。

 さぁ、ロモンちゃんや、せつめいしておくれ。



「"仲間契約"ってのはね、"魔物使い"って職業の人の"仲間"になるって契約なの。魔物の仲間だから…略して"仲魔"っていう人もいるんだけど…」



 なるほど、使い魔になる的なやつか。

 でもメリットがなきゃ仲間になる必要はないよね。

 こんな美少女のそばに居られるだけでご褒美だけど、もう少しお話し聞こうかな?



「契約した魔物はね? 人間や魔物とコミュニケーションが取れるようになって、レベルが上がった時のステータスの上がり具合も良くなったりするの」


 

 んー、ま、微妙かな。

 人間とコミュニケーションが取れるようになるのは本来なら大きいのかもしれないけれど、私は人の言葉を聞き取れるし、ジェスチャーでもなんら苦労はしてない。

 それに生活してる分にも困ってないからね。

 まぁ、魔物使い側のメリットもあるだろうし、それ聞いてから決めようか。



「でもその代わり、契約者の魔物使いには攻撃ができなくなるし、時には魔物使いの命令を聞かなきゃいけないこともあるんだけど……」



 そう、やっぱりそれだよ。

 他人の命令を聞かなきゃいけないってのはいかんせん不満がある。



「ね……だめ……かな?」



 そう言って、首を傾げて私の手をそっと握ってきた。

 うわ、反則だって、そんな可愛い顔されたら断りにくいんだけど。

 

 どーするかなー。迷うなー。



「これ、ロモンよ。仲間契約することによって進化できる種類が増えるなり、やれることが増えることも言わんといかんぞ」

「そ、そうだ、また忘れてた。契約すれば進化できる範囲が広がるの。中には人間になれるものもいくつか……」



 おじいさんのナイス助太刀。進化なんてものがあるのかね。

 まぁ、それにはレベルが関係してるのでしょうけど…。

 問題は人間になれること、これは大きい。

 是非、契約させてもらおう。


 私は握られてる手を軽く握り返し、ロモンちゃんの目をじいっとみながら、頷いてみた。



「契約してくれるの?」



 私は再度頷く。



「本当! やった、ありがとうっ! 早速契約しよっ!」


 

 ロモンちゃんはとても嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。   

 可愛い。

 羨ましいなー、その顔。



「じゃあ、契約するよ! 『我、汝と契約す、ここにその証明の誓いをかわそう』」



 なにやら呪文みたいなのを唱えたんだけど、誓いの儀式かなにかかな?

 そんなことら考えてると、ロモンちゃんの右手が突然まばゆく光りだした。



「じゃあ、契約のためのマークを押すね? どこがいい?」



 契約するのに刻印的なの刻まなきゃだめなの?

 まぁそれぐらいだったらいいかな。


 私は握手を解き、左手で右肩を抑えた。



「そこがいいの?」



 私はコクリと頷く。



「わかったよ、えいっ!」



 光ってる右手が、私の右肩に押された。

 なにやら複雑な文字が私の肩にハンコのように浮かび上がってくる。

 でも、色が黒だから少しわかりにくい。



「さて、契約完了! これで君は私がさっき頭の中に直接喋りかけたみたいにできるはずだよ! 1分間使い放題でMPを1消費するんだけど……やってみて?」



 なるほど、テレパシー送るみたいにすればいいのか。

 でもどうやって送るんだろう。

 もう少し詳しく説明してほしい。



「あ、やり方教えてなかったね。脳みそにね、こう……魔力を溜めるような感じで……」



 なるほど、頭の中に魔力を溜めるような感じね。

 それをイメージして……うん、と、こうだ!



【こ……こ……こんにちわ】

(【念話を習得しました】)



 よし! できたぁっ! 

 やったね。

 習得したことにもなったみたい。



「はい、こんにちわ。 できたね! やったあ! 

 ちなみにMP3を消費すれば、複数の人に喋られるからね! それと、それは普段ならこのやりとりができない魔物にも送ることができるから、今度試してみてね」



 ん、なるほどね。

 でもその言い方だと、普通の魔物同士は難なくコミュニケーションが取れるって意味だよね?

 やっぱり、私は人間よりなのだろうか?

 いや、もともとが小石だったからに違いない。


 すこし聞いてみようか。



【あの、一つよろしいでしょうか?】

「うわっ! やけに流暢に喋れるね! 普通はカタコトだったりするのに。特にゴーレムは…で、なぁに? どうしたの?」



 ゴーレムってやっぱり知能が低いのか。

 頑張りなよ、もっと。



【私が今まで遭遇したどの魔物も、私とはコミュニケーションをとろうとはしませんでした。つまりそれは、ゴーレムはコミュニケーションが普段はできない類だということでよろしいのでしょうか?】

「え? う、うん、そうだよ? でも本当にすごく上手にしゃべるね」



 なんで私はこんなにも、まるで王様の側近とか、長年仕えた執事並に堅苦しく喋ってるの?

 でもついついこの口調になっちゃうね。

 しょうがないのかもね。癖なんだよたぶん。


 それにしてもやっぱりゴーレムは知能が低いのか、コミュニケーション取れないぐらい。


 マジでもっと頑張りなってば。



【ご回答、ありがとうございます】

「う、うんいいよ」

「ねぇロモン、この子さっきからなんて言ってるの? 流暢だとか言ってるけど……」

「あ、そうだね! トゥーンゴーレム、みんなにも話が伝わるようにしてくれる?」

【御心のままに】



 こうして私はロモンという美少女の仲魔となった。

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