第112話 港町観光2日目でございます!

「もう一回…寝る前にもう一回だけお姉ちゃんって言って! あのときみたいに可愛く!」



 ロモンちゃんが両手を合わせてそうお願いしてきた。

 二人がナンパされてるとこを救ってから、船を降りてからも度々、こうお願いされている。

 10歳の私のお姉ちゃんコールがロモンちゃんの琴線に触れたらしい。



「またですか?」

「うんっ!」

「ついでにぼくも」

「リンネちゃんまで…」



 お願いされたならば仕方ない。

 14歳の姿だったところを10歳に戻し、ロモンちゃんとリンネちゃんの手を取る。そして。



「お…ロモンお姉ちゃんっ! リンネお姉ちゃん! だ、大好きっ」



 …って言ってみた。

 これは私が幼女から言われたら嬉しい言葉をそのまま言ってみただけなんだけど…。



「えへへっ…アイリスちゃん! 私も大好きだよーっ」

「ぼくもだよーっ!」



 なんて、興奮気味にぎゅーっと抱きしめてくれる。

 押し付けられる2人の体で息がくるし発展途上の胸が柔らかいありがとうございます。

 2人は私の身体を抱いたまま、頬ずりまで。



「よし、このまま寝よう」

「異議なし」

「フゴ」



 ロモンちゃんはリンネちゃんの背に手を回し、リンネちゃんはロモンちゃんの背に手を回す。

 そしてその間に私。

 これぞ、ターコイズ家双子姉妹サンド。

 はぁ……至福……。


 どうやったかは知らないけど、布団がかけられ、眠りについた_______



◆◆◆



 翌日。

 磯の香りと共に双子の温もりに包まれて起床し、魚介類のダシをとったスープを飲む。



「私、今日は行きたいところあるので、単独行動させてもらっても良いですか?」

「うん、いいよっ! 今更だけど」

「アイリスちゃん、夜中も単独行動してるでしょ? 気付いてるんだからね! もう人間になったし、いいけれど、ただ危ない男の人についていかなきゃいいよ」

「バレてたんですか……」



 隠密とかフルに使って部屋から脱出してたつもりなのに。この双子にはお見通しだったか。

 まあ…人間になれたということで、怒られはしなかっただけ良いとしよう。

 これからは隠し事がしにくいなぁ…。

 もしかしたら私の趣味も気づかれる日が来るかもしれない。



「まあね」

「じゃあ時間を決めよう。昨日ご飯を食べた海鮮レストランの前に、午後6時集合で! それまでは完全自由行動!」



 リンネちゃんが一番年上っぽくそう言った。

 異議なし! というわけで、それに従うことに。



「じゃあ、またあとでね!」



 宿から外に出てすぐに、2人は何処かへ歩いていった。

 私の目的地はその2人が向かった方向と反対にある、この港町にあるオークション会場っ!

 城下町である私達が住んでる街のオークション会場より、珍しいものが並びやすいところ。

 私は今日、そこにアーティファクトがないか探しにいくんだ。


 およそ6億…おじいさんに渡さなきゃいけないぶんを多めに考えて差し引いて…4億5000万の予算。

 アーティファクトが物によるけど、余裕で3~5個買えると思う。

 アーティファクト自体珍しいから、今日だけでそんなにでてくるわけないけどね。

 

 そんな計算を頭の中でしていたら、いつの間にか会場に着いた。始まるのは午前9時で終わるのは午後1時。

 今は8時30分だったけど会場は開いてるし、受付を通して中に入ろ。

 受付にスーツっぽい服装をしたお兄さんが立っている。

 

 

「ご入場ですか? 今回のオークションに参加なされますか? それとも、観光のみですか?」



 なるほど、観光だけをしにくる人もいるのか。

 でも、違う。



「参加です」

「承りました。ではお手数ですがお名前と、現在お手持ちの所持金に該当する番号をこの表からお選びください」



 渡された紙には、名前欄と、番号がふってあるいくつかの数字の羅列が。

 同じく渡されたペンで『アイリス』と名前を書き、所持金に近い数字が書かれてる番号に丸をした。



「……はい、アイリス様ですね。オークションの説明は御必要でしょうか?」

「とりあえず、お願いします」



 2分程度、お兄さんからオークションの説明をされる。

 まあ…普通のとそんなに変わんない。



「説明は以上となります。ご質問はございますか?」

「いいえ」

「はい。ではこれがアイリス様の番号でございます。現在、当オークションでは『宝祭』を行なっており、一昨日から今日までの3日間、普段より珍しいもの、高価なものを扱っております! 本日は最終日となっているので、より良い掘り出し物があることでしょう。是非、勝ち取ってくださいね」



 そ…そんなのやってたんだ。

 それに最終日…きっとこれは良いものが出されるに違いない! 昨日来なくてよかった。期待できそう!

 …ちなみに私の番号は332番。なんかおしい。


 サーカスのテントのようなところの中に入り、私はその番号が書かれてる通りの席に着く。

 やっぱり、すでに人はいっぱいだ。

 そりゃそうか、30分前でもう330人以上居るんだもんね…。

 ここまで人が居るんだから、1人くらいどっかにお金持ちのイケメンは居ないかな?

 はは。まあそう簡単に居な_______居た。見つけた。


 昨日、ロモンちゃんとリンネちゃんをナンパしてきた、赤髪天パさわやか風イケメン好青年の方。

 私と、ステージをまたいで遠くで対面するような場所に偶然座ってる。

 席に座ってるってことは、参加者ってことで…参加者ってことはお金持ちだもんね。

 イケメンでお金持ち……羨ましいです。


 昨日とは違った面持ちで、ステージの方をジッと見つめていた。何か欲しいものがあるのかもしれない。

 それがもしアーティファクトで、もし剣士や魔物使いに合う装備品だったらごめんなさい、私がいただきます。



◆◆◆



「世界的そして歴史的名工_______が作成した、このミスリルと銀のブレスレット! この品は_______」



 うーん、今の所、めぼしいものは無い。

 確かにどれもこれも良いものばっかりで、中には剣や杖もあったけれど、極至種である私の身体を危なく無い意味で使った最高の武器が近いうちに手に入るから、いらないわよね。



「はい、514番の方っ」

「にぃ…2300万ストン!」

「2300万ストン! 2300万ストンが出されました…これ以上はっ______はいっ、115番っ!」

「2350万ストンっ!」

「2350万ストン……おりませんか、これ以上はおりません……おっと、77番っ!」

「2500万ストンですわ!」

「でたああああ! 2500万ストン! これ以上は…これ以上は…いなーーーーいっ!」



 どうやらさっきの腕輪は2500万ストンで決まったようだ。カンカンと木槌が叩かれる音がする。

 なかなか、こういうのは見るだけでも楽しい。

 受付の人が観光ですかと聞いてきたのが今更ながら頷ける。



「さて、さてさてさてさてさてさて! 残り2品となりましたっっっ!!」



 興奮しながら喋ってる。

 おお、もう残り2品っ!?

 備え付けられてる時計を見ると、時刻は午前11時30分を指していた。

 確かに閉会とか含めると残り2品の時間ね、これは。



「残り2品はここ3日間続いた『宝祭』の目玉も目玉も大目玉っ! 2つのアーティファクトが出品されておりまぁぁぁぁぁあああああすっ!」



 来たっ…アーティファクト来たっ!

 ふと、あの男の人の顔を見る。

 彼も目の色が変わったように食い入るように、ステージに身を傾けていた。

 これは厳しい戦いになるかもしれないわ!

 さて______________

 

 



########



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