第54話 大会前日でございます!

 私が外出軽禁止になってから、また少し日数が経った。

 今、街はいつもより賑わっている。


 そう、それは、明日が大会だから!


 今日は明日から始まる大会の1日目である1回戦目に戦う相手が発表される。トーナメント形式だしね。

 それは完全にランダムみたいで…過去に強豪同士が初戦で潰しあったこともあったとか。


 その発表はこの街にある、コロシアムという場所のロビーでされる。コロシアムは明日、戦う場所でもあるんだ。


 というわけだから、私は今、コロシアムのロビーで発表をロモンちゃんとリンネちゃんと待っている。

 リンネちゃんは魔物使いじゃないから来る必要無かったんだけど、来たいって言ったから連れてきた。


 うーん、今回の参加者、もとい魔物は16組らしい。

 右ブロックと左ブロックに8組ずつ別れて、最終的にそのブロックを勝ち抜いた魔物が決勝に進めるってわけ。

 4戦くらいするのかな。


 そういえば、前に助けた女の子とゴブリンも居るね。この会場に。


 それにしても思ったより参加者が少ないなぁ…。

 ちなみに私達より上の部はもっと参加者少ないらしい。



《それでは…第一回戦の対戦表を発表致します!》



 そう、男の人の声でアナウンスがあった。

 みんなはそっちの方を注目する。


 大きな紙に書かれたトーナメント表が天井から降りてきて、横断幕のように垂れ下がった。 少し文字が見えにくい。

 


「お姉ちゃん、見える?」

「うーん…どれ…あ、あったあった! 3戦目! 相手は……スベルって人と、スヒョウゴーレムのキントだって」



 リンネちゃんは目に魔流の気を使ってそのトーナメント表を見てくれた。

 トーナメント表は選手の名前と魔物の名前、魔物の種族とランクが表示される。


 スヒョウゴーレム…スベル…それって確か、前回決勝まで進んだ人達だったはず……。



「ロモン、スヒョウゴーレムってCランクだよね?」

「うん、でもきっとアイリスちゃんなら難なく倒せるよ」

「ふふ、そだね」



 そう言いながら、リンネちゃんは私の頭を撫でてくれた。



【じゃあもう、帰りましょうか。あ、どうです? コロシアムの周辺のお散歩でも……】

「おおっ! いいねー」

「そうしよー」



 私の提案にのり、私達はコロシアムから出た。

 闘技者同士が喧嘩したりが毎年起こるんだけど、そういうのに巻き込まれたくないしさ。

 それに、コロシアムの周りは花がたくさん植えられていて、これまた綺麗なんだよ。


 大体、コロシアムの周りを半周した頃だろうか、私はジエダちゃんを見かけた。


 ……そうだ、私、お願いしたいことがあったんだった!

 さっそく、あの時のカリを返してもらおう。

 そのためにはまず、一時離脱することを2人にことわらなければ。



【ロモンちゃん、申し訳ございません。少々、知り合いを見かけましたので、話に行ってもよろしいですか?】

「ん…? いいけど…どの人?」

【あの方です】



 私はジエダちゃんを、指のないトゥーンゴーレムの手で指した。



「あの少し緑色の髪の女の子?」

【ええ、そうです】

「わかった、行っておいで」

【ありがとうございます】



 私は瞬時に幼体化を解き、隠密でジエダちゃんに近づき、彼女の肩を叩いた。



「うわっ!? だれ?」

【私ですよ、私です】



 ジエダちゃんにだけ分かるように隠密を解いた。



「ご、ゴーレムさん!」

【はい、ゴーレムです。ジエダさんは今日は何しにここへ?】

「私、ネフラと一緒に大会を見ようと思ってて、それでそのトーナメント表を見に…」

【なるほど、そうでしたか】



 なるほど…大会はネフラ君も見に来るのか。

 頑張んないといけないね。

 

 と、そろそろ本題に移ろうかな。



【ジエダさん、一つ、お願いがあるのですがよろしいですか?】

「えっ…あ、はいっ! なんでも言ってください」

【ありがとうございます。…大会で賭け事ができることはご存知ですよね?】

「ええ、もちろん。昔、よくお父さんが賭けてました、少しだけ」

【なら、話が早いです。賭けて欲しいのですよ、この中のお金を。私はできませんからね】



 そう言いながら私はスペーカウの袋を見せた。



「これを……? いくら入ってるんですか?」

【3315万4200ストン入ってます】

「ひいっ!?」



 私の提示した額に驚いたのか、バックステップでジエダちゃんは私から遠ざかった。



【おや、驚かせてしまいましたか】

「わわわわわわ、わたわた私に…そ、そ、そんな大金を?」

【ええ、お願いしたいのです】

「む…無理っ! 無理ですよ」



 手と首をブンブンと振りながら、ジエダちゃんは必死に断てる。袋を掲げている私の手に、ポニーテルがぴしぴしと当たってこそばゆい…ような気がしなくもない。



【いえ、本当、ある選手1人に賭けつづけていただければ】

「ある…1人の選手…だけ?」

【ええ。第3回戦の…ロモンという選手に全額賭けてください】



 そう言うと、彼女は不安そうな顔をした。



「えっ…でも、その選手の対戦相手って…前回決勝まで進んで…」

【百も承知です。ですが必ず彼女が勝ちます】

「な、なんで? だって、相手はゴーレムで…そのロモン選手のゴーレムはリトルゴーレムで……」

【それは関係ありません。種族の差です……言ってしまいましょう。そのリトルゴーレムは私です】



 ジエダちゃんは口をあんぐりと開けた。美人系の顔が間抜けヅラに見えるから、その顔はちょっとやめて欲しいな。しばらくして、やっと彼女は声を発した。

 


「う…うそ、ゴ…ゴーレムさんの名前ってアイリス?」

【ええ。ですが今、ココで話している内容は他言しちゃダメですよ】

「わかりました……。ぇぇ…ゴーレムさん…いや、アイリスさん、Sランクじゃなかったんだ…」

【はい。というわけで、頼めますかね?】

「わ…わかりました! ですが…その…」



 人差し指と人差し指をモジモジさせながら、ジエダちゃんは何か言いたげだ。



「その…便乗させてもらっても…」

【構いません、他言しないのなら】



 勿論、話してしまったんだからいい。

 ま、でもそれが報酬代わりってことでいいよね。



「はっ…はい! わかりました」

【では、このお金……お預けしますよ?】

「はははははは…はぃぃぃ、ま、任せてください」



 手をブルブルと震わせながら、ジエダちゃんは私のスペーカウの袋を受け取った。

 さて、あれがいくらになって返ってくるんだろう。

 楽しみだ。まぁ、私の初戦以降は高い倍率は求められないと思うけどさ。


 私はジエダちゃんは別れ、2人の元に戻ってきた。



【申し訳ございません、少し、長くかかってしまいまして】

「ううん、いいよ。何を話してたの?」

【明日の試合をどこに賭けるかの話ですよ】


 

 これは、嘘ではないからね。うんうん。



「そうなんだ! 実はね、私の分のお小遣いをお姉ちゃんに預けて、賭けてもらおうと思ってるの」

「ぼくのお小遣いも賭けようと思ってるんだ」

【おや、また大きくでましたね……】



 私がそう言うと、2人は互いに顔を見合わせてから、私に微笑みかけてきた。かわいい。めっちゃ可愛い。

 そして、こう言った。



「「どうせ、アイリスちゃんが勝つに決まってる!」」





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次の投稿は6/7です。

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