閑話 また別の世界へ 2 (Lv×石コラボ)

「なるほど、たしかにそういうことはありますよね」



 女の人は俺たちが考えた咄嗟の言い訳に納得してくれた。住み慣れたところが当たり前に感じすぎて、地名などを意識したことがなかった……っていう無理やりにもほどがあるものだけど。



「では一旦城下町の方に行ってみますか? 役所などで特徴を挙げて尋ねればわかるかもしれませんし。案内しますよ」

「いいんですか?」

「ええ」



 国も普通にあるわけだ。アナズムと変わらない王政なんだね。それにしても見ず知らずの俺たちにそこまで案内してくれるなんて優しいお姉さんだね。なんかほんとチラチラ見てくる回数がめちゃくちゃ多いことを除いたら。



「その前に一旦、私の仲間と合流しますね」

「はい! やっぱりお姉さんの仲間ってゴーレムですか?」

「え? いえ、違いますよ。私と違ってちゃんと人間です。犬の魔物もいますけどね」



 自分の仲間がすごく好きみたいで、この短時間の間で一番の笑顔を見せた。ところでミカが俺の横で「あの人、眼鏡がすごく似合いそうね」とか言ってる。俺もそう思う。

 しばらくしてその人の仲間がいるという場所まで着いた。水色の髪の毛をした、うちの弟と同い年くらいの女の子二人と白くて可愛い仔犬がいる。仔犬はお昼寝してるみたいだ。



「あっ、アイリスちゃん遅かったね!」

「……あれ、その子達は?」

「どうやら迷い子のようでして。とりあえずここまで連れてきました」

「「そうなんだ」」



 声が全くもって同じだ。よく見たら髪型と服装が違うけど身長や顔まで全部一緒。似てるなんて次元じゃないよ。ほぼ確実に双子だね。



「でもこんな魔物が出るところで迷子なんて珍しいね」

「一体どういう経緯で迷子になったんだろ?」

「あー、えっと、ちょっとお仕事の関係で。地図忘れちゃって」

「「なるほどー」」



 俺らみたいな見た目だけ子供がお仕事なんて言って大丈夫かと思ったけど、問題はないみたいだ。双子のうち髪型が俺に近くてボーイッシュな方の子が剣をもってて、髪が長めの方の子が大きな杖や本を持ってたからこの世界にも冒険者の概念があるのかと一か八か試してみたけどビンゴだったみたい。



【……ゾ? ファァ……どうかしたのかゾ?】

「あ、ケル。おはよう!」

【まだ数分しか寝てないゾ。それでその二人は誰なんだゾ?】

「森の中で迷子だったんだって。アイリスちゃんが連れてきたの」

【そうなのかゾ】



 さっきは気がつかなかったけど、仔犬には白い体に赤い模様がある。なんだかタテガミやヒゲにも見えなくはないな。……そうじゃなくて、なんか喋ったんだけど。口自体は動かしてないんだけど、こう……俺らのメッセージと近い感じで喋ったんだけど。えー、すご。



「どうかしましたか?」

「い、いや……子犬ちゃんが喋ってるのに驚いちゃって」

「ああ、念話ですね。あの子は特別、普通と違って人の言葉を聞き分けられる上、念話も流暢にできるんですよ」

「へぇー……」



 念話って言うらしい。やっぱり俺たちのメッセージと近いものかもしれない。アイリスって呼ばれてた女の人の言う内容を推測するに、この世界ではそれを使って魔物とおしゃべりできるみたい。なんだか楽しそうだけど、それって魔物倒せたりするのか知らん。ともかく魔物と喋れるからこうして犬の子を従えてるわけだね。



「かわいー! あの、ケル君でしたっけ? 撫でてみてもいいですか?」



 ミカがアイリスさんにそう聞いた。



「それならこの子と私の主人はロモンちゃん……髪の長い方の子ですからそちらに尋ねてください」

「私はいいけど、ケル本人に聞いてね!」

【んー、まあいいゾ、撫でるんだゾ!】

「ありがとう!」



 ミカは本犬と主人だっていう髪の長い方の子、ロモンって子に許可をもらえたので、ケルという子を撫で始めた。なんか許可の仕方が自信満々で生意気風だったけど可愛がられるのに慣れてるのかな。顔は柴犬の仔犬みたいな感じだしとってもキュートなんだ。

 


【んー、んー、なんだか色んなお花をいい感じに組み合わせたような匂いがするゾ】

「鼻がいいんだね! 私のお母さんがお花屋さんなの」

【そうなのかゾ】

「……ボクも撫でていい?」

【オッケーなんだゾ】



 どう撫でられたらいいか理解しているのか、自分から頭を差し出してきた。普通に撫でさせてもらう。毛がふかふかでほんのり温かい。



【……? なんだかとっても不思議な匂いがするゾ】

「え、ケルでもわからない匂いがってあるの?」

「珍しいね」

【こう……形容できない……謎だゾ】



 え、俺ってそんな変な匂いするかな。ミカが「男だってバレてるんじゃないの?」ってメッセージで言ってきた。おかしいな、俺って体臭もお花の匂いだったと思うんだけど……この子は特別鼻がいいっぽいしわかっちゃったかな?



「それで、えっと、迷子をどうするんだっけアイリスちゃん」

「ああそうでした。城下町に一回連れて帰りましょう。役所まで行ったら色々とわかるでしょうし」

「なるほどね。じゃあ一旦訓練は中止して城下町に戻ろう」

「すいません、ありがとうございます」

「お世話になります」

「「いいんだよ!」」



 移動中にもう少しこの世界のことをやんわりと聞きだそうね。……って思ってたけどなんかみんなで手を繋ぎ始めたの。歩いて行くんじゃないのか知らん。



「あ、二人も……二人の名前は?」

「ボクがアリムと言います」

「私はミカって言います」

「じゃあアリムちゃんとミカちゃん、私たちの体のどこか触ってて?」



 そういうのでアイリスさんの肩をつかませてもらう。するとまるで叶の瞬間移動のように一瞬で周りの景色が変わった。目の前には大きな壁が見える。



「はい、城下町に着いたよ」

「転移魔法陣は本当に便利だねー!」

「ねー!」



 まさか、みんな瞬間移動できるのかな!?




#####



コラボ2話目です! 私と作品双方に投稿しますよ。

ええ、見ての通りまだ続くんですね。短編じゃ終わらせられませんよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る