第253話 火蜥蜴を捕獲したいのでございます!
クリスタルの雨を降らせ終わったあと、私達はクロさんを先頭にしてそれらの着弾点へと向かっていた。おじいさんの探知上では生きているのはわかってるけどその場で動かなくなっているらしい。
場所は火山から少し離れた森の中。早速入ってみるとおそらく普通の人間からしたら蒸し暑いんでしょう、ロモンちゃんとリンネちゃんが火山そのものに居たときより汗をかいていて、服も湿ってて、そこそこエロ………。ともかく暑そうにしている。そしておじいさんとクロさんは平気そうでケル君は冷気をまとっている。もし私がここで人間になったらロングスカートの中が蒸れて蒸れて仕方ないでしょう」。
【ふぅ……ねぇ、おじいちゃんとはどれくらいの付き合いなの?】
しばらくして暑さに慣れたのか、ロモンちゃんが、幼体化して、黒くて水晶が生えてるトゥーンドラゴンになったクロさんにロモン質問をし始めた。
【クロとジーゼフの付き合いは50年近く前だ。クロがジーゼフの一番最初の仲魔だからな】
【50年かぁ】
50年一緒にいるというのも中々よね。わ、私は……多分、かなりの高確率でそんな年数はロモンちゃんの仲魔ではいられない。半魔半人になった性ね。ガーベラさんと可能であればいつか結婚して、私は彼のものになっちゃうだろうし……結婚……できたらいいなぁ。
でも半魔半人の中には自分の契約主と結婚する人も少なくないって聞く。そうは言ってもどったみち私とロモンちゃんは同性だから無理なのよね。百合も悪くないけど。
【そこのゴーレムとドッグは孫であるお前の仲魔だろ? どんな感じか、クロ、気になる】
【クロや、訊くのはいいがもうそろそろ彼奴の下まで着くぞ】
【そっかー。じゃあまた後でな】
【うん】
確かに私たちの大探知でも普通に見える範囲にすでに入っていた。そのまま3分間歩くとクロさんの水晶が見えた。
「ここにいるんだね、おじいちゃん」
「そうじゃよ。このままクロを先頭にして進むんじゃ。意識を途切れさせるように攻撃したから魔法を使うことも、人になることも叶わんと思うが、念のためにもな」
たくさんの水晶が突き刺さってる中を、クロさんが水晶に直接触れて解除しながら進む。一斉に全体を解除しないのはイフリートサラマンドラを捉えてるからね。
一個一個破壊するわけじゃなく、魔法を消すだけだから割と早く対象のもとにたどり着いた。全身の関節などの節目に水晶が深く地面ごと突き刺さっており、身動きが取れなくなっている。
【ぬぐ…………】
「さて、ここからどうするかじゃな」
辛そうに口を歪めながら相手はおじいさんに睨んでる。でもおじいさんはそんなことこれっぽっちも気にしてない。むしろ見下した目で見下ろしていた。
「どうやって情報を引きだせば良いと思う?」
【尋問じゃ口を割りそうにありませんね】
「ノアとグライドの情報を、誰から聞いたのだとか気になるんじゃかの……」
それが本当に気になるところ。もし彼に協力者がいたとしたら王国に潜伏してると考えた方がいいもの。魔王軍幹部が王国のどこかにいるの恐怖でしかないわ。
【そもそも、そんな串刺しだったら喋りたくても喋れないと思うんだゾ】
「たしかにケルの言う通りじゃ。だがこいつのこの水晶を外して仕舞えば、魔王軍幹部に共通する特技、脱皮が発動してしまうからな……なんとかこのまま話してもらわないといけないのじゃ」
一回脱皮だとかいうのをして体力と魔力を全て回復させる特技ね。どのくらいの頻度で使えるからわからないけど、正直、一定時間でどちらもかなりの量を回復する私の固有特技の方が上位だとは思う。ただどういう風であれ状況で全快させさられてもう一回逃げられたら厄介。じゃあどうすればいいか……あれをやるしかなさそうね。
【ロモンちゃん、一旦私と魔神融体してください】
「え、何するの?」
【闇氷魔法で半球状のドームを作り、イフリートサラマンドラを逃げられないようにします。そしてもう一度戦闘をし、脱皮してもらい……再度喋れる程度に半殺しにしましょう】
例えば全身をクリスタルでガチガチに固めてしまうとか。身動き取れないようにしつつ喋れる程度にしたい。それでも口を割ってくれるかどうかは別だけど、やるでけやってみなきゃ。
そもそも素直に脱皮してくれるかどうかもわからないわね。その場合は私が回復させればいいだけかもしれないけど。
「なるほどね!」
「おっと、待つんじゃ」
なかなかいい考えだと思ってたんだけどおじいさんに止められた。やっぱりワザと回復させる方法はまずかったかしら?
【ダメでしたか】
「いや、作戦自体は悪くない。じゃが壁の作成はワシとクロに任せて欲しいんじゃよ」
【なるほど】
たしかにおじいさん達が作る壁の方が強固ね、なにせ土魔法が鉱石になるんだから。作戦自体も悪いわけじゃないなら良かった。
「そうじゃな、ゆっくり作るから、アイリスちゃんとロモンは外からさらに闇氷を纏わせてくれんか。そしたらより強固になるじゃろう」
【二人とも壁を作る気なのはいいけど、光源はどうするんだゾ?】
「心配するなケル、クロの水晶は自然発光するんじゃ】
たしかに周囲にある水晶は全てほんのり光ってる気がする。これなら何かあっても脱出なんてできなさそう。
火山地帯からここに向かうまでに魔人融体を解いていたおじいさんは、またクロさんと融体化した。そしてワザとゆっくり水晶の壁を作り始める。
ロモンちゃんと融体したままの私はそれをコーティングするように闇氷で覆った。やがて広いドーム状のものが完成する。これ外から見たらどうなってるんだろう。
「いいじゃろう。クロ、彼奴を釘刺しにしておる水晶を取り除いてやれ」
【本当にいいの?】
「おっと、その前にワシとクロ以外が狙われても大丈夫にしておこうかの。といってもアイリスちゃんの防御力とあのアーティファクトの盾でなんとできると思うがな」
私はその言葉の通り、私に意識を持ってきて気を失ってるロモンちゃんとリンネちゃんの側についた。リンネちゃんはあのてんとう虫の盾を構えてバリアを出している。
「これで良いな。頼む」
【わかった】
クロさんはドーム以外の辺り一帯の水晶を全て解除した。
自分を地面に打ち付けている枷がなくなったイフリートサラマンドラは指をピクリと動かした。そしてすぐに皮膚が変な色に変色してゆく。
【はははははは! 回復する時間を与えるのは馬鹿め! どうなっても知らんぞ!】
「ああ、早く脱皮しなされ」
パキパキと音を立ててイフリートサラマンドラの皮膚が割れてゆく。中から新しい無傷のイフリートサラマンドラが姿を現した。
そしてすぐに半魔半人化し、人型になる。
「おや、人になるのか」
「ははははは! 愚民の姿なぞなりたくないが、マトが小さいほうが当てにくいだろう? 唐突にSSランクの魔物が現れ慌ててしまったが……つぎはそうはいかんぞ!」
【あれ、あんなに怯えてたのに、今はそんなことないんだ? ……クロ、もうちょっと本気で叩きのめせば良かったのか?】
「殺してはいかんからな、あれくらいでちょうど良かったじゃろ」
【そっかー】
何か勝てる方法でも思いついたのね。やっぱりこの作戦ダメだったかな。でもやっぱりおじいさんたちが負けるイメージなんて全く浮かばないんだけど……。
「唸れ! 炎天如!」
「やるぞ」
【うん】
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