第76話 私vs毒蛇王でございます…! 2

【…っと】



 私の放った魔法はいとも容易く避けられてしまった。

 まあ、牽制みたいなもんだし良いんだけど。



【リゴロゴ…か。あれから160ネンもたってるからな…。ゴロゴのマホウをうつゴーレムがいてもおかしくないか?】



 言った…160年って今言った! 最初にサナトスファビドが見れたのは約170年前。そいつは魔王の幹部だったという。

 魔王がいなくなったのが160年だと考えると…やっぱりコイツは魔王の部下!!


 だって昔に見つかったもう1匹のサナトスファビドは、殺されて剥製にされたり、内臓や毒を研究に使われたりして大分、色々とわかってるらしいもん。

 弱点はまだなんだけど。


 あ、ちなみに現在はゴロゴゴーレムっていう語呂が悪いゴーレムが既に居るからね。そっか…160年前はゴロゴゴーレム居なかったんだね。

 ふふ、大事な情報を自分から吐いてくれたね。


 それにしても、なんで魔王の幹部が生きてて、若い女の子を治らない毒してまわってるんだろ?

 まだ知りたいことは多いね。



【……そろそろあのコたちをサガさないとな。ミつからなかったらチカくのムラでもサガすか…だから、いいカゲンしね】



 地面にうつ伏せている私に向かって、黒紫色に変色したヤツの尻尾が振り下ろされてきた。

 あれだ…私の金剛雷撃とか、氷斬とかと同じ感じのやつだ。

 私はそれを転がって回避したけれど、足の…人間でいえば指先あたりを壊されてしまった。



【コシャクな…】



 ヤツの口の前に、また魔法陣が展開される。

 土色と黒紫色が半々な感じの魔方陣…いわゆる『闇属性を付与した土属性魔法』だね。

 こういう応用が利くから闇魔法は良いんだよ。


 すぐに、リドゴドムの闇魔法付与バージョンが私に向かって撃たれた。至近距離から。

 当たったら流石に死んじゃうだろうし…かと言って回復魔法はまだ使いたくない。


 私はばれないように、迫ってくる一瞬で魔流の気を出し、それをうまい具合に当ててずらした。

 勿論、何かしたと悟られないように私自身の身体も動かしたけどね。

 小石視点を使って、サナトスファビドの目線で調節してそうしたから、魔流の気には気づかれなかったと思う。


 私のすぐ横でドシンと大きな音と共に、不穏な色をした土塊が着地した。ちょっとずらすのに失敗しちゃったかも…左腕の残りが潰れた。



【あたらなかった…? いや、カイヒしたのか……】



 さてと、これからどうしようかね。

 そろそろ私自身の効果で、身体が再生するんだよねー。

 あと30秒位かな? HPは大分回復してきてるし…よし、もうちょっと粘れるね。



【……おい、ゴーレム】



 サナトスファビドが私を睨んだまま、そう話しかけてくる。そういえば私ったら、うつ伏せだから相手の顔が見えてないはずなんだよね。小石視点マジ便利。



【……ダド?】



 まあ、こんな感じで返事しとけば良いでしょう。



【…いろいろおかしい。ゴーレムがなぜニンゲンにそこまでカタイれするのか……また、キホン、バカなゴーレムがムダなウゴキをほとんどしないのか】

 


 あ…やばい。

 普通のゴーレムじゃないのバレちゃいそうな感じ? 

 いや、もうちょっと粘ろう。…ていうか、もう身体治っちゃんたんですけど…。

 これ以上、ごまかして隙を見て何かするなんて無理そうなんですけどー…。

 やっばいなぁ…。やらかしちゃってましたか…。



【……オマエ、ナニモノだ?】

【……ンゴ?】

【バカどものマネはしなくていい。……よくカンガえたらキサマ…シなないテイドでオレのコウゲキをうけたりしてたな。それほどのシコウができるヤツだ。カイワできるんだろ?】



 しゃーない。もうここまでばれてしまったらしょうがない。情報を引き出すのは難しくなったかもしんないけれど、がんばろう。

 てなわけで、私は立ち上がった。

 もう既に、私はHPもほぼ満タンであり、傷は一つもなくなっていた。



【よくわかりましたね。そうです】



 サナトスファビドは私がなぜか回復していることに対し、驚いた様子だったが、すぐに冷静さを取り戻したみたいだった。



【これほどまでだったか…。オドロいたぞ。なぜダマッていた】

【ゴーレムがバカ……この一般論は私にとっての武器ですからね。一つでも隠し武器が欲しかったのですよ。そうすれば…貴方みたいな圧倒的格上にも、一矢報いることができるかもしれないでしょう?】

【………ふむ、なるほどな】



 相手は攻撃をやめ、こちらを睨んでくる。

 さて…どうするか。よく考えたらこの状況、逆に色々と訊きやすいんじゃないかな? ちゃんと話せるわけだし。


 よしよし、私が色々と関わってきたことがわからないように、うまーく質問していこうかな。



【…そもそも、何故、私の主人達を狙うのですか? 何をしようとしていたのです?】

【おしえてほしいか? キサマはザコではない…。オレのテによってシぬが、ここまでクイさがったホウビだ。せっかくだ…オシえてやろう。…モクテキはウツクしくウルワしい"少女"を、オレのチカラ…不治の呪毒で、ジゴクのような痛みをアタえながらジワジワと痛ぶり殺すこと】



 ここまで聞けば快楽殺人だ。それも拷問してから殺す、タチ悪いやつ。まさか魔王の幹部がそれだけの目的なはずがないよね。



【……それならただの快楽殺人ではありませんか?】

【ああ…とってもカイカンだ! ……少女らが苦しみ、悶え、『イタイ、イタイ』と泣き叫びながらシんでゆく…。チョクセツそのスガタをミることはできないが、苦しんでいるヨウスをソウゾウするだけで……キモチガイイ!! ああ、とっても!!】



 くそ、この変態が。

 そのせいでどれだけ私が忙しかったかわからないんだ!

 ……しかし、どうも何か隠してる感じがする。

 納得できないなー。



【では…貴方の快楽の為だけに、少女達を無意味に苦痛を味あわせた上で殺していると…そういうワケですね?】

【まあ、それはおまけのリユウであり、ホントウはこのコウドウジタイにイミがあるのだがな】

【………それは?】

【さあな。そこまでオシエてやるつもりはない。そろそろシね!】



 サナトスファビドはその言葉とともに、私に向かって突撃してきた。

 私はそれを、足から爆風を出して飛んで回避する。

 もういっそ、回復以外は全部、使ってもいいかもしれない。

 補助魔法を自分に、最大限まで掛ける。

 勝つことは望んでいないため、限度を超えて掛けたりはしない。



【アシがバクハツしたり…いつのマにかカラダがサイセイしたり…オマエのカラダはどうなっている?】

【足の爆発も身体の再生も私の魔物としての力です】

【……やはり、ブキはチノウとゴロゴ系だけじゃないのか…】



 私は着地した。

 そのままの勢いを殺さぬように、金剛雷拳をしながら相手に突っ込むも、回避されてしまう。


 

【ライケン…か。ここまでのゴーレムをソダてるのに、クロウしたのだろうな、マモノツカイは】

【ええ、そうです。私は彼女達にたくさん恩があります! …命に代えても守るのです! 私の大切な主人を!】



 私はリドゴドムを連発して唱えて攻撃する。

 それをサナトスファビドはかわしながら、こう言った。



【そうか…よかったな。オマエのゴシュジンのほうはタスかって】

【は…?】



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