第62話 数日ぶりのギルド単独でございます!
私はローブを着け、ギルドの中に入った。
すぐにギルドマスターに気づかれる。
「おお!? アイリスか。優勝おめでとう……まあ、俺はお前さんが勝つのをわかってたがな」
【そうですか、ありがとうございます】
「ああ、おかげでかなり儲けた。ここ5年分くらいの損を一気に取り戻したぜ」
【はは…それは良かったですね】
そんな風に、私がギルドマスターと私が話している間に、わらわらと冒険者さん達が寄ってきて、私に話しかけてくる。
まさか大会に出るなんて思ってなかっただの、出るとわかってたら大金を賭けてたのに…だの、ノアさん関連の事とか多くて…あと、ロモンちゃんがすごく可愛いから紹介してくれと、行ってくる輩も数人居た。
ギルドマスターの話だと、ノアさん、それとグライドさんは元はここで働いていたらしい。
また、ある中年冒険者が、お母さんとお父さんがここのギルドでいちゃいちゃしてるのを何回も見たというのを話した。人前でアーンとかしてたらしいね。
だいたいの人が私と話すのを満足して、酒を飲んだり、博打、仕事を探しに散っていったころに、ジエダちゃんがギルドにキョロキョロしながらやってきた。
【こんばんは、ジエダさん】
「こ、こんばんは! アイリスさん、れ、例のブツをお持ちしました」
例のブツって…。
そう言いながら、私に、スペーカウの袋を返してくれる。6億3000万ストンが入っている袋だ。
ここまで持ってくるのに、そうとう気を使っただろうね。
【お疲れ様でした。本当にありがとうございました】
「い…いえ、わ、私もその…アイリスさん達にずっと賭けて…その…」
【そういうものは、落ち着いてするものです。あそこに腰をかけて話しましょう】
私とジエダちゃんは一つの席に腰をかける。
【で、どうでしたか?】
「は…はい、えっと…アイリスさんは…もう、いくらかわからないくらいのお金に……」
【私の計算が合っているのなら、6億3000万ストンです】
「えっ…う、嘘っ!? 億っ!」
【しーっ! 声が少し大きいですよ】
「あうぁ、ごめんなさい!」
そうとう戸惑っているみたい。
それもそうよね、なんたって数億の取引だったもんね。
私だって最初は1億…2億いけば良いかな、なんて思ってたもので。
それに今回で6億ストンも儲けたわけだけど、私はさらに、リンネちゃんに大会で賭けるつもりでいる。
より、増える可能性があるんだ。それも、確実に。
だってねぇ…リンネちゃんは、あの、グライドさんと私が鍛えたんだから…優勝するでしょう、多分ね。
ありゃ、親(?)バカってやつかな、コレ。
【とにかく、ありがとうございました】
「あ、はい。私も500万ストンの借金でえーっと、確か……」
【私の計算が正しければ、おおよそ1億ストンですね】
「おおよそ……って、なんですか?」
【いえ、すいません…。9000万ストンと少しでしょう?】
「わっ、わっ、アイリスさん、よくわかりましたね。そ、そうなんです。私、それだけの大金を手にしちゃって……。借金を返してもどのくらいあるかわかんないくらい…」
ジエダちゃんの手が震えている。
いきなりそんな額を手に入れたんだもんね、仕方ないね。
【だからと言って、ギャンブルにのめり込んでは絶対にいけませんよ】
「わかってます! それは大丈夫です。…あの、治療費…お支払いできるのですが…」
【3000万ストンが6億3000万ストンになって返ってきたのです。それで十分でしょう】
「うぅ…はいっ、あ、ありがとうございます。私、私、このお金で…ネフラを学校に行かせることができます…。本当に、本当にありがとうございますっ…」
学校…めっちゃ高いんだよねー…。確か、この国で一番良い学校は10歳以降の入った年齢から、6年間で4000万ストンだったっけ。
まあ、それでも、ロモンちゃんとリンネちゃんの方が学力は、その学校の卒業生より高い。なんせ、私が教えたからね。この世界にまだ存在していない数式とかも教えたから。ふふ。
【ではやはり、一番良い学校に?】
「ええ、そのつもりです。来年から」
【ネフラ君はそれを望んでいるのですか? もし、ネフラ君に成りたい夢があるのでしたら、良い学校は強制せず、3年制の基礎学力だけを学ばせる学校の方が良いですよ】
そう、思わず口走ってしまった。おかしいな、そんなこと言うつもりも、他人の家庭事情に口を出すつもりも無かったんだけど。うーん………。
まあいいや、本心からそう思ってるし。
「そ、それは……そうですけど…。ネフラは私と同じ、冒険者になりたがってますが……」
【どちらにせよ、ネフラ君と相談して決めるのが良いでしょうね】
「は、はぁ…」
ジエダちゃんはキョトンとしている。
何かおかしなことでも言った、私?
【どうかされましたか?】
「あ…いえ、その…まさか、ゴーレムから人生について色々と言われるなんて思わなくて……」
そうだ、私は確かにゴーレムだ。……それが人生について語る…おかしいかな? 側から見たらおかしいのかな。
「アイリスさん…本当は人なんじゃないですか?」
【そうですね…】
「私なんかより頭が良いし…お金の扱いも、行動全部が、なんか人間っぽいというか…もしかして実は既にワーゴーレムだとか…」
【違いますね】
「違うんですか…」
そういえば、ジエダちゃんからここまで深く問われるのは初めてだな。まあ、ゆっくり話す時間は今までなかったし……。
いっちょ、ロモンちゃんとリンネちゃんに暴露したことをこの子にも暴露してみるかな。
【ジエダさん、輪廻転生って知ってますか?】
「りん…え? てん、てん…?」
【りんねてんせい です。生まれ変わるという意味です】
「そ、そうなんですか…。つまり、アイリスさんは何かの生まれかわり…だと?」
【そうですね、私の前の前は、おそらく人間なんです】
「へぇー…」
あれ、思ったより反応が薄いっ!?
ロモンちゃんとリンネちゃんもかなり薄かったけど…。
この世界はなんか、この生まれ変わりに対する反応が薄いよ。
【思ったより反応が薄いですね】
「いや、まあ…そういうことも有りますよね。それにしても、前の前が人間なら、前はなんですか?」
【道端の小石です】
「ん!?」
あれ、こっちの方が驚いてる?
なんだ、なんなんだ、基準がわからない。
この世界は…今更だけど、感覚がわからないことが稀にあるね。
【あー、いや、はは。まぁ、ゴーレムジョークというやつですよ】
「ゴーレムジョーク……ですか?」
【ええ、そうですよ。トゥーンゴーレムの身体は石でできているでしょう?】
「あれ? アイリスさんに子供の頃はあったんですね」
【当たり前じゃないですか】
しばらくそうして、ジエダちゃんと駄弁った後、てんとう虫達に会いに行こうかと考えたけれど、それは止めておいた。
普通に宿に帰り、ロモンちゃんとリンネちゃんに挟まれて、眠った。
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次の投稿は7/6です。
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